その24 わざわざ
俺の言葉にウエイトレスが言ってくる。
「ちょっと、言い過ぎじゃない?」
「はあ? なんで貴方が彼女達親子の肩を持つんですか? そのおっさんはこうなった元凶で、この店を壊した本人で、俺だけならまだしも危うく無関係の子供まで大怪我させるとこだったんだぞ」
「それは……そうだけど……」
「ならちゃんと誠意のある対応をしてもらわないと」
「…………」
俺はファラへと向き直る。彼女は真面目な顔で言った。
「ジークさんの仰る通りです。先程も言いましたがこのお店の弁償は全額致しますし、ジークさんの怪我の治療費もお支払い致します。道路に空いてしまった穴の修繕費も街の役場に掛け合ってお支払いします」
「まだあるだろ。あの子供や親御さんにも謝罪と慰謝料を支払いな」
「はい。分かっております。その他にも出来る限りの対応を……」
その時、不意に彼女の言葉を遮って。
「……ファラが謝る必要はないさ……」
ファラ父の声がした。どうやらようやく目覚めたらしい。俺達の話も途中から聞いていたようだ。
おっさんは側頭部……俺が蹴り飛ばした箇所を痛そうに手を当てながら起き上がった。
「痛たた……まさか本当にスキルを使わずに私に勝ってしまうとはね。これでも私は現役の頃はAマイナスランクはあったんだが……」
「お父さん……っ、まだ寝ていないと……っ」
「いや、そんな暇は許されないだろう。迷惑を掛けた皆さんに謝罪しなければならないからね」
おっさんは俺とウエイトレス、そしていつの間にかショートケーキを持って戻ってきていた店長の前まで来ると、さっきのファラのように深々と頭を下げた。
「本当に申し訳ないことをしてしまい、すみませんでした。ファラも言っていたが、この弁償は必ず致しますので」
「「…………」」
ウエイトレスと店長が顔を見交わせる。店長が一つうなずいて、ウエイトレスも息を一つついた。
「まあ、ちゃんと元通りに直してくれるのなら……」
おい、俺の時と態度が違うのは何でだよ⁉ 別にいいけどよ、くそっ!
ウエイトレスが俺を見る。
「私と店長は許したけど、あんたはどうなのよ?」
「ふんっ。わざわざ言うことかよ。俺に死体蹴りをする趣味はねえんだ。ちゃんと謝って弁償もするんならそれでいいのさ。だがな……」
俺はスプーンの先をおっさんへと向ける。
「さっきも言った気がするが、あの子供と親御さんにも謝りに行けよ」
「言われるまでもなく。あの子には怖い思いをさせてしまったからな」
顔を上げたおっさんは強い意志を持った目と声でそう答えた。




