その23 やり過ぎ
俺はおっさんに人差し指を突きつけた。
「このくだらねえ戦いを終わらせるぜ。一秒後、てめえは地面にキスして気絶することになる」
「何を馬鹿な……」
おっさんが言い終える前に、俺はその眼前へと瞬時に移動して。
「……っ……⁉」
目を見開くその身体が防御も回避もするよりもなお速く、その側頭部に回し蹴りを喰らわせて、錐もみ回転させながら地面へと沈ませた。
「……っ」
「……あ。やっべ、勝っちまった……うっかり頭に血が昇ってたから……」
見事宣言通り気絶するおっさんを見下ろしながら、俺はやっちまったなあと思っていた。
約三十分後、俺はカフェのカウンター席に座って注文したコーヒーを飲んで一息ついていた。
「うーん、やっぱりここのコーヒーはうまいねえ。他の豆と味の違いはいまいち分かんねえけども」
あの後、子供は無事に親御さんの元へ帰せた。気絶したファラ父は店内に運び込んでそこのボックス席に寝かしてあり、横を向いているその側頭部にファラが濡れタオルを当てて看護していた。
「リラックスしてる場合じゃなーい!」
俺がコーヒーを味わっていると、ウエイトレスが大声で言ってきた。相当お冠らしいが、正直うるさいなあ。
「またお店が壊されたんだけど⁉ どうしてくれんの⁉」
「んなこと俺に言われてもねえ。俺だって被害者なわけだし」
いきなり喧嘩を吹っ掛けてきたのは向こうだしな。俺はカウンター内でコップを拭いている店長に言う。
「店長、このコーヒーに合う食い物ないですか?」
店長は静かにうなずくと、キッチンの方へと向かっていった。何かしらの軽食やデザートを持ってきてくれるのだろう。
ウエイトレスがなおも言ってくる。
「だから何であんたはそんなに寛いでんのよ⁉ あんなことがあったのに!」
「もう終わったことだからねえ。細かな擦り傷とかはあるけども、重傷は負わずに済んだし。他の奴らにも怪我人は出なかったし」
迷惑は掛けたけども。あ、あと道路に穴開けちまったか。やっべ、あれは俺がやったことじゃねえか、いや仕方がなかったんだけども。
「うちには多大な被害が出てますけど⁉」
「だからそれは俺のせいじゃ……」
その時、ファラがこちらへとやってきて深々と頭を下げた。
「本当に申し訳ありません! 私の父が暴走してしまったせいで……っ。この弁償は私達が絶対に致しますから……っ!」
俺は答える。
「全くだ。いくら娘の為を思ってとはいえ、やり過ぎだと思うぜ。どうして貴族の位を剥奪されてないのか不思議だねえ」
「……っ……本当に申し訳ありません!」
頭を下げまくるファラ。




