その22 無数の空気弾
おっさんが追いかけてきながら拳を構え、ジャブの連打をするように空中を連続で振り抜いていく。
おいおいまさか……。そのまさかが現実となり、無数とも思える空気弾がこちらへ目掛けて降り注いだ。
「わっはっはっ、どうだ、これだけの数は避けられまい!」
「てめ……っ⁉」
ここが街の中だってこと忘れてんじゃねえ! さっき喰らってみて分かったが、この空気弾は物にぶつかったくらいじゃ破裂しない程には頑丈だ。だからこその空気弾なんだろうが……。
これを割る為には、刃物みてえに尖ったもので突き刺す必要があるだろう。俺は懐から果物ナイフを取り出すと。
「こなくそ……っ!」
目にも止まらないような連続の突きを繰り出して、眼前に迫る空気弾の群れを破裂させていく。
「む⁉ この短時間でこの技の弱点を見抜いたか⁉」
おっさんが感心した声を出す。とはいえあまりにも数が多く、全てを破裂させるのは一苦労だ。こうしている間もおっさんは近付いてきてやがるし、空気弾も未だに撃ち続けてきやがるし。
と、そんなことを考えていた時、無数の空気弾のうちの一つが俺へと向かう軌道から逸れて、道の脇にいた女の子のほうへと向かっていった。
「あ⁉ しまった!」
「っ⁉ ガキっ、逃げろ!」
俺とおっさんが叫ぶ。しかし女の子は足がすくんでしまったのか、その場から動けずにいるようだった。
俺の前には未だに数多くの空気弾がある。これを放ったまま女の子を助けに行けば、今度は別の奴が怪我するかもしれない。
……ならば、取るべき手段は……。俺はいままで以上に全身に力をみなぎらせた。
「てめえが撃ったものだ。てめえに返すぜ!」
まずは、眼前の空気弾の群れへと一振りの掌底を振り抜く。高速の掌底によって空気が押し出されて、俺の眼前、空気弾の群れを押し返す怒涛の風圧が巻き起こった。
「お? おおっ⁉」
驚きの声を上げるおっさんへと空気弾の群れが迫り返っていく。自分が作ったものだ、おっさんなら普通に対処出来んだろ。
そして俺は今度は足に渾身の力を込めて、女の子の前に瞬速のスピードで接近すると、その子を庇って代わりに空気弾を背中に受けた。
「あ……あ……」
「怪我は、なさそうだな。良かった良かった……」
俺自身は滅茶苦茶痛かったけどな。この子が無事なら良しだ。
唖然とするようなおっさんの声が聞こえた。
「まさか……ただの掌底であの空気弾を全て吹き飛ばし返すとは……! 君は本当にノースキルなのか⁉」
さて、そんじゃあ、これ以上の被害者が出ないうちに終わらせようか。俺は正直キレていた。




