その21 スキルを持っていない
「そうさ、ノースキル。つまり俺はスキルを持っていない」
「……冗談かな? まさかスキルなしで冒険者を?」
「まあな」
俺がノースキルだと知った奴はたいていこんな反応をする。もう慣れているがな。
「信じられん。それでよく冒険者が務まるな」
「身体を鍛えてるんでね。Bランクくらいの奴ならソロでも討伐出来るのさ」
「……まさか、そんな者がいるとは……勇者なのか蛮勇なのか、はたまたただの無謀な馬鹿なのか……」
「お好きな呼び方でどうぞ。つーかてめえだってスキル以外は肉弾戦じゃねえか」
「……スキルのありなしは大いに異なるよ……」
「まあな」
それはそうか。
そこでおっさんは気を取り直したらしい。再び身構えた。
「だが、これで分かった。ノースキルの君に私の愛娘を任せることは出来ん。そんなことで私に勝つことなど無理なのだからな」
そう言って、握った拳をその場で振り抜く。光をまとった空気弾が俺へと飛んできて、すかさず俺は横に跳んで避けた。
「だったら攻撃してくんじゃねえよ!」
「私の可愛い愛娘を完全に諦めさせる為だ。私が君に勝てば、あの子はもう冒険者になるなどと言わないだろうからな」
俺はとんだとばっちりだな!
「君にしてもそのほうが良い筈だろう?」
「その通りだ。だけどな、俺は痛いのは嫌なんだよ!」
その時、カフェの入口にいたファラが大声で制止の言葉を言ってくる。ようやく混乱していた頭が落ち着いてきたらしい。
「やめてお父さん! 私なんかのことでジークさんを傷付けないで!」
わあお。恋愛小説や漫画の中でしか見たことのない台詞だ。
おっさんが彼女へと振り返って微笑んだ。
「少しだけ待っていなさい。そしたら二人で家まで帰ろう。母さんがラズベリーパイを作って待っているからね」
「……っ」
おっさんが再び俺に向いて、拳を構えた。
「行くぞ!」
そして飛び出してくる。
くそっ! 近接戦だと触れた瞬間に吹っ飛ばされる。距離を取ると空気弾を撃たれる。あれ、何気にこれ強スキルじゃね?
こうなりゃ俺が取るべき手段は一つしかねえ!
俺はおっさんに背を向けて全速力で駆け出した。
「おいこら逃げるな! 待て!」
「誰が待つか! さいならー!」
「お前は私の可愛い愛娘と一緒に冒険したくないのか⁉」
「そんなこと一言も言ってねえよ」
「何だと⁉ ファラが可愛くないだと⁉ 許さん!」
「そっちじゃねえ!」
つーかあんたは俺に一緒に冒険させたいのかさせたくないのかどっちなんだよ⁉
「こうなりゃファラのことを超絶可愛いと絶対に言わせてやる!」
なんか目的変わってやがるし!




