その14 証明処理
街のギルド。その入口外にて。知り合いの女職員が心の奥底から呆れた声を出していた。
「おいおいジークぅ、確かに証明条件に全身死体って書いてあったけどよぉ、まさかそのまま担いでくるとは思わないじゃん? 馬鹿なのかい? 死んじゃうのかい?」
「黙れ。俺だって思ったけど収納アイテムに入らなかったんだ、仕方ねえだろ」
「恥ずかしくなかったのかいぃ? それとも衆目を集めるのが君の性癖かいぃ?」
「シャラップ! いいからさっさと受け付けろよ! 恥ずかしいに決まってんだろ!」
「やれやれ。これだから君って奴はねぇ」
女職員は肩をすくめた。
「まあいいや。こっちに来な」
「おい、中に入るんじゃないのか?」
「そんな死体を支局の中に入れられるか。クエスト用の保管倉庫があるから、そっちに行くんだよ。死体が腐らないように防腐アイテムも使わないといけないしね」
「ああ。なるほど」
「ていうか、それくらい知ってるだろう? 何年冒険者やってんだい?」
「いままでは他の奴に任せてたからな。お前とか」
「ちゃんと考えてる奴なのか、ただの面倒臭がりなのか、分からなくなるな」
呆れの溜め息を一つして女職員は倉庫へと向かい、俺もそれに続く。くそっ、このコウモリ普通に重いんだよな。俺は文句を言った。
「あーあ、クエストのこの証明処理、もっと楽になりゃいいのにな」
「そのうち便利なアイテムが出来んだろうさ。私達はそれを待つしかないねぇ」
そうして俺はコウモリの死体をギルド倉庫へと移動させた。女職員が言う。
「はい、そんじゃあ証明処理にある程度時間が掛かるから、それが終わったら登録口座に振り込んどくよ」
「どれくらい掛かる?」
なる早で欲しいんだよな。
「さあ、断言は出来ないな。依頼主の都合もあるだろうし。早ければ数時間、遅ければ数日ってところかな」
「前みたいな一ヶ月待ちとかやめてくれよ」
「あれは酷かったねぇ。まあ、気長に待ってなよ」
「やれやれ……」
今度は俺が肩をすくめた。
時間は夕方過ぎ。流石にもう疲れたしクエストを受けるのはやめておこうと思い、俺は泊まっている宿屋へと帰っていった。
数時間後。通信端末で口座を確かめると、ギルドから金が振り込まれていた。やりぃ、仕事の早い依頼主で良かった。
そして翌日。午前の素材採集のクエストをこなして、俺はまたあのカフェへと足を運んでいた。いやー出禁になってないって素晴らしいね。
昼は過ぎているので、割れてない窓から見える店内には客の姿はまばらだった。カランコロン。入口を開けた。