その132 恨まれるなら
「ジークさん……?」
どうかしたのかとファラが問いたげな顔をする。俺は気を取り直して、彼女に言った。
「いや、なんでもない。それより狩りを再開しよう。ファラの言う通り、生け捕りではなくちゃんとした『狩り』をな」
「はい」
「夕方までもう一時間もないし、急ぐぞ」
「はい……!」
そうして俺達は狩りを再開する。ファラは俺の注意したように『分身射撃』を駆使して、俺は自慢の身体能力を発揮して、見つけたアルミラージ達を苦労しつつも狩っていく。
夕方までの一時間で、最初に生け捕りにした奴も含めて合計七匹狩ることに成功した。一匹当たり十分くらいの計算になるが、ギルドまで持っていくために血抜きとかもしたから、その分の時間も含まれていることになる。
「もうすぐ陽が暮れる。七匹しか手に入らなかったが、とりあえず終わりにするぞ。街から近いとはいえ、夜のフィールドは危ないからな」
「はい、分かりました」
生け捕りにした奴とは別のケージを出して、俺達はそのなかに狩った奴らを入れていく。だいたい一つのケージに二匹入って、生け捕りにした奴も含めて俺達は両手にケージを持ちながら帰路についた。
「ごめんなさい……でも、恨むのは私だけにしてください……」
手に持つケージ、そのなかに入るアルミラージにファラが言う。死体は応じることはなかったが、俺が持つケージにいる生け捕りにした奴は、ファラのことをつぶらな瞳で見上げていた。
「恨まれるなら、俺もだがな」
俺もまたつぶやいていた。
「ケージのなかで、何も出来ない無力な状態で、仲間が狩られていくところを見せちまったわけだからな」
このアルミラージがどう思っているのかは分からない。仲間が死んでいることにも気付いていないのかもしれない。
だがしかし、もし俺がこのアルミラージと同じ立場だったら……捕らわれて何も出来ない状態で、他の人間やレノやファラを痛めつけられて殺されていく様を見せつけられたら……。
(……俺は果たして正気を保っていられるだろうか?)
…………。
それから、俺達はギルドに無事に到着し、
「えー、七匹しか調達出来なかったのー?」
などと文句を言ってくるレノに、
「最低一匹でも構わねえって言ってただろうが」
「それはそーだけどさー、……しゃーない、依頼主にはこっちから伝えとくよ」
「なんでこっちが悪いみたいな口ぶりなんだよ」
「まあとにかくお疲れさん。七匹分の報酬はちゃんと振り込んどくから」
「ああ」
そんな会話を交わして、俺とファラはギルドを出る。辺りはすでに暗くなっていたので、ファラの馬車で俺ん家まで送ってもらって、
「それじゃあジークさん、また明日」
「おう、また明日」
そうして俺達は別れを告げる。
いつも通りの明日が来る。俺はそう思っていた。
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