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その128 アルミラージ


 とりあえず、目に見える範囲にアルミラージの姿はない。俺は顔を地面に向けながら、その草原を歩き始める。あとをついてくるファラが聞いてきた。


「何を探しているんですか?」

「アルミラージの巣だ」

「巣?」


 ファラはアルミラージのことをあまり知らないらしい。


「アルミラージは見た目がウサギに似ているが、その生態も似ているんだ。野生のアルミラージは、それぞれの個体にもよるが、地面に穴型の巣を作って住み着く奴と、特定の巣を作らずに徘徊するタイプがいる」

「そうなんですか……」

「草原とか荒野とか、身を隠せるものが少ない場所では巣を作るタイプが多くて、森とかの身を隠せるものが多いような場所では徘徊タイプが多い感じだな。もしかしたら見た目が同じに見えるアルミラージにも、いくつか種類があるのかもしれんが」


 確か普通のウサギにも、ノウサギとアナウサギっていう種類がいて、それぞれ生態が微妙に異なっているとか聞いたことがある。詳しいことは知らねえけど。


「詳しいんですね、ジークさん」

「ただの経験則だ。ファラもそのうち、自然と覚えるさ」


 そういや、世のなかには魔物のことを調べてる魔物学者とかいう奴もいるらしい。そういう奴らのほうがもっと詳しいし、確か魔物に関する本も出していたはずだ。


「魔物のことを詳しく知りたいなら、そーいう本を読むんだな。オカルト本も面白いだろーが」

「いや、あの、オカルトが好きなのは母なので……」


 ファラがそう口にしたとき、視界の先にあった岩の陰からぴょこりと小さな姿が現れた。額に角の生えたウサギ……アルミラージだ。


「あ……!」

「いたぞ!」


 すぐに俺は駆け出して、ファラが後ろから追いかけてくる。そんな俺達を見て、アルミラージもまた背中を向けて逃げ始めた。


「逃げるぞ!」

「矢で射抜きます!」


 ファラが弓矢を構える。まるでデジャヴだ。数時間前にも、泳ぐシャケを撃ち抜こうとしたのだから。

 そして、これもまたデジャヴに近い。ファラが撃った矢はアルミラージの背中へと向かっていったが、アルミラージは横に一歩跳ぶとその矢を避けた。


「ああっ! もう少しだったのに!」


 ファラが声を上げる。シャケのときの反省で、今度はもっとちゃんと当たるように狙ったらしいが。


「ファラ、相手は魔物だ。普通の動物のシャケとは違う。気を付けろ!」

「え……?」

「反撃が来るってことだ!」


 俺が言った直後、アルミラージが振り返り、鋭い角を向けながらこちらへと跳んできた。



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