表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
127/138

その127 突き放す言葉


 外壁の門を出てから、目的の狩り場に向かうまでの間、俺達は世間話をし続ける。


「あれ? でも、キャラバンとか旅馬車とかは普通に外を走ってますよね?」

「普通は整備された道を通るからな。その道なら魔物が寄ってこないように定期的に見回りされてるし、キャラバンや馬車のなかには護衛を雇うやつもいるし」


 あとそれと……俺は付け足す。


「魔物が近寄ってくるのを抑制するアイテムとかもあるらしい。高いから俺は使ったことねえけど」

「そんなアイテムがあるんですか……?」

「いろいろ条件はあるみたいだぜ。時間経過とかの理由で効果は切れるし、全部の魔物に効くわけじゃねえから、万能ってわけじゃねえらしいけどな」

「そうなんですか」


 そんな会話をしているうちに、目的の狩り場に到着した。全体としては草原という感じだが、丈の長い草むらが点在し、人間大の岩もちらほらと見える場所だった。


「アルミラージって、角の生えているウサギですよね? 鬼みたいに」

「まーな。あんま強くないし、人間のほうから襲わない限りはおとなしい魔物だ。今回は狩っちまうがな」

「……ちょっと、可哀想ですね……」


 ファラは優しいから、相手が魔物でもおとなしい奴なら同情しちまうんだろう。それは彼女の美徳でもあるが。


「依頼だからな。ファラだって、牛や豚や鶏を食べるだろ。野菜も果物も食べるし、飲んでいる飲み物や呼吸している空気中にだって、目に見えない微生物はいる」

「それは……」

「俺だって肉を食うし、野菜を食うし、水を飲むし、呼吸をしている。しねーと死んじまうからな。俺達はそうやって生きてる。他の生き物を絶対に殺したくないのなら、存在ごと消えてなくなるしかねえ」

「…………」

「可哀想だと思うことを否定はしねーが、それとこれとは別だと割り切るんだな。今回の依頼はただ殺すために殺すんじゃなくて、アイテムの素材にしたり食肉にしたり、生活のために狩るんだ」


 そうやって、俺達のこの世界は回っている。俺達は生きていられて、生活出来ている。


「教科書的で偽善者ぶったことしか言えねーが、だからこそ俺達はそいつらに感謝して、命を狩り取っていくしかねーんだ。それが嫌って言うなら、いますぐ帰れ。お前に冒険者はやっぱり向いてねえ」


 突き放す言葉。ファラにはきつい言い方になるが、事実だから仕方がない。これでついてこれないなら、どーせどこかのタイミングで無理になる。

 そしてファラは俺を見て、言った。


「……やります。可哀想だと思ったのは確かですが、ジークさんの言うことも確かだと思います。私は彼らの命を、狩り取ります」


 決心した顔つきで言うファラ。…………。俺は顔を前に戻しながら、ぶっきらぼうに聞こえるように返事した。


「……おう。ま、あんま気負いすぎないようにな」

「はい。分かってます」


 ……そんならいいけどな。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ