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115/138

その115 ジー……


 至極当然のことのようにファラは言葉を紡ぐ。


「私はこの調査には意義があると思いますし、この調査に参加出来ることを誇りにも思います。何もなければそれで良し、何かあったら解決して街とここに住む人々の生活を守れる……とても大事なクエストだと私は思っています」

「…………」

「もちろん、いまの私に出来ることは少なくて、ジークさんのお邪魔になってしまうこともあるかもしれません。その時は正直にそう言ってください、邪魔にならない場所に移動しますので、そこで出来る限りのことをしますので……」

「いや……」


 俺は思わず彼女から顔を逸らしてしまう。下水道の中は暗いのに、何故か彼女を眩しく感じてしまったから。


「ファラは邪魔にはならないと思うぜ……少なくともいまは邪魔になっていない、むしろ俺の方が……」

「え……」

「悪い、謝るべきは俺の方だった。正直、俺はこのクエストを面倒だと思ってた、くせーし服も汚れるし、この中で魔物と遭遇して戦うとか嫌だなって」


 魔物と戦えば少なからず服は汚れるものだが、下水道という場所のイメージで、普段よりも戦いたくないと思っていた。


「俺はファラみたいに、この下水道の調査をそこまで大事なことじゃないと思ってた」

「…………、いまはどうなんですか?」


 『思ってた』は過去形だ。現在の俺の考えは。


「ファラのおかげだな、いまは重要なクエストだと思えている。すげーよファラは、最初からそんなふうに考えていたんだから」


 いままでは俺がファラに色々と教えていたのに、まさかそのファラに教えられるなんてな。

 ファラは持っていたマップを顔の近くに寄せていた。まるで表情を隠すように。俺が褒めたから照れているのかもしれない、どうせこの暗さならよく分からないのに。


「い、いえ、私は当然だと思ったことを言ったまででして……」

「その当然が無意識に普通に出来たから、すげーんだよ」


 それはつまり、俺はすごくなかったということだ。


「わ、私はすごくなんか……本当は私は、ジー……」


 何か言おうとした彼女が、不意にそこで言葉を区切る。俺は疑問符を浮かべながら彼女を見て。


「じー?」

「~~~~、な、なんでもありませんっ!」


 彼女が声を上げて、それが暗い下水道に反響した。

 じー? まさかあの黒い虫のことか? 確かに下水道には出そうだな、ネズミとかも。

 そんなこんなで、俺達は下水道の探索を進めていく。レノからは魔物が巣を作りやすいと予想される場所……ある程度の広さがあり、食料や水分の調達がしやすい場所……を重点的に調べるように言われていたので、そういう場所に行き当たったら他よりも注意深く様子を見ていた。


 そうやって俺達は入ってきた入口から順々に調べていった箇所を、下水道のマップに印を付けていく。何もなかったらバツ印を付けるということにしたのだが……現状、マップにはバツ印だけが付いていた。



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