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102/138

その102 …………やられた


「……いいぜ。どっちが強いか、真っ向勝負と行こうじゃねえか」


 俺は拳を構える。怯むことなく迎え撃つつもりの俺を見て、マイが大声で言ってきた。


「ジーク=フニール!」


 ここまできて、いまだにフルネーム呼びかよ。


「マイ! 箒を避けさせようとするな! 俺なら大丈夫だ!」

「だが……!」

「いいから、お前は箒のバランスを保って俺が落ちないように気を付けてくれ!」


 いくら俺でも地上数十メートル以上の高さから落下したら無事では済まないからな。

 マイの返事を聞くより早く、コアトルが俺の眼前へと迫りくる。そのままの勢いで突撃してくるのなら拳を振り抜いて返り討ちにするだけだ……と思いきや、奴は牙の生え揃う口を大きく開くと、


『……ッ!』


 獰猛な鳴き声とともに、紅蓮に燃え盛る炎を吐き出してきた。


「マジかよ……っ⁉」


 コアトルは大蛇に羽が生えた見た目をしており、外見だけならドラゴンに非常に似ている。魔物図鑑でも、いまだ未解明な部分が多いもののあるいはドラゴンの近縁種ではないかと推測されていた。

 だから、コアトル自体がドラゴン同様に火炎を吐くことは充分あり得ることだった。

 問題はそこじゃない。問題は、行動が自由に出来ず、制限される空中で火炎を吐かれたことだ。


 どうする⁉ 拳圧の衝撃波で吹き飛ばすか⁉ いや、燃え盛る火炎に風を送っても必ずしも鎮火するとは限らないように、拳圧で全部消せるかは分からない。

 下手をすれば、拳圧で逆に炎が燃え上がったり、衝撃波を飛ばす動作を余計にしたせいで回避が間に合わない可能性があり、状況が悪化する危険がある。


「くそっ!」


 だから、俺は箒を蹴るようにして、火炎の届かない上空へとジャンプしていく。そうせざるを得ないようにコアトルに誘導された感は否めないが、こうしなければ殺られていた。

 足元の空中にあった箒が火炎に飲み込まれていく。後でマイに文句を言われそうだが、俺のせいじゃないからな!


「ジーク=フニール!」


 ほら、もう文句を言ってきやがった。


「奴が……っ!」


 その文句を、最後まで聞くことは出来そうにない。俺が飛び上がった上空、その眼前にコアトルの巨体が口を開けて待っていやがったからだ。


「…………やられた」


 かつて神獣と崇められた魔物。その知能は高く、一説には人間と同等かそれ以上の知能を持っているとも言われている。

 数百年以上も生きた個体であれば、人語を解したり、時には擬人化も出来るかもしれないとされているくらいだ。


 そんな高知能の魔物であれば、俺程度の奴の行動を誘導し、罠に嵌めるくらいは容易く出来るだろう。



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