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101/138

その101 敵に値する存在


「……ほんっとーに滅茶苦茶な奴だな」


 呆れたように近くにやってきたマイが言ってくる。


「バランスを取るのがやっとなら、いっそのこと空中に飛び上がった方が戦いやすいだろ?」

「それが滅茶苦茶だって言ってるんだ」


 そうか? 合理的な判断だと思うけどな?


「だいたい、わたしの箒が間に合わなかったらどうするんだ。地面の上で潰れたトマトになってたぞ」

「それはほれ、お前なら間に合わせると思ってた」

「…………」


 マイの目が鋭くなる。つーか睨んでくる。


「……脳筋馬鹿が……」


 ぼそりとつぶやく。言われ慣れてはいるが、やっぱ脳筋馬鹿は酷くねえ?

 彼女とそんなことを話していると、空中を吹き飛ばされていたコアトルは身体に力を込めて、その場に踏み留まるように静止する。


 一緒に吹き飛ばされるのを防ぐ為に、既にマイのはたきの布の拘束は解かれていた。とはいえ、コアトルもやっとのことでその場で止まれたという感じだったが。


「脳筋馬鹿なんだから、ちゃんと仕留めろよ」

「あいつが頑丈過ぎるだけだろ」


 かつては神獣といわれた魔物なんだから、たかが人間の俺のパンチ二発程度じゃあ、仕留めきるのは難しい。空中で踏ん張りが出来なくて、いつもより威力が落ちているだろうし。


『……ッ!』


 奴が叫んだ。俺達はすぐさま耳を手で塞ぎ、距離が遠いこともあって、今度はマイもなんとか持ちこたえる。


「どうするんだ! 余計怒らせただけじゃないか!」


 近くにいるとはいえ、手のひら越しなので、大声のはずのマイの声も聞こえにくい。


「どうするもこーするも! 戦うだけだ!」


 じゃねえと街が大惨事になる。俺も大声で答えた直後、はらわたが煮えたぎった顔をしたコアトルが俺達へと猛スピードで迫ってきた。

 長い身体についた六枚の羽を同時に動かしての、おそらくは奴自身最高速の飛行。数十メートルは離れていたはずなのに、ほんの数秒でその距離が縮まっていく。


「突撃してくるぞ! 避けろ!」

「分かってる!」


 箒が高速で動き、左右に分かれた俺達の間をコアトルが突進していく。なんとか回避には成功したが、奴はすぐさま急ブレーキすると、即座にこちら側へと振り返った。


『……ッ!』


 うなり声を上げながら、コアトルは俺に狙いを定めて再度突進してくる。いまのうなり声はさっきまでの『叫び』と違って耳を押さえたり怯むほどではないが……どうやら奴は俺を真っ先に片付けるべきだと判断したらしい。


「光栄なことだと言うべきか?」


 先のパンチや衝撃波を受けたことで、俺は奴の敵に値する存在だと認められたようだ。元神獣の魔物にそう思われることは悪い気はしないが、いまは厄介なことになったといえなくもない。

 いや、見方を変えれば、奴の攻撃を俺に引き付けられるということは、マイや眼下の街の被害を抑えられることにも繋がるか……。



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