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その100 翼を持たないただの人間


 俺に使った時と同じようにして、はたきの布がコアトルの口にぐるぐると巻き付いていく。

 スキルで出現させたものとはいえ、所詮はあくまで布製のはたきに過ぎない。一時的に動きを止めることは出来たが、コアトルの強靭な力の前では長くはもたないだろう。


 だがしかし、たとえ数秒や一瞬でも動きを押さえてくれれば……こちらを怯ませてくる『叫び』の使用をわずかでも遅らせてくれれば、その隙を突いて反撃に転じることが出来る。


「そのまま出来る限り動きを止めていてくれ!」


 マイへと言って、俺は足に力を込める。俺はマイと違って空飛ぶ箒には慣れていなく、バランスを保ったまま立つのが精一杯だ。

 もうちょい練習すれば慣れてマシにはなるだろうが、いまはそんな時間はないし、コアトルも待っていてはくれない。


 だったら……。


「はあ……っ!」


 俺はわずかに身を屈めるようにした後、足場にしている箒から思いきりジャンプして空中に飛び出していく。


「な……っ⁉」


 唖然とするマイの声が聞こえ、彼女といままで足場にしていた箒が眼下に映る。目線を前に向ければ、ギロリと睨んでくるコアトルの凶悪な面が俺の真ん前に、まるでそびえ立つ岸壁のように存在していた。


「よお。こんばんは」


 言葉だけなら夜半の挨拶、しかし口調は不敵に。そして俺は拳を握りしめると、コアトルの顔面へと振りかぶる。


『……ッ⁉』


 ドゴオッ! まるで岩を砕くような轟音を響かせながら、俺はコアトルの顔面を思いきり殴り飛ばした。

 顔に巻かれた布の隙間からうめき声を漏らした奴が身体をのけぞらせるが、目だけはギロリと俺へと向けてくる。まだまだ倒せるほどのダメージではないらしい。


 反撃といわんばかりに、コアトルが尻尾を俺へと振り抜いてくる。ここは空中であり、俺は翼を持たないただの人間に過ぎない、マイの箒も俺の元へ着くには間に合わず、コアトルの尻尾を避けることはほとんど不可能に近いだろう。


「避けられねえなら、殴り返しゃあいい」


 だから、俺は一度振り抜いた拳を即座に引き戻して、俺を叩きつけようとしてくる巨大な尻尾へともう一度振り抜いた。


『……ッ⁉』


 再度、ドゴオッという轟音が響き、コアトルの尻尾が空中を撥ね躍る。今度の拳は厳密には尻尾には当たっていなく、振り抜いた衝撃波で尻尾を吹き飛ばしていた。


 尻尾が吹き飛ばされた影響で、コアトルの身体がぐるぐると輪を描くようにしながら空中を滑っていく。俺もまた重力に従って落下を始め、足元の空中に到着していた箒の柄になんとか着地もとい着柄する。

 おっとっと、危ねえ。



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