第8話 美人OLちゃんからお触りされるとか羨ましすぎるだろ
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めちゃくちゃ都会という訳でもないこの街でも、朝の通勤ラッシュの時間帯の電車は混み合う。
「ごめんなつちゃん。もう少し寄ってもいいかな?」
「うん、大丈夫だよ」
混み合った電車の中でしばらく揺られていると、ガラスに反射した来人くんの後ろ姿を見つけた。来人くんも電車通学だったのか。
混み合ってるし声を掛ける必要もないな……ん?なんか様子がおかしいような?
ガラスに反射した車内をよく見ると来人くんの後ろに立っているOLらしきスーツを着た美人さんが来人くんのケツを触っていた。
あれは……まさか!貞操観念逆転世界定番の痴漢……いや、痴女!クソ!俺も触られたかった!こんな所でも男になれなかった弊害が!俺は見せつけられるだけで、何もされずに終わるのか?否だ!
「すみません……!通してください……!」
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混み合った電車内は痴女するのに丁度いい。仕事で嫌な事がある度におさわりをしてストレス発散してきた。
昨日の帰り際に残業を命じてきたクソ上司のせいで寝不足だわ。これは男の子に癒してもらわなければ。
前方にイケメンくんを発見!近くの高校の制服ね。悪いわねそのおしり、触らせていただきます!
しばらく楽しんでいると、不意に手を取られた。しまった!?痴女だと吊るしあげられる!と思ったが私の手を取った奴はそのまま手をギュッと握ってきた。は?どゆこと?
ただ繋がれていただけだったはずの手は、段々とその指を絡ませてきて、気づけば恋人繋ぎになっていた。ヒィィィ!なんなのよこいつは!?
振り払おうとして手を引くと、手を繋いできた主が分かった。いつの間にか隣に居た女子高生だ。
男の子を助けて好感度稼ぎに来たのかと思ったけど、そんな雰囲気が感じられない。それどころか微笑みかけてくる。怖っ!?しかも力つよ!?
あぁ……これはきっと天罰ね。抵抗出来ない男の子達に痴女してきた私への罰。好意のない相手から触られることがこんなに怖かったなんて知らなかったわ。
神様……もう痴女なんてしないので、どうかこのガチレズ女子高生から私をお救い下さい。
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昔から女性との距離感が分からなかった。というよりも苦手だったんだと思う。
だからこそ、こっちから強く出て舐められないようにして、女が寄ってこないようにしていた。
零さんから女の子への接し方を注意されて直したが、クラスの女子が群がってくることもなくて安心した。零さんと一緒に居たおかげでもあったかもしれない。
いつもは混んだ電車に乗りたくないから早めに家を出るのだが、今日は寝坊してしまい、通勤ラッシュに当たってしまった。
なんか今触られたか……?気の所為か手がぶつかっただけかと思ったが違う。脚から滑らせるように尻を触ってくる誰かが居た。窓ガラスに反射した自分の姿を見ると、その後ろに二十代後半くらいの女の手が俺に向かって伸びていた。
その手を掴んで痴女だと叫べばいいことは分かるが、手も動かないし、声も出ない。思ったよりも俺の身体は恐怖ですくみあがっていた。
呆然と窓ガラスに反射した自分を見ていると、その女の背後から身知った顔の女子が人混みの中から出てきた。
すぐに俺の身体を触っていた手は離れてくれた。零さんが助けてくれたんだろう。零さんはこっちに気づいたのか笑い掛けてくれた。きっと大丈夫だと伝えたかったんだろう。
最近の零さんは素っ気ない態度のようにして、こうやって助けてくれる。しかし俺たち男に見返りを求めないのだ。そこが他の女と違う。
次の駅に付き電車の扉が開くと俺のことを触ってきていた女は、零さんに掴まれていたであろう腕を振り解き走って逃げて行った。
「あー、逃げられちゃった……」
「零さん……ありがとうございます」
「ん?うん」
俺が一人になりたいと思っていると考えたのか、零さんは元の位置へと戻って行った。寧ろ近くにいて欲しかったような気もするが、配慮してくれた事自体が嬉しかった。
やはり零さんは他の女とは違うな。
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「年上も良いよね」
「何が?」
「ごめん、何でもないよ」
OLちゃんの手を堪能した俺はなつちゃんの元へと帰ってきた。そのままあそこに居たら、来人くんにキレられていたかもしれない。なんで邪魔したんだっ!てね。
「そういえば、なつちゃんと私っていつからの付き合いなんだっけ?」
「どうしたの急に?えっとー……小学校低学年の頃には既に一緒に遊んでたはずたけど」
何!?そんなに長い付き合いだったのか。待てよ……もしかしてなつちゃんの事を遊びに誘っても不自然では無いのでは?
「じゃあさ、今日の放課後遊びに行かない?」
「えっ……?古谷さんか、北山さんとか……クラスの男子とかと行かなくていいの?」
なんでギャルちゃんとツンデレちゃんの名前が出てくるんだ……?
「なつちゃんと行きたいから誘ってるんだけど、ダメだった?」
「私と……?全然ダメじゃないけど……」
なんか渋ってるな。うーん嫌がってる訳では無さそうなんだが……
「可愛い可愛い幼なじみと寄り道したいだけだからさ」
「ちょっとなにそれー!そういうのは男に言うセリフでしょ!」
なつちゃんと放課後寄り道をする約束が出来た辺りで学校の最寄り駅に到着した。
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「可愛い可愛い幼なじみと寄り道したいだけだからさ」
さっきの零の言葉を思い出す。
きっとただの冗談だと思う。だけど久しぶりに遊びに誘ってくれたのが、好意とか以前に嬉しかった。
すっかり一軍女子とか男子達と絡むことが多くなって、私とはもうあんまりつるまないんだろうなって薄々思ってた。そんな予想を裏切って遊びに誘ってくれた。
だけど、零は友達としての私を誘ってくれたのだから勘違いしてはいけない。零が誰と付き合おうと応援する。私が出来ることならサポートする。だから一緒に遊ぶくらい、いい……よね?
零と一緒に電車から降りると同じ電車の中から来人さんが降りてきた。辺りを見回してこっちに気づくと駆け寄ってきた。あぁ零のこと探していたんだ。
「零さん!改めてさっきは痴女から助けてくれてありがとうございます!さっきのお礼に放課後どこか行きませんか?」
心臓がドクンと跳ねた。そっかさっき零が一瞬いなくなったのって来人さんのことを助けに行ってたんだね。凄いな。視野も広いし助けに行く勇気もあるなんて。
いやー、タイミング悪いね。別に二人とも悪いわけじゃないけど、遊びに行く約束した日に丁度ってのがツイてない。
この世に男から誘われていて、女との約束を優先する人がいると思う?普通に考えて居ないでしょ。
「零。私は今度行ってくれればいいから、今日は……」
「いや、お礼とかいいから。しかも今日は先約あるし。ねっ?」
は?なんで行かないの?せっかく男子から誘われているのに。
「そうでしたか……じゃあ今度何かお礼させてください」
「なんでさっきの断っちゃったの?」
「なんでって、なつちゃんと放課後寄り道する予定だったし」
零は、さも当たり前のように答える。敵わないな……流石はクラスの男子全員と仲良くなり、一軍女子達とも遊びに行ったり出来る女、余裕がある。
「というか、なつちゃんと寄り道するの楽しみにしてるんだからキャンセルしたりしないよ」
今まで散々一緒に遊んでいるのにそんなことを言ってくれる。零は変わってしまったけど、やっぱり良い友達だ。
これから零と仲良くなる人は増えていくのだろう。男女問わずにね。だから、たまにでいいから思い出した時私とも遊びに行って欲しいな。なんて思うのは我儘かな?