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第4話 机の上に置かれた一枚の紙。呼び出されたのは校舎裏

読んで頂きありがとうございます!


この状況、非常に不服である。


なんでクラスにはこんなに女子がいるのに俺の周りには男しかいないんだ?


「姐さんどうかしたのか?苦手な物でもあったか?」


「雪村さん、好き嫌いはしちゃだめだよ」


来人くんと相沢くんが声をかけてきた。ちげぇよ。お前ら2人と蒼真くん。それと俺を合わせた4人で飯食ってるのが意味わからないんだよ。


なんで男女比偏ってるのに男3人まとめて寄ってくるんだよ……女子たちの視線が痛いよ。


「はぁ……違うよ。なんで皆して私のとこで食べてるのかなって」


「相沢が雪村さんと一緒に昼飯食べたいってうるさくて」


「はあ!?違うよ!僕はただ、この前のお礼に何だったら受け取ってもらえるか聞こうとしてただけだよ!」


蒼真くんが相沢くんをからかっている。この前のお礼ってまだそんなこと言ってたのか。1回ナンパを邪魔したからって根深いヤツめ。


「俺はただ一緒に食べたかっただけです。言ったじゃないですか、飯は一緒に食べたい人を誘えって」


俺そんなこと言ったっけ。はぁ。なつも他の友達と食べてるみたいだし今日くらいしょうがないか……


「それでさ雪村さん。なんか好きなお菓子とかある?趣味でよくやってるから色々作れるよ」


相沢くん……君が女の子だったら大喜びするところだが男の手作りお菓子は遠慮したい。それに恨みを買っているはずだから何を入れられるか分かったもんじゃない。


「私に渡すくらいなら他の子に渡したら?多分喜ぶよ」


「えっ……それじゃあお礼にならないよ」


くっ。相沢くんがしょんぼりしていて若干罪悪感が……


「相沢!姐さんはな。自分に有利な人間関係なんて求めていないんだよ。出会いがどうであったかなんて関係ない。対等な人間関係で在りたいと思っている。そうでしょう?」


何言ってんだこいつ。俺は可愛い女の子と仲良く出来ればそれでいいのに。というかそれしか求めてないんだが……


「来人……そうだな。今の雪村さんはそういう人だ」


おい蒼真くん。何わかったようなこと言ってんだ。後方腕組み彼氏面してんじゃねぇよ!


「それにしても本当に変わったね雪村さん。前とは違って一緒に居て居心地がいいよ。他の女子はグイグイ来たり逆に緊張しすぎて会話にならなかったりするけど雪村さんはそんなことないからね」


「ちょっと素っ気なさすぎる気もするけどな」


そりゃ元男だからな……お前らには1ミリも興味無いんだよ……


昼休憩の終わりを告げるチャイムがなり各々席に戻って行くと俺の席の横を通った女子が小さく畳んだ紙を机の上に置いていった。


まさかこれは……!畳まれてた紙を開いてみると『放課後校舎裏にて待つ 』と書かれていた。告白か?告白なのか!?


俺は逸る気持ちを抑え、5、6時間目の授業を聞き流して、校舎裏へと向かった。


「ここでいいんだよな……?」


まだ学校内の地理には詳しくないが校舎裏っぽい所はここしかない。5分ほど待っているとクラスの女子の一人がこっちに歩いてきた。確か名前は……美佳って呼ばれてたはずだ。茶髪のショートで気の強そうな雰囲気がいいんだよなぁ。話してみたいと思っていたがまさかいきなり告白されるとは。俺の青春始まったな!!


「あんた何調子乗ってんの?」


これから末永くよろしくお願いしま……え?


「男独り占めして、一緒にご飯食べてクラスの皆に見せつけてさ。顔が良いと性格変態でもモテんのか?ハッ。羨ましいね」


えぇ……違った。告白じゃないわ、これ。


「私だって望んで一緒に居た訳じゃないよ」


「なにそれ?女はどれだけ努力しても男を捕まえられないのが普通なのに……それなのにあんたは!!」


痛ったぁ……美佳ちゃん意外と乱暴だな……襟首掴まれて壁ドンされちゃった。うーむ、近くで見てもやっぱ可愛いな。こういう気の強そうな子はデレたときのギャップが良いんだよな。うん。


「しかも相沢くんの手作りお菓子断るとか、まじでありえない」


「相沢くんの事が好きなの?」


「来人様みたいなタイプが苦手な人は相沢くんか蒼真くんに行くでしょ。相沢くんは女子にも優しい時がたまにあるから人気よ……って雪村相手に何言ってんだか。最近のあんた前と全然違うから間違ったじゃない」


美佳ちゃんは相沢くん派なのか。あの平凡気取りの優男め。畜生……俺が男としてこの世界に来れていたら美佳ちゃんに優しく接して惚れられてたかも知れないのに。


「とにかく男独り占めするんじゃないわよ」


よしこれからは美佳ちゃんのためにも昼飯は女子と食べよう。


「きゃっ!?」


捨て台詞を吐いて去って行った美佳ちゃんが奥の曲がり角で誰かとぶつかったみたいだ。尻もちをついて転んだ美佳ちゃんの姿が見えた。


寄っていくとそこには相沢くんと蒼真くんが居た。表情を見るかぎり、どうやら見られていたようだな。


「北山美佳。お前ってこういうことするんだ。最低だな」


蒼真くんが冷たい声で言い放った。相沢くんも冷たい目で見ている。自分の想い人に一部始終を見られていた美佳ちゃんは顔面蒼白だ。


絶望した表情が好みって人も一定数いるが……いざ目の前にすると可哀想で見てらんないな……よし。


「なんか勘違いしてるようだけど、私が美佳ちゃんを呼び出して告白したら、女同士は無いわって振られただけだから」


「「は?」」


この距離じゃ会話は大きい声出した時くらいしか聞こえては無いはずだ。


「努力しても男にモテないからって女に告ってんじゃねえよって喝入れられたところ」


「本当か?」


美佳ちゃんが答えを求めるようにこっちを見てくる。


「だからそうって言ってるじゃん。あーあ、授業中何回か目が合ったから運命かと思ったんだけどなー」


「雪村さん……授業中目が合っただけで運命の人なら運命の人だらけだよ……」


呆れたように相沢くんにツッコミを貰うが気にしない。相沢くんに美佳ちゃんをくれてやるつもりは無いが想い人嫌われるのはさすがに可哀想だ。


「そういうことだから、そろそろ行くね。美佳ちゃん来てくれてありがとうね」




ーーーーー


5、6時間目の間雪村さんがやたらそわそわしていたから、蒼真くんにお願いして、着いて来てもらった。雪村さんの後を着いていくと校舎裏に着いた。なんで校舎裏?と思って2人で隠れていると、クラスメイトの北山美佳が来た。


嫌な予感がして見守っていると北山さんが雪村さんに掴みかかった。所々しか聞こえないが、雪村さんが僕たちとお昼ご飯を食べていたのが気に食わなかったようだ。


「ねぇ蒼真くん。もしかして雪村さんが僕たちとお昼ご飯食べるのを渋っていたのって……」


「あぁ。こうなる可能性を危惧していたのだろう。気づかずに遠慮しているだけだと思ってしまった」


何がお礼したいだ。僕たちの行動のせいで雪村さんがこんな目に遭ってしまった。話が終わったようで北山さんがこっちに来た。逃げる必要はないだろうーーー




なんで八つ当たりを食らっていたはずの雪村さんが北山さんを庇っているの?というか嘘つくの下手すぎない?


めちゃくちゃ下手な嘘を吐いて雪村さんは何処かに行ってしまった。校舎裏には僕と蒼真くん。あと北山さんが残された。


「あの……相沢くん、蒼真くん。雪村が嘘ついてるのは分かったよね?」


「あんだけ下手だったらな」


蒼真くんも苦笑いしている。


「私はクラスの男子とご飯食べてるのが羨ましくて八つ当たりしたの。なのに雪村は私を庇おうとした。普通ならライバル減らせる絶好の機会のはずなのに」


「そうだね。そうだと思った。でも僕たちが北村さんを責めたりしないよ。呼び出された本人の雪村さんが許してるのに何もされてない僕たちが責めたりしないよ」


この状況で雪村さんと同じことが出来る人はどのくらい居るだろうか?少なくとも僕は1人も知らない。


「ごめんなさい……ごめんなさい!」


北山さんが泣き出してしまった。謝っているようだけど相手が違うよね?


「謝るなら雪村さんにでしょ?ほら立って」



ーーーーー



先日美佳ちゃんに呼び出されてから男連中が頻繁に寄ってくることはなくなった。美佳ちゃんが男共に何か言ってくれたのかもしれない、ありがたや。


噂をすればなんとやら、美佳ちゃんが俺の前の席を借りて座った。


「雪村……その、この前は悪かった。それと私が嫌われないように計らってくれてありがとう」


「そりゃよかった。可愛い子には笑顔で居てもらいたいからね」


「あんた……それ本気で言ってる?」


美佳ちゃんの表情が険しい……なんでこの世界の人はこんなに百合(ガールズラブ)に厳しいの?いや、押し切れるか……?


「本気だよ。美佳ちゃんはすごい可愛いから笑ったらもっと素敵なんだろうなって」


「ごめん、感謝はしてるけど……身の危険を感じるから戻るね。じゃあね」


ちくしょう!!!


それからというもの美佳ちゃんと目が合うと、何とも言えない表情で会釈されるようになった。



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