第24話 どしたん話聞こか……それは男が悪いわ
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「はぁ……」
休み時間、美佳ちゃんが机に突っ伏してため息をついている。
「どうしたの?昨日はあんなにテンション高かったのに」
「いや、別に」
美佳ちゃんは顔も上げずにごもごもと返事をする。明らかに元気がないし、相沢くんと何かあったに違いない。
「よし、ちょっとシめてくる!」
「ちょっ!待って待って!相沢くんは何も悪くないから!」
俺はまだ誰をシめるか言ってないのに相沢くんの名前が出てくるということは、やっぱり原因は相沢くんだ。
「昨日……何があったの?」
「……言いたくな」
「それは相沢くんが悪いわ」
「まだ何も言ってないでしょ!?」
美佳ちゃんは深い溜息をつくと立ち上がり言った。
「どうせ雪村には分からないから」
そう言い残し教室を出ていってしまった。追いかけようとすると制服の裾を掴まれて、沙那ちゃんに止められてしまった。
「今はそっとしておいてあげなー」
「でも……それじゃあ……美少女からしか得られない栄養を誰から摂取すればいいの……?あっ、こんな所に美少女ギャルが……」
「ひぃっ……!そんなもの無いから寄ってくるな!」
どうにかして元気を出して欲しいところだが、まずは何があったのか相沢くんに話を聞いてこよう。
蒼真くんと話している相沢くんに寄っていくと相沢くんがなんだか嬉しそうに話かけてきた。
「珍しいね、零さんの方から来てくれるなんて!」
「どうかしたのか雪村?」
「昨日美佳ちゃんと何処に行ったのか気になっちゃってさ」
そう言うと相沢くんの表情が強ばったのが分かった。
「北山さんからは何か聞いたの?」
「……言いたくないって」
「そっか……ごめんね零さん。秘密にするって言っちゃったから言えないんだ」
男女の秘密……だと……!?ま、まさか無理やり美佳ちゃんに迫ったりしたのか!?
「言えないようなことしたの……!?」
「な、なんか変な事考えてない!?ないよ!ないからね!?」
相沢くんは勢いよく否定した後、深呼吸して真剣な表情になった。
「やましいことは何もないけど、約束したから言えないんだ。ごめんね」
あまりにも真剣に言われたので、これ以上追求するのは気が引けた。
「はぁ……分かったよ。もう聞かないよ」
「ごめんね、零さん」
ーーーーー
今まで何度も告白されてきた。
でもそれは僕に魅力があったからとか、そういうんじゃないんだと思う。
男だったから。なんか優しそうだったから。そんな雑な理由。
優しいんじゃなくて、強く言えないだけなのにね……
今まで波風を立てないように断って来た。今回も同じなはずだった。
北山さんが僕の事をデートに誘ってきたことは最初から分かっていた。でも僕は気づいていないフリをした。北山さんには僕の事を諦めて欲しくて、それを伝えるきっかけにする為に。
でも今にも泣きそうな表情の北山さんを見て心苦しかった。今まで断った相手には、泣いていた子も怒ってきた子も居たけど、そんなこと1度もなかったのに。
「傷ついたよね、きっと……」
初めの頃は零さんと仲のいい人くらいの印象だったけど、一緒に過ごしていくうちに、僕の中ではちゃんと友達だったんだ。
「もっと良い伝え方……あったかな」
嘘をついて相手を傷つけるようなものではなく、もっと良い伝え方が。
自室の天井を見上げてふと、思いついてしまう。
もし、北山さんが零さんにこの事を伝えたら、零さんは僕の好意に気づいてくれるのかな……そして答えてくれるのかな。
すぐに両手で頬を叩いて考えを改める。
直接言う勇気がないからって、今さっき振った人を使って安全な場所から結果を待っていようとか、最低だ……!
僕の選んだ選択肢だ。例え交友関係が変わってしまおうとも、零さんへの誠実さを示す為にも、うやむやにしてはいけないんだ。
ーーーーー
「珍しいね、零が休み時間に私の所にいるの」
学校にはいつも一緒に来るけど、休み時間、私の所に来てくれることはあまりない。
「なつちゃんだけが私の癒しだよ……」
「え、な、何言ってるの!」
顔が火照ってしまう。冗談で言っているだけかもしれないけど、好きな人に少しでもそう思われるのは素直に嬉しい。
「美佳ちゃんは口聞いてくれないし、沙那ちゃんもすぐ逃げ出しちゃうし。まぁ、男子達は今まで通りなんだけど……私は可愛い女の子と仲良くしていたいんだ!」
零が拳を握りしめて嘆いている。その可愛い女の子の中に私も入っているのかなー……って嘘嘘。北山さんとか古谷さんの事だよね。
「ねぇ、なつちゃん。どうやったら美佳ちゃんとまた元の感じに戻れると思う?」
好きな人から他の女との仲直りの方法を相談されて、中々にメンタルが病みそうになるが、何とか思考を巡らせる。理由が分からずに避けられているんだったっけ……あれ……?仲の良い女の子……避けられている……
なんだか既視感がある。うん。私だ。零からしたら今でも、あの時私から突き放された理由は分かっていないはずだ。もしかして……もしかすると……北山さんも、零の事が……!?!?
「う、うーん……そうだねー。なんで避けられているのか分からないんだもんね……どうしようね~……?」
行き着いてしまった結論に動揺を隠せない。
「なつちゃん汗すごいよ?大丈夫?」
「だ!大丈夫!大丈夫だよ!」
北山さんは男子グループの内の誰かを狙っていて、零と一緒に居るのだと勝手に勘違いしていた。まさか……私と同じだったなんて……!
安藤なつは盛大な勘違いをしていたが、この時、それに気づくことは無かった。
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