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第18話 着替えくらい別に気にしなくていいのに

読んで頂きありがとうございます




「雪村は寝てていいからな」


「零さん。おかゆ作るから台所借りるね?」


自分の家のことを他人にやって貰っていると、どうにも落ち着かないが今回ばかりは厚意に甘えるとしよう。


「三人ともありがとね」


「気にしないでください姐さん、それより何かして欲しいことはありませんか?料理は二人がやってくれるみたいなので俺にも何かさせて欲しいんです」


とは言われても思いつかないな……ただせっかく来てもらったし、来人くんも自分だけ何もしないのも暇だろうしなー。


「えっとー……じゃあ部屋まで肩借りていい?足元ふらついちゃって」


「任せてください!なんなら背負って行きますか?」


「い、いや、そこまでしてもらわなくても大丈夫……」


来人くんに肩を借りて部屋まで歩き、ベッドに横になった。深呼吸をすると瞼が重くなってくる。


「何かして欲しいことがあったらなんでも言ってください!」


「じゃあ、着替えを取ってもらってもいい?そこの引き出しに入ってるから」


帰ってきてから一度着替えたが、汗をかいたので着替えたかった。


「俺が開けていいんですか……?」


「うん?大丈夫だよ?」


何を躊躇っているんだ?もしかして貴重品周りに配慮してくれているのか。そんなこと確認しなくていいのに。


「こ、これで良かったですか?」


「ありがと」


部屋着を受け取り着替えるために今着ている服のボタンを上から外していく。


「ちょっ!?俺、まだ居ますよ!?」


「……?来人くんが居たら問題あるの?」


男同士でそんな恥ずかしがることあるか?全裸になる訳でもないのに。


「大ありですよ!いくら女性とはいえ、恥じらいを持ってください!」


そうだった、今は女なんだった。熱のせいか、さっきまで一人暮らしの思い出を振り返っていたせいでなのか忘れてしまっていた。


だからと言って、前の世界に直すと男の着替えを女友達が見るようなもんだろ。そんな気にするほどのものなのか……?


「別に気にすることないのに」


「な、なぁぁぁ!?それってどういう意味で言って……」


顔を赤くした来人くんが何か反論しようとしていたが入ってきた蒼真くんと相沢くんによって遮られてしまった。


「来人、どうした大きな声を出して」


「零さんは今病人なんだから、しーだよ?零さんこれおかゆ。お腹すいたら食べてね」


差し出された小さな土鍋からは梅の香りがして食欲をそそられる。


「わ、美味しそう。今食べようかな」


「熱いから、さ、冷ましてあげるね……」


冷ます……?俺の嫌な予感は的中して相沢くんはスプーンでひとすくいすると、ふーふー、と息で冷まし始めた。


「相沢!料理はほとんどやらせてしまったし、俺がやるから休んでていいぞ」


「いや、姐さんから圧倒的信頼を得た俺がやったほうがいいだろ」


「わ!何するの二人とも!」


相沢くんが女の子ならお金を払いたいレベルだが、男にやられるとゲンナリする。作ってくれたのは感謝してるけどさ……


理由はよく分からないが三人が揉めているので机に置かれたおかゆを自分で食べることにした。




ーーーーー




「分かった……ジャンケンで決めよう」


「いいだろう」


誰が食べさせるかで話し合っていたが収拾がつかなくなったのでジャンケンで決めようと蒼真くんが言い出した。僕が作ったのに……


ふと、零さんのほうを見ると一人でおかゆを食べて寝てしまっていた。他2人も僕の視線で気づいたようでガッカリしている。


「はぁ……帰るか」


蒼真くんが溜息をつきながら立ち上がったとき、固定電話が鳴る音が聞こえてきた。


「む、出ない訳にはいかないよな」


「僕が出るよ」


小走りで音の方に向かうと廊下に受話器を見つけた。


「はい、もしもし、あいざ……」


いや、待って。零さんの家なんだから僕の苗字名乗ってどうするんだ。


「ゆ、雪村です」


まるで結婚したみたいだな、と思うと顔が熱くなってくる。


「えっと……どちら様ですか……」


電話先の女性の声は困惑している。だけど何処かで聞いた事があるような。


「もしかして、零さんのお母さんですか?僕相沢っていいます。この前一度お邪魔させて貰ったのですが……」


「相沢くんだったのね!もしかして零が熱出たから来てくれていたの?」


どうやら先生から連絡を受けて心配で電話を掛けてきたらしい。


「じゃあ、悪いけど零のことよろしくね」


「はい、任せてください。お仕事頑張ってくださいね」


「うぐ……なんていい子……」


電話を切って深呼吸をする。結婚かぁ……いやいや、付き合えてもないのに気が早いよね。


「誰だった?」


蒼真くんが零さんの部屋から出てきて聞いてきた。


「零さんのお母さんだったよ」


「そうか、ところで鍵を閉められないことに気づいてな。俺が残るから二人は帰ってていいぞ」


あ、確かに零さんを起こすのも悪いし鍵閉められないか……ってどさくさ紛れに零さんと二人きりになろうとしてない!?


「僕も暇だから残るよ」


「ちっ……」


「今舌打ちしたよね!?」


蒼真くんとふざけ合ったり、来人くんと話したりしながら、零さんが起きるまで三人で待つことになった。




ーーーーー




今……何時だ……?


目を覚ますと外はもう暗かった。時計を見ると19時。日が落ちるのも早くなったな。


起き上がると、まだ少しふらつく。水を飲むためにリビングに向かうと、まだ三人は帰ってなかったようだ。


「あ、零さんおはよ」


「体調はどうだ?」


「さっきよりは良くなったよ。それより帰らなくていいの?」


三人は鍵が閉められないことに気がつき、俺が起きるまで待っていてくれたらしい。二時間以上待たせてしまった。悪いことをしたな……


「三人とも悪かったね。今度何かお詫びさせてよ」


「姐さん、俺たちが好きでやったことなんでお気にせず」


他二人も頷いている。クラスメイトの為にここまでしてくれるとはいい奴らだ……三人がモテるたびに邪魔していたのがちょっと罪悪感だ。




その後三人を見送った俺は、再度ベッドに横になる。二日間泥のように眠り、月曜日には完全に回復していた。



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― 新着の感想 ―
男子達マジでいい子たちだよなぁ
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