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第15話 夏休み明け、やっぱり男子達が羨ましい……

読んで頂きありがとうございます!




一ヶ月はあったはずの夏休みもあっという間に終わってしまい、俺はしぶしぶ、なつちゃんと一緒に教室を目指して歩いていた。


「あと1週間休みたい……」


「零ったら、まだ言ってるの?休みは終わったんだから諦めなって」


なつちゃんに呆れられてしまった。なつちゃんは休みが終わるのが嫌じゃないのだろうか。


「なつちゃんはまだ休んでいたいって思わないの?」


「ん?そりゃ久しぶりの授業はちょっと面倒臭いけどさ……終わっちゃったもんはしょうがないでしょ?」


うん……その通りなんだけど、中々切り替えられないのだよ……でもまぁ、これ以上言ってもどうしようもないし切り替えていくかぁ。


「それに……会えなくて寂しかったから……」


「なんか言った?」


「な、なんでもないよ、気にしないで」


話しているうちに教室に着いた。扉を開けるとクラスの女子達が一斉にこっちを見てきた。なんだ?モテ期か!?


「零か……おはよ」


沙那ちゃんを筆頭に興味を失ったように視線を戻した。


「皆……どうしたの?」


沙那ちゃんの代わりに隣に座っていた美佳ちゃんが答えてくれた。


「皆、夏休み中男に接点無さすぎて荒れてるの。はぁ、早く男子たち来ないかな」


そういうこと……か?いや、どういうことだよ。


「男と話さないだけでこんな風になる……?」


「なるでしょ。まあ雪村みたいに、クラスの男子と仲良くて、いつでも遊べるような奴には分からないか」


「皆で海行ったきり男子達とは会ってないけど……あぁ、でも一ヶ月近く美佳ちゃんに会えなくて寂しかったからその気持ちは分かるかも」


なんで夏休み中にわざわざ男を呼び出さなきゃならないんだ。遊ぶなら女の子と遊ぶに決まってる!まぁ、勇気が出なくて誰も誘えてないんだけど。


「分かるな!寂しがるな!休み明け早々辞めてよ頼むから……」


「そんなに拒否らなくても……はっ!嫌よ嫌よも好きの内ってやつか」


俺の冗談に美佳ちゃんは涙目になりながら沙那ちゃんに助けを求めた。


「沙那助けて!雪村が夏休み中にレベルアップしてる!怖い!」


「あは、お幸せに」


「ちょっとー!?」


美佳ちゃんと沙那ちゃんがじゃれあっているのを微笑ましく見ていると、なつちゃんが話しかけてきた。


「零……クラスの男子達と海行ったんだ?」


「ん?うん。行ってきたよ」


「そっかぁー。零は人気者だねー」


どうしたんだろ。いつもはカラっと明るいイメージだったなつちゃんの様子がおかしい。もしかして、なつちゃんも男子達と海行きたかったのか?この世界の女子は男に飢えているし、きっとそうだな。


「……今度なつちゃんも男子達と遊べるようにセッティングするよ」


「え、男子達と……?あー、ありがとう……」


本当は二人で遊びたいところだが、なつちゃんの幸せが1番だからな。




ガラリと教室のドアが開いて男子達が入ってくると一気にクラスの女子達が集まって行った。だけどなつちゃんは動く様子がなかった。


「なつちゃんは行かなくていいの?」


「えっ?あ、うん。行ってくるね」


なつちゃんを見送ってから、席に座り、しばらくすると女子たちの包囲網から抜け出した。蒼真くんが隣に座った。


「朝から疲れた……」


「自慢かな?」


「いや……自慢なわけないだろ」


朝から女子高生に囲まれてもみくちゃにされるとか、ご褒美でしかないと思うのだが。


「あれ?相沢くんは?」


「まだあの中だな」


蒼真くんが指差した先には女子の大群がいる。相沢くんは背が低いので姿は見えないが、女子が散っていかない所から考えるに本当にいるのだろう。いいなぁ。俺も自分より背の高い女の子に囲まれて出られなくなりたいなぁ。もしそうなったら出る気も起きなさそうだが。くそぅ、相沢くんばっかりいい思いしやがって……


蒼真くんを残して、人だかりの中に進んで行こうとする。しかし我先にと相沢くんに話しかけようとする女子達を掻き分けて進むのは中々難しい。


「ちょっと失礼するよー」


無理矢理進むと悪気がなくても女子の身体と触れてしまう。


「触っちゃうのは不可抗力だからしょうがないよね!」


そう言った瞬間相沢くんまでの道が、ザっと音を立てて開いた。


「ひっ、雪村がきた……」

「変なとこ触られるぞ!道を開けろ!」



ええ……そんな嫌われることある?




「零さんありがとう、助かったよ……」


席に着いて落ち着いた相沢くんはお礼を言って寄越した。


「どーいたしまして。ん?それは?」


相沢くんが沢山のお菓子を抱えている。朝来た時はそんなの持ってなかったよな。


「さっき女子達からお土産とか、作ったから食べてみてとか言われて渡されたよ」


なるほど、男子と話すための口実を皆用意してたって訳か。


「いいなぁ。私なんて皆から避けられたっていうのに」


「日頃北山とか古谷に変なこと言ってるからじゃないか?」


蒼真くんの指摘には返す言葉もない。


「でも困ってたから零さんが助けに来てくれて嬉しかったよ!かっこよかったし……ほんとにありがとう」


相沢くんが頬を染めながらお礼を再度言ってくる。いや、本当に相沢くんが女の子だったら嬉しいんだけどさぁ、男にそれ言われても……


「来人のやつ遅いな、もうチャイムなるぞ」


蒼真くんが時計を見ながら呟いた。来人くんはいつも余裕を持って学校にきてたから珍しいな。


「はぁはぁ、セーフ!セーフだよな!?」


勢いよく教室に来人くんが入ってきた。その瞬間女子達が歓喜の声を上げた。急いで来たからなのか、走ってきて暑かったからかは分からないが第3ボタンくらいまで開けて息をはぁはぁと切らす来人くんに喜んでいるようだ。


貞操観念逆転世界でガードの緩い主人公が肌を見せて喜ばれる。定番イベントだ。やりたかった……そのイベント俺がやりたかった!!男だったら絶対やったのに!


「おはようございます零さん!蒼真に相沢もおはよう」


「おはよう。ネクタイ貸して」


「え?あ、はい」


これ以上女子を虜にされない為に早々に隠す必要があるのでネクタイを奪い取った。


「向かい合ってると難しいな……来人くん座って」


「は、はい!」


座った来人くんの背後からネクタイを締めてやった。これで注目されることもないだろ。


「よし、出来た。ってどうしたの?」


来人くんは耳まで赤くして何も言わないし、相沢くんも口元を両手で隠して頭から湯気でも出してそうな様子だ。蒼真くんも固まっている。


「おーい?」


来人くんの目の前で手を振りながら声をかけるが返答がない。


「えっちだ……」


相沢くんがポツリと言う。は?何がえっちなの?


「それはなんかえっちだよ!ほら、来人くんしっかり!」


わ、訳が分からない……


「雪村、ネクタイが解けた上に締め方をド忘れしたからやってくれないか?」


蒼真くんも何を言っているんだ……?



何を騒いでいるのかは分からないが、こうして新学期は始まったのだった。



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