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第14話 帰りのバスにて

読んで頂きありがとうございます!

投稿間隔空いてしまい申し訳ないです……




「んー!疲れたー!」


日も沈みかけた頃、俺たち6人はバス停のベンチで休みながら次のバスを待っていた。


「ほら、沙那ちゃん疲れたなら膝枕してあげるからおいでよ」


「女の膝枕なんてされたくないわ!やっぱこういのは男子に膝枕して貰うのが女の夢って言うもんだよねー」


沙那ちゃんが話しながら蒼真くんの方を見ると、蒼真くんはスッと視線を逸らしていた。美少女に膝枕するのもされるのもご褒美だと俺は思うのだが、蒼真くんは違うのか……?


「ちぇーだめか……そうえば!行きの時は男女で別れてたじゃん?帰りは男女ペアで座らない?」


「いいね、こんなこともあろうかと割り箸でクジを用意しておいたから男女別れて引いてね」


沙那ちゃんと美佳ちゃんで事前に決めていたのだろうか?他の人に有無を言わさず男女ペアになる流れを作った。正直俺は女の子の隣がいいんだけどなぁ。


「先に女子からね。」


美佳ちゃんに差し出された割り箸を引くと先が青く塗られていた。ふと、男子の方を見るとなんだか凄いやる気だ。


「零さんは青色……絶対当てる……」


「青を引けば雪村の隣……」


「二人とも悪いな……俺はクジで青色以外引いたことないんだわ……」


3人ともそんなに青色好きなの?そして来人くんは嘘下手かな?


「みんな選んだか?せーのっ!!」





「ねえ相沢くんお菓子食べる?」


「あ、ありがとう北山さん」


うわーいいなー。俺も美佳ちゃんにお菓子食べさせられたかった。


「来人くん!疲れたら寝てもいいからね!肩でも膝でも貸すよ!」


「ああ……そりゃどうも……」


沙那ちゃんの膝枕……だと……!?よし、来人くんは羨ましすぎるからあとで1発殴ろう。


「雪村」


隣に座った蒼真くんが不意に声を掛けてきた。


「ん?どした?」


「海は楽しかったか?」


もしかして、俺がナンパされて嫌な思いをしたかもと気を使ってくれているのか?優しいとこあるじゃないか。


「うん、すごく楽しかったよ、海きたのも久しぶりだったし」


「そうか」


蒼真くんは口数が少ない方だと思う。でも、何も話していなくても、隣に居て居心地が悪いと思ったことは無いからきっと良い奴なのだろう。


しばらくバスに揺られていると肩に蒼真くんの頭が当たった。海で遊び疲れて寝てしまったのか。いつもはクールで大人っぽい友達の子どもっぽい一面を自分だけが見てしまう……これが女の子だったら最高のシチュエーションだな。


まぁ……隣にいるのは男なんですけどね。


でも、起こすのも悪いし、肩くらい貸してやるか……




ーーーーー



……寝てしまっていたのか。


せっかく雪村の隣になれたというのにもったいないことをしてしまったな。


隣に寄りかかっていた身体を起こそうとするが、とあることに気づいてしまった。


俺、雪村の肩に頭乗せて寝てた……?


起き上がるのをやめて、寝たフリを続けたまま思考を巡らす。


うわ……待ってくれめっちゃ恥ずかしいんだが。遊び疲れて寝てただけでも恥ずかしいのに、片思い中の女子の隣で寝顔晒した挙句、身体すら預けてたとか……


もし隣に居たのが雪村じゃ無かったら何されてた事やら……いや、雪村だったから安心して寝てしまったのかも知れない。


でも隣で男が無防備に寝ているのに何もしてこないというのもちょっとショックだ。その誠実で男にガツガツ寄って来ないところが良いと思っていたはずなのに、雪村になら何かされてもいいと心のどこかで思ってしまっている自分がいる。


「何考えてんだ俺……」


「あ、起きた。蒼真くんおはよ」


……しまった。声に出てしまっていたようだ。これはもう平静を装うしかない。


「悪いな。重かったろ?」


「んにゃ。全然。疲れてるなら着くまで時間あるし寝てていいよ。着いたら起こすから」


雪村の言葉には下心が全く感じられない。本当にただ優しさからくる言葉だ。だがこれ以上気の抜けた姿を見せたくない。


「いや、大丈夫だ」


「そう?」


雪村は一言だけ返すと、窓の外を眺めていた。



隣にいるが会話はない。だけどその静けさが今は心地よく感じた。



ーーーーー



はぁー……零さんの隣は蒼真くんになっちゃったか……


通路を挟んで反対側に並んで座っている。零さんと蒼真くんを見ているともやもやする。


もちろん蒼真くんは大事な友達だけど、零さんは譲れない。


零さんが変わるまで、女性よりも圧倒的に人数の少ない男同士で一人の女性を取り合うことになるなんて思ってもいなかった。


今まで男だからと言い寄られる……まで行かなくても好意的に接してくる人がほとんどだった。


そんな対等じゃない関係、こっちが有利な関係に疲れていたのかもしれない。


特別扱いしてこない、普通の友達として接してくれる零さんは一緒にいても疲れない。僕が勝手に緊張して疲れることはあるけど……


数ヶ月前にナンパから助けて貰った日のことは今でも鮮明に思い出せる。


今までも女性にナンパから守ってもらったことはあるけど、それはまるで捕食者同士の獲物の取り合いだった。僕からしたら状況は何も変わらない。でも零さんは違ったんだ。


ボーッと感傷に浸っていると零さんの肩に蒼真くんが頭を乗せて寝始めるのが見えた。


「なっ……!?」


「ど、どうかした……?」


「ごめん、北山さん、なんでもないよ」


驚きのあまり声が出ちゃった。だって肩にっ!頭をっ!だよ!?そんな恋人みたいな……!!羨ましい!!


「うわー……雪村……全世界の女子が羨ましがるようなことを平然と……」


僕の視線で北山さんも気づいたようでボソッと呟いた。


海で遊んだことを通して零さんとの距離が縮まったような気でいたけど、それは蒼真くんも同じ。うかうかしていると蒼真くんに取られちゃうかも……!



焦る気持ちはあるけど、今はバスの到着をただ待つことしか出来なかった。




ーーーーー



バスを降りて、いつもの見慣れた街を目にすると、非日常から日常に帰ってきたって感じがする。大きく伸びをしていると相沢くんが小さな声で話しかけてきた。


「零さん、忙しかったら全然断って貰っていいんだけどさ……夏休み中に遊ばない?」


「またどこかに皆で行こっか。どこ行きたいとかあるの?」


「えっと、ごめん今度は二人がいいな……なんて……」


てっきりこのメンバーでまた行きたいって話かと思ったら違ったらしい。


「私と相沢くんの二人で?」


「う、うん……だめかな?」


「いいけど……」


別に断る理由もないからOKしたが何故に俺と二人で?


「よかった……じゃあ後で連絡するね」



それからは各々電車や地下鉄で帰路に着いた。


一人電車に揺られながら、なんで相沢くんが俺だけを誘ったのか考えていた。


「なんでなんだろ」


そういえば、バスの中で相沢くんと美佳ちゃんは隣同士だった。あ、もしかして美佳ちゃんへのプレゼント選びとかそういうこと?美佳ちゃんの誕生日が近いことを知って、それで一緒に選んでくれとかそういう感じだな、きっと。


記念日や誕生日を蔑ろにしないとは貞操観念逆転世界の男のくせにやるじゃないか相沢くん。


可愛い女の子を落とすために協力するのは癪だが、頼られたからにはしかたない、協力してやりますか……




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