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荒れ廃れたこの場所で  作者: SET
1章 偽悪
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プロローグ

長編2作目ですが、今回は特に残酷描写等はありません。

 母に抱えられた子供はえずくと、そのまま吐いた。母の肩に吐瀉物がかかった。しかし彼女は走るのをやめない。死臭と硝煙が入り混じり、場は酷い臭いに包まれていた。侵攻してきたのは誰か。何故このような状態になったのか。

 そんなことを考えている暇はなかった。

 良くある話として聞かされてはいた。しかしこうして襲撃されて初めて、子供はその話を現実として認識していた。

 一通り吐き終えた子供は、次の瞬間、母の背にビルのコンクリートの破片が落ちて来るのを見た。避けて、と叫ぶ前に、それは母を押し潰した。

「どうしてみんなたたかっているの?」

 マレー語を使う子供は、頭を強く打ち倒れこんだ母親に抱えられながら呟いた。

「生きるためよ」

 母はかすれた声で、言葉を返した。

「どうしてほかのひとがいきるために、ぼくたちがころさなければならないの?」

 母の呼吸が段々と小さくなっていく。

「どうして……? どうして、ころさなければいきられないの?」

 小さな呟きは戦闘の騒乱にかき消され、答えを得ることはなかった。

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