2.新しい始まり
正午が近づくにつれて少しずつ
騒がしくなってきた廊下を歩くと
だんだんといい匂いが漂ってくる。
「いい匂い…アズールさん、もしかして。」
辿り着いたのは食堂。
「ええ、貴方にはうってつけの場所かも
しれませんね。」
半開きになっている食堂の扉を開ける。
「コハクさん。いらっしゃいますか?」
食堂の奥の厨房から声がする。
「んー?アズールちゃん?
どうかしたー?ごめんだけど今火を使ってるから厨房まで来てくれるー?」
声のする厨房へと歩く。
「ごめんねー。どうかした…あれ?
見ない顔だね。新人さん?」
ルージュの顔をじっと見つめる。
「ええ、今日からこちらで…」
「あー!もしかして貴女がロッソの妹さん!?わぁー!かわいい!かわいいね!」
火を見ていたのではなかったのか
目を外してルージュをハグ。
「えへへ、わたしコハク!よろしくね!
貴女は?」
「ル、ルージュです。」
とてつもない勢いのコミュニケーションに
たじろぐルージュ。
「ルージュちゃん!じゃあルーちゃんだね!
や〜ん。ロッソにこーんなかわいい妹ちゃんがいたんだぁ〜!」
ルージュをハグしたままよしよしと
頭を撫でる。
「いいないいなぁ〜、私もこんな可愛い妹が欲しかったなぁ〜!」
「コハクさん、そのあたりで…
火を使っているのでは…?」
「んぅ?おっとっとっと、危ない。危ない。
焦げちゃうよ。」
慌てて火元に戻るコハク。
「それで、アズールちゃん。
ルーちゃんが新しい給仕の子であってる?」
今までの喧騒はどこへやら。
火を止めて、落ち着いた声でアズールに問いかける。
「ええ、ルージュ。改めて紹介しますね。
こちらはコハク・ルーンアンバーさん。
この王城の家事を全て担ってくださっている方です。」
「はい。コハク・ルーンアンバーです。
よろしくね!ルージュちゃん!」
コハク・ルーンアンバー。
広大な王城で掃除洗濯炊事の全てを担う
スーパーメイド。
給仕は彼女1人しかいないが
それでも回っているというのだ。
「ルージュ・ドラントです!
よろしくお願いします!」
ぺこりと頭を下げる。
「うんうん、元気があっていいね!
それじゃあさっそく…と言いたいところだけど、今日初めてお城に来たんだよね?
アズールちゃん、こっちは大丈夫だからお城を案内してあげたら?」
「そうですね…ルージュはまだ王城の中を知らないですし、そうした方がいいですね。」
「うん、それがいいよ。
ってコトで行ってらっしゃい!
あ、ちょっとだけ待ってて!」
厨房の奥側にぱたぱたと駆けていく。
少し経つと小さな包みを持って戻ってくる。
「はい、お腹空いたら食べてね。
急拵えだから塩と海苔だけど許してね!」
渡されたのはおにぎり。
炊きたてだろうか、まだほかほかと湯気が
立っている。
「美味しそう…」
寝坊してりんごだけ齧って走ってきた
ルージュのお腹がなる。
「あっ…」
その音に笑みを浮かべる2人
「ふふっ、お腹空いてたんだ。
じゃあここであったかいうちに食べてって」
「そういえば走ってきてましたね。
ルージュ、寝坊したとはいえ朝食抜きは
だめですよ?」
先ほどと同じく、人差し指を立てる仕草。
「あはは…りんごだけ食べたんですけど
やっぱり足りなくて…」
もぐもぐとおにぎりを頬張りながら
照れ笑いをする。
「りんご好きなんだ?
じゃあ今度何か作ってあげるね。」
「ほんとですか!?
ありがとうございます!」
りんご料理を作ってくれるという
コハクの申し出に目を輝かせながら
最後のおにぎりを飲み込む。
「ごちそうさまでした。
美味しかったです!」
「なら良かった。さ、行っておいで!」
コハクに送り出されていくルージュ達であった。
…更新遅くないか?
あ、どうも。豹上です。
2月忙しすぎて構想練れなくて2話は微妙です。
まだまだ多忙につき更新遅いですが、
続けていきます。