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プロローグ
序章
私の知人が死んだ。
歌舞伎町のホテル街にある
アラビアの宮殿を模した
ラブホテルの一室で。
知人は回転ベッドの上に
仰向けに寝た姿勢で
息絶えていた。
全裸だった。
天井や壁一面に張られた鏡に
萎れた状態で死後硬直したいちもつが
カレイドスコープを覗いた時のオブジェクトのように
無数に写っていたという。
知人は
ウェブメディア運営会社を経営する
オーナー社長で
ビジネスは順調に拡大しており、
毎年クルーズ船で世界旅行を楽しみ、
イタリアの高級スポーツカーを
三台保有する程度の収入を得ていた。
人柄は温厚で
義理堅い上に
面倒見も良く
従業員や取引先からの信頼も厚かった。
その彼が、なぜ、そのような場所で
そのような死に方をしなければならなかったのか?