知◾️と死蔵の迷宮 その4
「階段だ……。」
トーマスの呟きに私も同意する。
これで……
「やった!これで出られる!」
私が思った事をクーちゃんが述べた。
これでなんとかなる。
「まだです。」
私達が喜んでいるとレーナがピシャリと発言する。
「ダンジョンは何階層にもなっていると聞いた事があります。ですから気を抜かない方がよろしいかと。」
「……うん。そうだ旅も帰るまでが旅だと言う。だからより気を引き締めていこう。」
私とクーちゃんが同意の意思を伝え、私はトーマスの肩を借りて私達は階段を降りる。
階段を降りた先は相変わらず本棚に挟まれた通路が続いている。
「やっぱりまだまだダンジョンは続くのか。」
「当然です。さぁ、嘆いてないで行きましょう。」
レーナに促され、歩き出す。
しばらく歩くと突然金属音がリズムよく鳴り響く。
「なに!?」
「なんだ!?」
「落ち着こう。」
クーちゃんとトーマスが驚く声をあげるので落ち着くように声を掛ける。
「
רק תזכורת: הגיע הזמן
למצמץ.」
なにか意味が分からない音が鳴った後、初めて聞く奇妙なこれから起きるような音が響き続ける。
「なにこれ!」
「さ、さぁ。なにかあるのでは?」
「と、取り敢えず進もう。」
「え、えぇ。進みましょう。」
私達は進む事にした。
それからずっと不気味な事が続いている。
「また……!」
レーナが苛ついたようなつぶやきをする。
先程から突然黒が現れてはしばらくこちらを見てから片手を口に当ててどこかに行ってしまう。
一回レーナが現れた瞬間に襲いかかろうとするもすぐにどこかへ行ってしまった。
今も少し離れた所の分岐路からこちらに顔を向けて通り過ぎている。
馬鹿にしているのか?
「何なんでしょうか?さっきから。」
「ま、まぁ。戦わなくていいから良いんじゃないかな。」
「それにしてもさっきからジジッジて音は何だろう?」
クーちゃんの疑問に私は上を見る。
当然上には何も見えずただ意味が分からない音が鳴り響いている。
何だろうか。
「行きましょう。こんな所。早く出なくては。」
レーナにそう急かされて私達は歩みを進める事にした。
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あれからしばらく歩く。
相変わらずあの音は鳴り続けている。
「止まって下さい。」
レーナの静止に私達は止まる道の先にはあの黒がいた。
だが、その黒は体を揺らしこれから襲う様子だった。
「どうやらあの方はこちらに興味があるようです。」
そう言ってレーナが鎌を構える。
確かにあの黒はこれから戦うようだ。
だが、何故今更戦うのか?
そう疑問に思った時に黒がこちらに掛けて来る。
そこでカチッ!と音が響き、目の前が真っ暗になった。
「なん-」
「伏せろ!照らせ!」
私が疑問に思うより先にレーナが叫ぶ。
色々考える事はあるがまずは肩を借りてるトーマスを足払いで倒す。
とりあえずトーマスは大丈夫。
クーちゃんは!
私は暗闇の中辺りを見回すと今まで気づかなかったが暗闇の中で小さい物体が僅かに何か光る物を放出しており、その手前にある物が周囲を見回すように動いている。
良かった。これが恐らくクーちゃんなのだろう。
安堵し掛けた時にクーちゃんの奥にいる物体が段々と大きくなっている。
「クーちゃん!」
何か嫌な予感がしてクーちゃんに抱きつきそのまま回り近づいて来ている物体に蹴りを放つ。
感触があった物の当たりが浅いのかどこかへ行ってしまった。
「うぐッ!?」
まだ本調子じゃないのか立ち眩みがしクーちゃん事屈む。
「リーちゃん!?」
クーちゃんの声がするが早くこの状況を打開しないと。
暗闇……照らせ……ならやる事は一つだ。
『灯よ-レジェロ-』
私は魔法で光る玉を出し、辺りを照らす。
これで状況が良くなるはず。
「2人とも伏せて!」
トーマスの鬼気迫る声に私はクーちゃん事床に倒れる。
その瞬間少し離れた所から大きなガラスを割るような音が一回辺りに響く。
これは杖の発砲音。
という事は-
私はトーマスとは反対方向の暗闇に目を向ける。
そこには頭を揺らし、今にも倒れようとしている黒がいた。
私が迫っている黒を認識するともう一度ガラスの割れる音が響き、黒が顔殴られたような倒れ方をして動かなくなる。
「2人とも大丈夫!」
トーマスが杖を暗闇に向けたまま私達の側に来てくれた。
「私もリーちゃんも大丈夫。ありがとう。」
クーちゃんがお礼を述べた。
「話は後にして下さい!早くこっちも照らして!」
まだ戦っていると思われるレーナから照らすようにと頼まれる。
今出している光をレーナの所に持って行ったらまた襲われる恐れがある。
なのでもう一つ光の玉を出してレーナの側に持っていく。
「やぁ!」
周りが照らされた事により状況が改善し、黒の頭に鎌を突き立てる。
「とりあえず襲撃は切り抜けたものの以前としてまずい状況ですね。」
レーナが鎌の血を振り払う(付いているように見えないが)動作をし、暗闇を睨む。
確かに前後の暗闇から刃物の鋭さを帯びた殺気と視線を感じる。
「とりあえずここに居ても仕方がない。レーナさん。前をお願い。クラリスはリーティエの手助けを頼む。リーティエはこの光をもっと出せないか?」
「これ以上は無理。」
お父様とお兄様はもっと出せたがあれは年季の差か?それとも儀式のお陰か?
「わかった。それじゃあ光を絶やさないようにしてくれ。」
この魔法は魔力を今もあまり使わないから消える度に新しく出せば維持が出来る。
「話は纏まりましたね。早く行きましょう。ここはやばいです。」
私達の話は纏まった。
「はい。体調が悪くなったら言って。」
クーちゃんが私の脇を潜り肩を貸してくれた。
「ありがとう。……重くない?」
「え?うんうん?劇で使うドレスとかの方が重いよ?」
私より重いドレスて何だろう?
鎧かな?
それからはあまり余裕は無かった。
何せ戦いながらの逃走だった。
レーナが的確に鎌で襲い来る敵を振り払い、トーマスが追いかけて襲い来る黒に向けて杖を撃っている。
これを走り出してから長い間行っている。
「レーナさん!行先はどこに行くか分かってる!?」
「捌くだけで手一杯!」
まずい。もうすぐ限界が来る。
私を含めて全員が息切れをし、
レーナは確かに黒に的確に一撃を加えているが怯ませるだけで致命的な一撃を加えておらず、トーマスは出来るだけ撃たずに引き付けているが撃つ間隔がどんどん狭まっている。
なんとかしないと。
そう考えているとふと足元の陰に目が留まった。
「影が」
影が少しずつ動いている。
私は光の玉を見る。
私は移動方向に動かしているだけで光がそれ以外動くはずが‐
「光が吸い寄せられている。まさか‐」
私はある考えを話す事にした。
「みんな。光が動く方に行こう。」
「それは!どういう!」
トーマスが撃ちながら。
「光が吸い寄せられている!もしかしたら!」
「あぁ、もう!どこ行けばいいかわからないですから行きますよ!」
レーナの発言により私の案が採用された。




