知恵と死◾️の迷宮 その3
後ろから殺気!?
考えるより先に正面に倒れ、空いてる片手で地面に着き、力を加えて地面を転がるように横に飛ぶ。
避けながら状況確認をする。
今、私を襲っているのは私が斬ろうとした黒。
そして私から少し離れた所では3人が襲われており、クーちゃんとトーマスは本棚の下敷きになっており、レーナは襲撃している黒の対応でそれどころではない。
今は2人を助けないと!
……魔法なら……
魔法なら離れていても攻撃出来る!
でもこの状況で使えそうなのが氷の塊を飛ばす魔法だけ。
...でも...それじゃあ2人同時に救えない。
不意にお父様の声が流れる。
『人はいずれ選択を迫られる時が来る。』
『どちらかを救えばどちらかが犠牲になる。そんな時だ。』
『その時が来たら選んだ選択を後悔するな。』
後悔するな…………
嫌だ!
私は!
私はどっちも救う!
『穿て、氷塊』
私は左手をトーマスの方の黒に呪文を唱えながら向け、右手の剣を大きく振り上げる。
『-バル・ド・グラス-』
氷塊がトーマスを襲う黒の方へ飛んでいったのを確認してすぐに剣をクーちゃんを襲う黒へ投げる。
2人を襲う黒は私が放った物に見事に当たる。
良かった。これで-
「ヒグッ!?」
左腕の痛みに思わず空いた右腕で押さえ、両膝を着く。
右手には暖かい液体の感触がある。
あぁ、また腕から血が吹き出してる。
2人を助けた安堵から思わず笑みが溢れ、安心感を覚えてしまった。
そう安心してしまった。
油断してしまった。
危険が迫っているのに-
私は殺気を感じ背後を肩越しに振り返る。
今まさに黒が剣を振り下ろそうとしている。
私は勘違いしていた。
どちらを救うか選択を迫られていた訳じゃない。
誰を犠牲にするかを迫られていたのだ。
それで私は-
私は反応が遅れたがすぐに胸を地面に着けるように倒れようとするが-
「が!?」
私を選択した。
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揺れる体。
この揺れに遠い日を思い出す。
日向で心地良い安楽椅子。
兄と乗った馬の背。
そこで瞼が開く。
ぼんやりとだが流れていく棚が見え、
「あ……れ?」
ここはどこだろうか?
「ん?リーティエ。目を覚ましたか?」
聞き慣れた男性の声が腹の辺りから聞こえて来る。
この声は……トーマス?
私は確認する為、腹の方へ顔を向ける。
どうやら今の私の状態は彼の両肩と頸に乗ってような状態だ。
「レーナさん。リーティエが起きた。一旦降ろしたいんだが良いだろうか?」
「……分かりました。降ろして怪我の確認をしましょう。」
トーマスの前を歩くレーナがそう言い皆が止まる。
「リーちゃん!大丈夫!?」
皆が止まるとすぐにクーちゃんが心配してくれた。
見るとクーちゃんは不安が滲み出た表情をしている。
「ん。大丈夫。」
私は心配をかけまいとお客さんに習った大丈夫の意味がある握り拳に親指を立てる手振りをする。
「こら!クラリス!抱きつくのは降ろしてからにしてくれ。」
トーマスはクーちゃんを宥めつつゆっくりと私を気遣いながら降ろしていく。
そんな時、足が地面に着き立とうした時体が降らつき背中側から棚にぶつかってしまう。
「ッ!」
激痛がぶつかった背中側から走り顔を歪み、膝を着く。
そうだった。
私は斬られたんだった。
「落ち着いてください。とりあえず背中を見るのでうつ伏せに寝て下さい。」
私はレーナの指示に従ってうつ伏せに寝る。
「服は脱がなくて良い?」
「いいですよ。何せ貴方の背中は見えてますもの。」
そう言いレーナの冷たい手が触っている感触がする。
その冷たさに内心驚くも続いて訪れる痛みに顔を歪める。
「私の傷、どう?」
「血は止まってるようです。ですが包帯を巻いて高いポーションを刺しただけなので脱出したらすぐに医者に見せて下さい。」
「リーちゃん!死んじゃうと思ったよ!」
レーナの診断が終わるとクーちゃんが背中から抱きついてきた。
それに思わず自分でも理解出来ない呻き声を上げる。
い、痛い。
「あ、ごめん!?大丈夫!?」
クーちゃんが私の背中から離れる。
「だ、大丈夫。」
私は背中を抑えつつ背中に開いた片手を床に当てて立ち上がる。
「っう!?」
立ち上がろうとした時に軽くふらつき膝を着く。
「リーティエ!」
「リーちゃん!」
トーマスとクーちゃんの二人が心配をして駆け寄ってくる。
「大丈夫。」
二人に心配をかけまいと返事をする。
「まだ怪我のダメージが抜けきってないでしょう。まだ激しい動きをしない方が良いでしょう。」
「でも、三人だけで大丈夫?」
「それはたぶん大丈夫だと思います。」
私達がレーナを見ると話を続ける。
「ここら辺には異様に敵がいません。もしかして‐」
そう言って通路の先を見つめた。
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トーマスに支えながら進むと棚に囲まれた階段がそこにあった。




