アホコンタリ ビィティコンセイ
銀の星が殺意を伴って襲いかかって来た。
それに私は半歩下がって剣へ手を伸ばすが更に襲撃者は距離を詰めて切り裂きに来る。
早い。
躱せない。
なら‐
剣を抜かずに鞘ごと剣帯から剣を抜き、柄頭で刃物の刃を止める。
相手が一瞬止まったタイミングで体を引くくし足払いの蹴りを放つ。
相手は後ろへ後転飛びをして避ける。
良い反応をする。
着地した相手と睨み合う。
相手は私と同じぐらいの年齢の少女。
相手はうなじぐらいの長さの銀の髪。
サイズが僅かに大きいシャツに稲穂のような色の上着を着て、濃い緑のズボンを履いている。
そして両手にはそれぞれ鎌という農機具のような鋭く太い尖った先端が着いた物を持っている。
鎌が武器なんて初めての経験に少し戸惑いを感じる。
そういえばゴブリンもどきもよく草刈りで使っていた鎌を武器に使っているとお父様が言っていた。
対処方は……どう言ってたけ?
まぁ、良い。
私はゆっくりと手を剣に伸ばす。
何事も剣で切り裂けば良いだろう。
そう思った時に相手が飛び掛かって来た。
私は手を止めて鎌の側面をシュトーという打撃方法で叩く。
相手は弾かれたのに怯みもせず横薙ぎで振るって来るので私は倒れるように躱して両足を相手の足に挟んで絡ませ、馬車が枝を踏むように回って相手を引き倒す。
「っ!」
相手は器用に逆立ちの要領で地面に着いた両手を軸に体全体を回して私の足から抜け出す。
本当は拘束するつもりが抜け出されたなら仕方がない。
私はもう一度回って立ち上がるつつ剣を抜く。
「これ以上戦うのなら斬り伏せる。」
「貴方が侵入したからなのにその言い草は酷くないですか?」
「侵入?」
私が疑問を発するよりも早く彼女は再度襲いかかって来た。
鎌を振り下ろして来たので剣を横薙ぎで弾く。
私が弾くとさっき私がやったように足払いをしてきたので私は気合を入れて耐えた。
「なっ!」
彼女は足払いが効かない事に驚いている。
足払いは不意を着いた時じゃないとただの蹴りだ。
痛い。
彼女は今度は足に鎌を横薙ぎに振り下ろして来たので塞ぐように剥き出しの地面に剣を突き刺して防ぐ。
防いだ鎌ごと剣を振り上げて宙へ弾く。
そのまま素早く上、下、上と鎌を斬り弾き飛ばす。
「っ!」
彼女は諦めずにもう片方の鎌で斬りつけて来るので柄を斬る。
「?」
柄を斬りつけると金属同士が打ち付けた時の音が響いた。
剣やハンマーなど振るう事を目的とした棒は全体の重さを減らす為に柄の部分は木にする物だがどうやら彼女のは全部金属製らしい。
贅沢だ。
私は鎌を剣に引っ掛けて彼女の腹を蹴り飛ばす。
鎌は彼女の手から離れ地に惹かれて落ち、彼女は道の奥へ飛ぶ。
私は距離を詰めて立ち上がろうとする彼女の首の少し横に向けて突く。
時は一瞬止まった。
彼女は刃が首の横で止まっている状況に声が出せないでいる。
「話は聞く。ただし、襲うな。」
「え、えぇ。分かりました。」
彼女が申し出に応じたので剣を下ろした。
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私は一軒の家の前へ案内された。
その家は異物であった。
周りは見上げるような大きな建物に囲まれており、薄暗くなる筈が四方を囲む魔力灯で照らされて明るい。
そんな異様な空間に一階しかない小さな煉瓦造の家であった。
「入ってください。」
変な所と言えばもう一つある。
それは扉が玄関と思われる狭い縦長の穴の脇に扉が立て掛けてある。
扉とは部屋を密室にする物であり、その密室を出入り出来る場所なのでは?
疑問に思いつつも中へと入る。
「おぉ!」
部屋の中を見た時に私は驚き思わず声を出してしまった。
中は木を基調とした空間となっており外の煉瓦造りの壁と違い壁は木で作られており、部屋の中央を囲うように本が入った棚が置かれており、部屋の中央には1人用のソファが二つ向かい合うように置かれている。
(ソファとソファとの距離が近いような)
奥の方に視線を向けると物が積まれていて何かが付着している汚れた机となんとなく見たくない汚れた釜戸が見える。
「さて、話をしよう。」
彼女はソファに座り向かいのソファに脚を置く。
なるほど。
そのためにそう置いていたのか。
「その前にお互いの自己紹介をしよう。」
私は彼女が脚を乗せているソファを引いて座る。
「ふーん。良いでしょう。私はレーナと呼んで下さい。」
「分かった。私はリーティエ。それでどうして襲ったの?」
レーナに尋ねる。
「先程も言った通り貴方が私の土地に侵入したから。」
「侵入したから襲ったの?」
「えぇ。当然。」
「えぇ……。」
自分の住処に入ったからなんて襲うなんて……まるで野生の獣じゃないか……。
「さぁ、私の理由は答えた。今度は貴方の事を聞かせて。」
私は顔を歪めた。
何でそんな事を。
断りたいが顔に興味あると書かれた状態で断るのは難しそうだ。
「分かった。何が聞きたい。」
私は渋々聞くことにした。
「貴方はどうしてそんな強いの?」
「父に教わった。それから色々と頑張って今がある。」
「そう。それでその強さで何をしたいの?」
「何って。」
強さで何をするのか?
特に何も考えていないが……
「ちょっと違うが、私はここに連れて来られた。だから今は家に帰る為に情報を集めてる。その際に邪魔になる相手を斬り払う為の強さがあれば良い。」
「ふーん?」
彼女は納得したようである。
「それで手がかりは見つかった?」
「いいや。皇国図書館に行ったがそこには………手がかりはなかった。」
「ふーん。あそこに無いとなるとあとは知識の迷宮ですかね。」
「知識の迷宮?」
「そう。皇都城壁外にあるダンジョン。でもこの皇都に出入りするには許可が必要なんですよね。」
「…………それならなんとかなるかも知れない。」
私の呟きにレーナが目を開く。




