ハフラファックスフカン
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太陽に照らされる表通り。
何かに光が当たるのなら影が出来る。
ここは裏路地。
表を歩けぬ事情がある者が自然と流れ着く掃き溜め。
そんな場所の更に奥に不釣り合いに照明で照らされ、明るい場所がある。
本来、明るい場所は安心をもたらす。
だが、常識が通じないこの場所は違う。
そんな裏の住人が近寄らない危険地帯を無知な男が苛立ちながらズカズカと歩いていた。
男の身なりは普段なら見る人が見れば生地からこだわった一点物の服装と分かるが今はその服を泥と血で汚し、端を焦がしている。
そんな男がとある小さな家に着いた。
その家はここいらでは珍しい一軒家で一階しかない小さな煉瓦造の家であった。
その家の扉を男は荒々しく蹴破る。
扉は閂に使用していた木の板を割りながら開かれる。
「…………騒がしいです。どのようなご要件でしょうか?」
家の中には10歳くらいの丸いレンズの眼鏡を掛けた少女がソファに深く座り、入って来た男に興味がないのか本を読みながら尋ねる。
「お前!何で兄を襲った!」
「…………兄?という事は男性ですか?」
男性は少女の素知らぬ態度に苛立ち語気を荒げる。
「知らぬとは言わせんぞ!我が兄は婚約者へとプレゼントを送るために出かけた!そして胸に杭のような穴を開けられた姿で帰ってきた!聞いたところ貴様がやったそうではないか!」
「……そう言われても私がやったという証拠はあるんですか?」
男は顔を赤くして更に続けて話す。
「それに!貴様は!我が友や従者を罠嵌めて殺した!後ろめたい思いがあるから仕掛けたのであろう!」
「あー。罠に引っかかったんですか?あれ、仕掛け直すの大変なんですよー。」
男性は憤慨して腰に下げてる剣を抜き少女へ斬りかかる。
それを彼女はソファを腰掛け事倒して剣を交す。
「…………はー。ここ私の家なんですよ。他人の家で暴れちゃいけないんですよ。そんな常識もないんですか?」
彼女は後転して立ち上がり、男性に注意を促す。
男性は唸り声を上げて斬りかかるが少女は軽々と躱し、男性は壁の本棚へぶつかる。
「部屋を汚さないで下さい。片付けるのは私なんですよ。」
少女は呆れながら眼鏡を外し、壁の帽子掛けの前へ歩き、帽子掛けの下のテーブルに眼鏡を置く。
「だ!ま!れ!」
男は本棚から落ちた本を踏みつけながら少女へ襲いかかる。
少女は帽子掛けにかかっていたそれを掴み振るう。
男性が振り下ろした剣を片手で持てるほどの大きさの金属のピッケルで弾き、もう片方のピッケルで顎から頭を貫く。
「邪魔しないで下さい。私は平穏で静かに自分のしたい事をしてる時が好きなんですよ。」
そう言い少女はピッケルを引き抜き地面に倒れた男性の服でピッケルをきれいにする。
彼女は本来、ホワイトキャペルの殺人鬼と恐れられて世間を恐怖に落とす人物なのだ。
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今は夕方と呼ぶには少し早い時間。
空が茜色に変わる日に照らされナーラに連れられ歩く。
「いやー!今日は楽しかったー!」
「それは良かったな。」
私は呆れながら返事をする。
劇場を出た後、近くの駅にて演奏を行った。
最初は人を引き付ける演奏をしたかと思うと多くの人の前で嵐のような演奏をしだして皆を混乱させた。
何してるの。
「いやー。良かったよ。最初にあったのがお前で。」
「そう。良かったね。」
「生まれてすぐに姉に蹴り落とされて有無を言わさずすぐにここに送られたけど。意外と何とかなるものだな。」
「ん?」
今、変な事を言ったような。
だが、私が疑問を口に出すよりも早く彼女は振り返り右手首をその白く細い優しさが伝わる両手で包む。
「今日はありがとう。これは私からの布教者へのお礼。」
疑問を口に出す間もなく新しい彼女に握られている手首の周りが光輝き、そして閃光と共に焼けるような痛みを感じ声を出して顔を歪める。
光が消えると手首には装飾を施された金色の紫の宝石が嵌められている腕輪が嵌められていた。
腕輪に刻まれた装飾は狼と思われる獣と蔓のような物が腕輪全体に伸び所々花弁が連なる花が咲いているような装飾が刻まれている。
「この腕輪には孤高なあなたを表す獣と私から出会えた事の喜びと様々出会いがあるよう願いを刻んであるわ。」
私が唖然として腕輪を見てると彼女が話す。
「ちょっと待ってくれ!お前は何者‐」
私が疑問を投げかけようとした時に彼女に人差し指で唇を抑えつけるように塞がれる。
「私の事はあなた達に教えられないの。でも、あなたの幸せは願っているわ。」
そう言い、唇から指を離し私から離れるように歩く。
それに私は呆然として見守る。
「さて、次は彼女の番だ。これで交代しよう。」
そう言うといつの間にか取り出した楽器で演奏を始める。
演奏は空間を揺らし、私の認識を揺らす。
最後に終わりを告げる音を鳴らし世界が光に包まれる。
それに私は思わず目を瞑り‐
光が晴れ辺りを見回す。
狭く淀んだ場所。
だが私が立っている道は壁から果実のようにぶら下がったランタンが等間隔に設置されて明るい。
『こ、ここ。どこ?』
見覚えのない場所に出てきて戸惑っていると背後から銀の星が殺意を伴って襲いかかって来た。




