イクスぺリツィモンテリクスクリピ
イエツィア歴1837年9月始め頃。
朝、私は指定の場所に来た。
そこは皇都の大きな屋敷が立ち並ぶ地区において異様な雰囲気を発しっている。
まず、他の屋敷は私が登るには苦労しそうな高さの柵に屋敷が囲われて広い庭が見えるように出来ているがここは幕壁に覆われており、上には歩廊が見え、まるで砦のようである。
それを眺めながらぐるっと回るように歩く。
家の事を思い出しながらたどり着いたのは堅牢な幕壁に相応しい大きな門であった。
私はこの屋敷に入る為に門の近くにいる守衛へ近づく。
「中に入りたい。いい?」
「ん?申し訳ない。君の名前を聞いても良いかな?」
守衛に尋ねられたので名前を名乗る。
「リーティエ。ヒューゴ……さんに招待された。」
「あぁ、君がそうか話は聞いている。さ、こっちだ。入ってくれ。」
そう言わ門の端に設けられている潜戸を開いて入るよう促さられる。
私はそれを潜り中に入ると中には広い庭が広がっており、その庭の一角にて複数人の男女が剣を振るい剣がぶつかる音が辺りに響く。
私はそちらに近づきながら観察する。
ここで剣を振っている人達は皆共通して剣が軽い。
適当に振っているとかやる気がないとかそういうのではなくその振りは確実な一撃を与える一振りではなく、手数を多くまるで傷を負わせるのを主にしたような振り方をしている。
「おぉ!来たか!」
その声がした方を向くとヒューゴがこちらに歩いてきた。
「それでどうじゃ?わしの剣術は?」
わしの。
気になる言い方ではあるが今はそんな事は置いておいて自分の感じた事を伝える。
「剣が一振りで致命傷を与えるものではなく軽い。………怪我を追わせるものになっている。それは私の知ってる剣技では考えられない。」
「ふっふふ!そうじゃろう。だが、わしの剣技はこいつを使うこと前提なのだ。」
彼はそう言い腰に下げてる剣を抜き、私に見せてくれた。
それは前に襲われた時に抜いた不思議な形状の剣であった。
「その、不思議な剣は?」
「これは!魔力持ちに有効な魔導剣だ!」
マドウケン?
「ちょっと待っとれ。」
ヒューゴはマドウケンを何か操作して杖に付いてる丸い部品から魔石弾を抜く。
「ほれ。」
私にマドウケン渡そうとしたのでそれを受け取る。
マドウケンを触りながら確かめる。
前に見た時と同じく片刃の鋭い刃で峰側の触り心地が違う。
よく見ると刃と峰の部分で材質が違う。
確認の為に指先で軽く叩くとやはり刃と峰で音が違う。
刃の方はその作りから硬く柔らかい金属の音がなり、
峰側は金属質の薄く空洞がある音がした。
「これ、峰側が材質違って空洞がある。これじゃあ剣自体の強度が下がってしまう。」
「ふふ、それは問題そういう仕様だからじゃ。」
「シヨウ?」
「あぁ、そうじゃ。お主も知っていると思うがこの魔導剣は鉄を斬るためにはエーテルを剣に供給しなければならず、その供給の為にはパイプが必要なんじゃがそのパイプは軟っこくてのう。そこらの刃で斬れてしまう代物じゃ。そこで峰には供給パイプを保護するカバーを付けておるんじゃ。見せてやりたいが保護カバーはヨウセツされていて外れないようになっているからあきらめてくれ。」
峰側が違う理由を説明すると続けてマドウケンの説明を始めた。
「柄の部分があるじゃろう?実はそれ軍で採用している式杖と同じシリンダーを使っているんじゃ。」
「シリンダー?」
「お前さん杖に詳しくないのか?シリンダーとは魔石弾を装填・・いわゆる弾を入れておくための部品だ。」
私は試しにシリンダーと呼ばれるパーツを触ってみる。
金属製の私の手のひらより大きい筒が付いており、右回転のみ回り、恐らく魔石弾の出し入れするための穴が開けられている。
「普通なら1個3回撃てる魔石弾なのじゃが、鉄を斬る為エーテルを得る為に採取量に優れた素材をパイプに使った為一回引き金を引くとそれで1個に内包されているエーテルが使用されてしまうんじゃ。それで効力を発揮するのは約10秒の間だけと短いから人を選ぶ武器となっている。」
剣に魔力を纏わせる。
お父様は自身の技術でエーテルを制御して纏わせていたけど、これは剣によって可能にしているのか。
「まぁ、こう説明したがお主、説明を聞くより実際に見たり、行動する方が性に合うタイプじゃろう。」
そう言って私からマドウケンを受け取る。
今、馬鹿にされたような。
それから少し歩き、鍛錬をしている人達が見える位置に鈍い鉄の色をした太い金属の棒が庭の一角に置かれていた。
「試しにやってやろう。」
そう言い棒の前に立ち、剣に魔石弾を入れて、頭上に持っていき、深呼吸をする。
「ふん!」
大きく息を吐くと引き金を引く。
するとあの日混沌とした意識の中照らされたあの青い光を剣から発せられた。
「きぇええあぁい!」
空気を振るわせる声を発した後、青い軌跡を残して剣は振られた。
すると棒は徐々にずれていき芝生へと落ちる。
「ふふ、どうじゃ!これが魔導剣だ!これさえあれば鎧や剣など容易く斬れるぞ!」
私は斬られた棒へと近づく。
切り口は滑らかで、感触は-
触ろうとした手を引っ込める。
棒から熱気を感じられた。
「これ、切り口が燃える程の熱を持ってる。」
「あぁ。それはな剣にエーテルが染み込むと斬った物は何故か熱を持つんじゃ。恐らく切れ味が上がるのに何か関わりがあると思うんじゃが、まぁ、そちらは技術屋に任せてるがな。」
説明をした後に豪快に笑いだした。
なるほど。よくわからないがなんかこうあーなってよく斬れるという事が分かった。
「さて、説明はこんなもんじゃろう。まずは体を動かそうじゃないか。おーい。シンチュリー!頼みたい事があるんじゃが!」
「はーい!おじい様!なにー?」
ヒューゴがシンチュリーという人物を呼ぶと私達から少し離れた所にいた少年が返事をした。




