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温君と昔話と入店

最近寒いのでお体にお気をつけ下さい。

「んん?」


薄暗い底から瞼が開き、まだ見慣れぬ陽の光に目が眩む。

あれ?私何で眠っていたんだっけ?


「気が付いたかい?」


声を掛けられたのでそちらの方へ向く。

そこにはさっき助け


『あれ!?』


私は周りを見回す。

私がいるのは路地裏ではなく人や馬車の往来がある通りの椅子に座っている。

その後、持ち物を確認する。

剣は…………鞘に収められてる。

後、お金の入った袋は………………ない。


「お金…………」


「あぁ、ごめんよ。事が事だったからすぐにその場を離れなくちゃいけないからその剣しか持って来れなかったよ。」


そう彼が説明した。

そうかお金が無くなったのか。


「悪かったね。そうだ。お礼に何か奢るよ。」


奢る。

誰かが変わりに払ってくれる事。

それは物をあげる事と同義だ。

物をあげる行為を断る事は無碍に扱う事だ。

奢って貰おう。


「ありがとう。お願い。えーと?」


彼を呼ぼうとするが名前を知らないので言い淀む。


「あぁ、名前を言ってなかったね。僕は―」


そこで風が吹き、髪を押さえる。


()()()()()()だ。よろしく。」


クラウディオは手を差し出して握手を求めたので私も手を握る。


「よろしく。」


そこでくるくると音が聞こえた。

いや、鳴ったのだ。私から。


暫くの静寂が二人の間に流れ、それから私達は笑いだした。


「とりあえずどこかへ行こうか。ここらで何かおすすめの店はあるかい?」


店。

といっても。


「私。ここ。知らない。」


「知らないか。ならあれをやるしかないね。」


私が不思議に思ってると彼は道に指を指さす。


「どちらにしようかな。天の神様の言う通り。」


彼はそう言いながら左右に交互に指さしていく。

そうして右の方で指が止まる。


「こっちだって。行こうか。」


そう言って歩きだしたので私も後を追う事にした。


「聞いて。いい?」


「うん?なんだい?」


「さっきの何?」


「あれ?導きのおまじないを知らないのかい?」


ミチビキノオマジナイ?

この地の独自の魔法だろうか?


「これはね迷った時にやるおまじないで勇者はこれをやって自らの旅路を占ったて言う逸話があるんだ。」


「ふーん。」


そんなのがあるんだ。

それにしても気になる事がある。


「ユウシャ。何?」


「君。勇者様の事も知らないのかい!?」


私は首を縦に振る。


「驚いた。まさか勇者の伝説を知らない人がいたなんて。」


そこまで驚く事だろうか?

それにしても勇者の事が気になるので聞く事にした。


「ユウシャ。教えて。」


「あぁ、良いよ。勇者ていうのは国が危機に陥った時に突然現れた救国の戦士なんだ。」


戦士。

伝説として残っているという事はきっと凄い存在なのだろう。


「それは皇国が滅亡する危機の時だった。魔に魅入られた者達に国を追われた僕達の祖先は逃げた先の土地でも安息は無く追手が迫っていた。」


この地の歴史を話始めた。

思い返して見るとこの地の歴史は初めて知るから興味がある。


「魔に魅入られた者共は情け容赦無く人々を殺し、大地は血に染まり空には暗雲が覆っていた。そんな絶望的な状況に彼は現れた。」


ここでユウシャが現れるのだろう。

大体の物語ではここで無名の男性が立ち上がり災厄を退けるのがよくある話だ。


「魔に魅入られた者達から民を護り文字通り命を賭けた戦いをしてる時、突然戦場に光の柱が現れた。」


魔法かな?


「その光から黒衣を纏って高らかに笑いながら勇者が降りて来た。勇者はこう尋ねた。【俺を求めるわ誰なり!】と。そこで当時の姫は願った。自分達をお救い下さい。救って下さった暁にはこの身を捧げると。姫のその純粋で献身的な願いに答え、勇者は皇国の為に戦うようになりました。」


対価の代わりに願いを叶える。

勇者は悪魔のような魔物だったのか。


「それから皇国は快進撃を続けた。ある時は山のような魔物を斬り。ある時大地を裂き。ある時は曇天を晴らし、太陽の顔を出させた。」


「えぇ?」


なにそれ?そんな事出来る貴族はお父様達、騎士や魔法使い達にいるなんて聞いたことない。

どんな魔物なのだろうか?


「そして勇者は仲間である当時の剣聖と堅盾(けんじゅう)と共に魔に魅入られた者達の王‐魔王に挑みました。四天王との激しい戦い。それを乗り越えついに魔王と戦う。勇者と魔王は小競り合いを続け辺りは何者も近づけぬ戦場へと化しそして勇者は魔王を打ち倒しました。」


今までの事を聞いてたけどこれが本当だったのなら凄い戦いになっただろうな。


「こうして皇国には平和が戻り、勇者は姫と仲間達と幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし。」


「良い。御伽話だった。面白かった。」


「うん?御伽話?これは本当にあった話だよ。」


その言葉に物凄い勢いでクラウディオに顔を向けた。

いやいや。山のような魔物を斬って、大地を裂くなんてありえない。絶対作り話だ。


「その表情。どうやら信じてないようだね。でも本当の事だよ。勇者と剣聖、堅盾の子孫は今も大貴族としてあるし、勇者が使用してた聖剣は代々その代の勇者が使用していて皇国の危機を退けて来たんだ。」


その口ぶりから嘘は言ってないようだ。

………………え?本当にいるの?

まさか代々山を斬ってきた訳じゃないよね?


私が疑問に思っていると彼は一つの店の前で止まった。


「どうしたの?」


「ここ気になるから入っていい?」


そう言われ店を見る。

その店の看板にはマリンズと書かれており、外観は緑を中心とした落ち着いた雰囲気をしており、店先には一席テーブルが置かれており、通りを楽しめるような作りになっている。


「うん。大丈夫。」


何を出す店か知らないが特に何が食べたいか決まらないので彼の提案に乗る。


「じゃあ、決まり。」


こうして私達はこの店で昼食を取る事にした。

なお、マリンズという店はあるものの探しても外観に関する情報がないのでほぼオリジナルです。

想像力を解き放て!

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