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探偵は食堂にいる

5月 終わり頃

月が夜天へ昇り人々を照らす時間。

私は食堂で働いていた。


「リーティエ。申し訳ありません。坊主に料理と酒を持っていって下さい。」


皿の片付けをしてるとハドリーさんにそう頼まれた。

坊主?

彼がそう呼ぶという事は親しい人なのだろう。

坊主と呼んでるという事は幼い男の子なのだろうか?


「分かった。」


私は返事をして皿に盛られたテックイと呼ばれる白身魚のソテーに滑らかで濃厚で輝いている黄色いソースがかけられた物とシュワシュワとした炭酸と呼ばれる物が入っているという麦の酒が入った瓶を掴む。

今日入っているお客さんは酒を飲んで騒いでいる男性二人組とステーキを食べてる一人の若い男性と帽子を乗せてるテーブルに座って木のジョッキで何かを飲んでいる男性がいた。


この中で坊主と呼ばれるに相応しい人は一人だけなのでその人の元へ向かう。


「おーい。新入り。それは俺のだ。」


私が若い男性の元へ向かおうとすると帽子を乗せたテーブルに座っていた男性が呼んだ。


「お客様。何故?」


私は相手を不快にさせぬように話した。


「何故かとまず、注文を受けた婆さんなら俺の所に真っすぐこちらに運んでくるだろうし、ハドリーの旦那なら俺の事を知ってるだろう。だから俺に()()て言いながら来るだろうさ。」


この人が坊主なのか。


「何、恰好付けてるんですか。」


振り向くとハドリーさんが厨房から呆れた表情をして近づいて来ていた。


「どうせこの娘の運んでる物を見て自分のだと思って呼んだでしょう。坊主。」


「おいおい。坊主はやめろって言ってるだろう。」


「はいはい。ガストの坊主。」


ガストと呼ばれた男性が不服そうにしている。


「リーティエ。紹介します。この坊主はガストと呼ばれる変わり者です。うちでもいくつか仕事を頼んでいるのでいつか関わりがあるかと。」


「変わり者て、酷いな。俺は探偵だよ。よろしくなお嬢さん。」


ガストと呼ばれた彼は手を差し出してきた。

私はテーブルに瓶と皿をおいて握手する。


「リーティエです。」


「リーティエか。良い名だな。これから何か関わりがあるかもしれない。よろしく。」


「さて、リーティエ。私は坊主と話があるので申し訳ありませんがさっきの作業の続きをしておいて下さい。」


「分かったです。」


私はそう言って厨房の方へ向かった。

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「それでハドリーの旦那。なーんであんな回りくどい事してんだよ。」


坊主がニヤニヤしながらそう尋ねてきました。


「何。ただ、料理を持っていってもらおうと思いましたが紹介してない事を思い出しましてね。」


そうかい。と言って頬杖を付いた。


「それで親方の頼みで何やら酒場で探りを入れてるようですね。」


「旦那。こういうのは守秘義務として言えないもんだぜ。」


坊主がいつも通りカッコつけた物言いでそう言った。


「そうですか。時間を取ってしまい申し訳ありません。それでは。」


「まぁ、あんたならちょっとくらい話しても良いだろう。」


厨房に引っ込もうとしたらそう呼び止められた。

…………話すなら最初から話せば良いのに。


私はため息をついて、彼と反対側の席に座る。


「ヘイヴァリング地区の組織が当主の暗殺に関わっているていうのは聞いたか?」


「えぇ、聞いてます。」


「それで組織の数名に探りを入れてみたんだけど。なーんかおかしいんだよ。」


「おかしいとは?」


「それが組織でも動揺が広がってるんだよ。」


「それは事を仕損じたのですからそうでしょう。」


「いいや。違うさ。」


坊主がエールを呷る。

私は付け合せの炒めたパースニップを摘む。


「何でもその組織はこの事件について調査してるんだと。」


「調査?自分達がやったならそんな事する必要がないのでは?」


「なーんでも。ちょうどタイミング悪く後継者争いで割れてる時に起きたからお互い誰がやったのか分からず牽制しながら探りを入れてるから全然状況が掴めないんだと。」


「それは難儀ですね。」


私はもう一本パースニップを摘まむ。


「おい!それは俺のだぞ!」


「まぁ、いいじゃないですか。」


私が何でも無いようにそう返す。

そうすると坊主は不満げな顔をして料理を手元に寄せ食べる。


「ありがとうございます。何か困りごとがあったら気軽に言ってください。」


そう言って席を立ちあがる。

ふむ。あとで何か一品持っていきましょう。

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閉店後、厨房の清掃中の事。


「あれ?これは困りましたね。」


ハドリーさんがそう呟く。


「どうした?」


「それがタギィールマスクフがもう切れてしまって。申し訳ないのですが持ってきてもらえませんか?」


タギールマスク。

あの光るあれの材料か。


「わかった。」


私はターなんとかが保存されてる場所へ向かった。

それが保存されてる場所は地下の薄暗い部屋、偉大なる魔術師にして賢人を破滅させたネズミが現れたような場所だ。

そこにろうそくを灯して倉庫を探す。


『あれ?』


もう一度探し、見つからないので他の場所も探すが見つからない。

おかしいな。もしかしてないのか?


私は厨房に戻ってハドリーさんに伝える事にした。


「ハドリーさん。ない。」


「そうですか。なかったですか。なら頼むしかないですね。」


「頼む?誰?」


「えぇ、有名な変人に。」


ヘンジン?なんだろう?

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