きれいはきたない、きたないはきれい
今年も読んでいただきありがとうございます。
来年もよろしくお願いします。
「黄金を失いし少女は混沌渦巻く地に降り立つ。果たして彼女の運命は平凡か非凡か?はたまた対極又は調和か?」
男はいきなりそう話し出した。
なんだろうか?この男性は?
「あ、団長!読み終わったんですね!」
クーちゃんがそう言った。
団長?
「紹介するね。私が所属してる劇団の団長さんだよ。」
ゲキダン?なんだろうか?
そう思っていると男性は静かに立ち上がる。
「始めましてお嬢さん。虎の心を持つ者、成り上がりのカラス、何でも屋、舞台を揺るがす者。そう呼ばれるは我!イージオン・ストラトフォードである!」
男は話しながら部屋の中を踊るように動き回る。
何だろうか。この男性は。
「はぁ、イージオン。部屋の中なのですから暴れないでくれないかしら?」
クーちゃんの母親が眉間を抑えながらそう注意する。
「さぁて、自己紹介は済んだ所で話は戻そう。レイラ。君はまだ幼気なそう。まだ善悪しか知らない真っ白な考えに今後に響く事を教えるのは少々やりすぎではないかい?」
「さぁ、つまらない人になるよりは良いんじゃない?」
それにと一言付け加えた。
「私はこの職業を馬鹿にする方は何であれちゃーんと教育しないと気がすまないの」
彼女は微笑みながらそう言う。
イージオンさんが呆れたような態度をし、改めて向かいのソファに座った。
立つ必要はあったかな?
「さて、リーティエ君。君は何も知らなかったとはいえ、彼女を怒らせるような事を言ったのだ。君からの返答は?」
他人の尊厳を侮辱するような事を私は言ってしまったのだ。
お父様はそういう時は誠心誠意込めた謝罪をするのだと教わった。
だから私は立ち上がり、体を曲げて頭を下げた。
「ごめんなさい。」
「わかったわ。アタシもごめんなさい。大人気なかったわ。」
パンッ!とイージオンさんが手を叩く。
「さて、お互い蟠りがなくなったことだし、またお互いの事を話そう。レイラ。君の仕事の話をしてくれ。」
「なにって?男と女がまぐわ「マ―マ―!」」
その後、クーちゃんの母親―レイラさんの話(クーちゃんとイ―ジオンさんの突っ込みを貰いながら)でここ、娼館の仕事を話してくれた。
話を聞いていくうちにまるで地面を少しずつ傾くように自分の物事の見方が変わっていくのを感じていた。
これは私の考えが浅かったのかそれともそもそも間違っていたのか。
それはこの後、新しい喫茶店の話やどこぞの公爵令嬢が狂ったとかの他愛もない話をしてる時も常に頭の片隅にあり、話に集中が出来なかった。
「また明日ー!」
クーちゃんに見送られて私達を乗せた馬車は動き出す。
夕焼けに染められた街が過ぎ去って行く。
街行く人はそれぞれ様々な表情をしている。
疲れからか俯きトボトボと歩く人。
何か嬉しい事があったのか仲間と肩を組んで歩く人達。
何かあったのか顔を腕で抑えて走っている人。
そんな人々を見送りながら馬車は進んで行く。
「大丈夫?」
トーマスが心配してくれた。
「大丈夫。」
私は短くそう返事をした。
「恐らく、彼女の信仰が揺れてるのでしょう。」
そうイ―ジオンさんが言った。
(何故かいきなり断りもなく馬車に乗り行先も告げず、ただ乗っている。それをトーマスは断る事も出来ずずっと乗ったままだ。)
信仰?私は今までもずっと教祖の教えを信じてる。
それは変わらない…………はずだ。
「信仰ですか?」
トーマスが変わりに尋ねてくれた。
「えぇ、信仰だよ。おっと!もしかして女神様とかというケチな存在の事を考えてるかい?それなら違う。僕が言う信仰は違うんだ。僕が言うのは経験、親しい人や尊敬してる人からの教え。そこから来る自分の認知。それを僕は信仰と呼んでるんだ。」
周りくどいがすんなりと頭に入るような話をする。
「考えてみたまえ。世間一般では暴力はダメ。困っている人がいれば助けよと言う。そうだろう?教会も大声で言っている。」
「そうですね。僕も両親からそう教わっていて、周りの人もそう思っています。」
私もそれに同意見なので首を縦に降る。
「だが!だがしかし!世の中は悪人は力で従えようとし、それに抗うには暴力しかない!自分の生活を良くするには時に他者を蹴落とさなくてはならない。なんと!なんと悲哀!憤怒!疑念!を感じるでしょう!」
狭い馬車をくるくると周りながら激しい動きをする。
「ある者はこの世を悲しみ命を捨てた。だが、多くの人はそれでもと言って立ち上がった!あぁ、なんて脚本家好みの事をするのでしょう。そうです!最初から歩みを止める者!そんな人物に物語は無いのです。」
止めどなく動き続ける。
あんなに動いてぶつからないのだろうか?
閉所の戦いの参考にしようか考えてると話を続けた。
「ある者は力を振るう事に魅了された者!ある者は振るう目的を見つけた者!ある者は流されるように振るう者!まぁ、色々とあるがこの者達は共通していることがある。それは何かな?」
イージオンさんは私たちに語り掛ける。
「そうですね。」
「答えは理由を見つけたからです!」
イージオンさんはトーマスの回答を待たずに答えを言ってしまった。
「良いですか!若人よ!考えるのです!探すのです!足掻き苦しむのです!私は人が苦しんでる姿が大好きなのです!」
最後に最低な事言わなかった?
「人生は苦しみの連続です。さぁ苦しみましょう。その先にはきっと自分なりの答えが待っているのです。」
そう言って片腕を振り、もう片方を腰に当ててお辞儀をする。
動きが気になったが、一つ目的を指し示られた気がした。
「さて、授業を終えた事ですし、私は帰るとしましょう。」
そう言って突然馬車の扉を開けた。
「待ってください!今は走行中ですよ!」
「いいかい少年よ!自由とはしたい時にする事だ!それにどんな事を妨げてはならないのだ!」
いくら何でも走ってる馬車から降りるのは危険なので彼に必死にしがみついて降りないようにする。
問答を繰り返しているうちに馬車は減速していき、やがて止まった。
「ふむ、何も心配はなかったのに。」
彼がそう言ったのを私は息がきれて激しくなった呼吸を整えながら聞いた。
「それじゃあ若人よ!健やかであり給え!」
彼はそう言ってどこかへ行って歩いてしまった。
「大丈夫だった?」
「ダメだった。」
めちゃくちゃだ。何故踊るような動きをしたんだろうか?
なんだか少し疲れた。
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私は歩く。
ネタになる物が手に入ったので機嫌が良い。
そこでふと頭によぎった事がある。
何故、彼女を黄金を失ったなど例えたのか?
ただ、思いついた事を言っただけだが彼女に金は無かった。
元々無い物を無くしたというのもおかしい。
…………まぁ、良いそのうち答えは見つかるだろう。




