未知の中枢
ここが博物館か。
見た目はこの地の貴族の屋敷に見られるのと同じく門から玄関までの間に中庭は無く、3階建ての四角い煉瓦で作られた青い屋根の建物がそこに建っていた。
「さ、中に入ろう。」
トーマスに促され私達は中へと入っていく。
玄関を入ってまず、目に入ったのは溢れんばかりの人がいる玄関ホール。
その奥には大きな両階段があり、手摺は私が知る木材の色よりも濃く艷やかに輝いていて、天井には空に何か羽の生えた小さな子供の絵が描かれており、壁は白くそして前に一度道で見かけた羊の毛に近い色の柱には蔦を思わせるような彫刻が掘られており、豪壮な作りになっていた。
「どう?初めての博物館は?」
今まで見たこともない内装に呆然としてるとクーちゃんに話しかけられた。
「凄い。見た。無い。」
だってそうだ。
あの天井どうやって書いたんだろうか?
空を飛べる絵が得意な貴族が書いたのだろうか?
そんな貴族は一人いれば奇跡だ。
そもそもその一人でどれだけの期間かかるのか。
それにこんな絵を描くのにどれだけの絵具が必要なのだろうか?
あの柱の彫刻はどうやって掘った?
柱を作る時に蔦の模様も作ったのか?
それはなんて精密な技術だろう。
それじゃないにしろ固い石をあんな細かい細工を施せるのだろうか?
こんなの私のいた所で出来るなんて話聞いたことが無い。
「驚いてくれて良かったよ。連れてきたかいがあるよ。」
建物に入ってから私達から離れていたトーマスが何か紙をもって戻ってきた。
「はい。どうぞ。」
「ありがとう。」
トーマスに渡された何回かに折りたたまれた紙を受け取る。
表紙には皇国までは読めた。
となると残りの文字は博物館と読むのだろう。
私はその紙を広げる。
それは博物館の地図だ。
これでどこに何があるのかが分かる。
でも私が求める手がかりがあるか分からないが。
ん?建物の一部に何か斜めの線を書かれた上に何か書かれてる。
なんて書いてるか分からないので二人に聞いてみる事にした。
「ここ。何?」
「地図によるとそこはノースウィングだね。今は改装中て書いてあるよ。」
「あれぇ?そこに何があったけ?」
クーちゃんがトーマスに尋ねる。
「だいぶ前に行ったきりだから分からないや。」
「まぁ、いっか!行こうよ!」
クーちゃんに促されて私達は歩き出した。
私とトーマスは先頭を歩くクーちゃんについて行くように歩く。
何処に行くんだろう?
「ねぇー。何処に行こうか?」
唐突にクーちゃんがそう言った。
え?何か目的があって歩いてたわけじゃないの?
「な、なぁ。僕達は君について行ってたんだが。」
「んー?私は前の人について行ってるだけだよー。」
何か目的があって歩いているわけじゃないんだ。
それから人の流れに沿って歩いて行く事になった。
しばらく歩いてとある場所へと着いた。
何やら数々の物がガラスの奥に並べて置かれてる。
それらは書物だったり絵画だったり凝った装飾が施された短剣や食器などが並べられていた。
地図を見るとここはキングス•ライブラリという場所との事。
「ここ。何?」
「ここは先代の王の所有物が展示、飾られてるんだって。」
トーマスが近くに置かれた金属の板を見ながらそう話した。
王様がこの地にもいるんだ。
きっとその王も民を導く素晴らしい人だったんだろう。
私は歩きながら飾られている物を見ていく。
金色に輝く食器が飾られている。
鉄で良くない?
輝く石を誂えた盃が飾れられてる。
飲む時重さが気にならないのだろうか?
赤い羽ペンが飾られている。
少しエーテルの残滓が感じる。
何かの魔物の羽なのだろう。
なぜそのように作られたのか疑問に思う物を見ながら進んで行く。
そこでふとある物に目についた。
それは質の良い赤い布で仕立てられたマントだ。
肩辺りに白いふわふわとした素材が着けられ、金の糸で模様を誂えられた身につけるだけで威光が宿るのが容易に想像出来たのだろう。
だが、今はそう思えない。
なぜならマントの中央に大きな穴が開いていた。
穴のふちには黒く焦げた跡が残っており、よく見ると何か黒い、いや黒くなったシミが付いている。
これを身に着けていた人はどうなったのか。
想像に容易い。
「リーちゃーん。何か見つかった?」
クーちゃんに尋ねられる。
私は首を横に振る。
「何も。」
「そう。こっちに昔に大陸の方で流行ったていう船を盛った特大のかつらがあったよ!」
フネを盛った?何それ?
それから三人で見て回り、次の場所へと向かった。
次に訪れた所はマスオブニアー展という場所らしい。
ここは様々な形に加工された赤茶色の石が複数飾られている。
「ラシード•ストーン見れないねぇ。」
クーちゃんが群がる人々を見ながらそう呟く。
どうやらそのラシード?ストーンというのが飾られているらしい。
あんなに群がってあそこには何があるのだろうか?
「もう少し人がバラけたら見に行こうか。それまで他の展示物を見よう。」
トーマスがそう提案したのでそれに同意することにした。
まず、私達が最初に見たのは大きな石に掘りの深い顔が掘られた石を見る事にした。
なにこれ?
「この石おおき〜い!可愛いー!」
クーちゃんはそう感想を述べた。
可愛いのか?
「あぁ、この像から神秘性を感じるな。」
え?何処が?
その次に見たのは部屋の入口に飾られた顎がしゃくれてるように見える人面が付いた顔と前に本に描かれていたグリフォンという魔物のような羽が生えた獣の体が合わさった像が2体?置かれていた。
「この石像。ダンディだよね~。」
え?
「あぁ、守るべき人々を何が何でも守る事を言葉で語らずとも語る体に知性と権威ある顔。素晴らしい像だ。僕もこの像のような人間になりたい。」
そ、そうなんだ。そんなものか?
次に見たのは色々な種類の石像や石板が飾られているビクロン神殿?のコーナーに来た。
「すごい。これ。色々。形。よく。運ぶ。」
「何でも現地で許可もらって運んだんだって。」
「そうなんだ。僕は騙してもってきたて聞いたよ。」
「え?」
「え?」
思わず私達二人はトーマスを見た。
次に見たのは木の板に赤いマスと白いマスが描かれた物の上にそれぞれ趣向の凝らした何かの牙と思われる物を削って作られた黒と白の合わせて32個ある物だ。
「すごーく高そう!」
「これは初めて見た。確かに見事なチェスの駒とチェス盤だが何が凄いんだ?」
「これはハリス島で見つかったチェス盤と駒ですぞ!」
3人でチェスという何のために使うのか想像出来ない道具を見てると見知らぬ初老の男性が話に加わった。
その男性は独特の形をした三角形の帽子を白と黒のチェスバン?という物に描かれた四角形を交互に描かれた体全体を覆う大きな前掛けを着けていた。
誰?
「これははその地の職人が貴重な海の魔物の牙を削って作られた珠玉の駒に当時貴重な赤い塗料を未だに製法不明の秘伝の製法で作られた物ですぞ〜。」
「うわ〜!すごーい!」
え?誰?クーちゃんは誰か知っているの?
「これは初めて見たのですが最近展示された物ですか?」
「えぇ、これはついこの前展示された物で我々遊びの会でも一目置いていますぞ〜。」
「え?貴方はあの遊びの会のメンバーなんですか!」
トーマスも!?トーマスも知ってるの!?
その後二人にあの人は知り合いなのか訪ねて知らないと返された事に恐怖した後に最初に見ようとしたラシード•ストーンに来た。
最初に見たときよりも人は捌けており、石の前にたどり着けた。
その石の大きさは私の背と同じで白に近い灰色をしており、表面には何か文字のような物が掘られてる。
その文字はここに来て今覚えようとしてる文字とも私が慣れ親しんでいる文字とも明らかに違う。
それによく見ると書かれてる文字は3分割されており、それぞれ別の文字が掘られていた。
その石を人々はベタベタと触っている。
「………………」
…………え?他の物のようにガラスで仕切らなくていいの?
それに何で皆、石を触ってるんだろうか?
「これ。何?」
私は二人に訪ねる。
「これはトラインアントという場所からこの博物館に移送された石板で何でも現地では調和の証とされ、触ると良い人間関係に恵まれる恩恵を得られるんだそうだよ。」
「じゃあ、これで私もみんなと仲良く出来るかな?」
クーちゃんは石に触りながらそう言う。
これ触って平気なのだろうか?
この石からエーテルの気配を感じる。
私は恐る恐る触れ、
目の前を閃光が覆う。
3人が回るルートは元ネタがあり、とある女王の回ったルートで当時、何が展示されてたかの貴重な記録が残ってる物です。




