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闘技場 1

「お願いて言うと何をお願いするんだ?」


ジミーさんがヘンシュウシャの横に座ったアルフィ様に尋ねる。


「何。僕をある所に連れて行ってほしいんだ。」


私達3人の視線が集まり、ヘンシュウシャは顔を顰めながら尋ねる。


「ボン。ちなみにどこに行きたいんですか?」


「闘技場さ!」


トウギジョウ?


「闘技場かよ。だったらお前さんの父親に頼めばいいじゃねぇか?前、あそこで観戦してたのを見た事あるぞ。」


「いやいや。前にパパに頼んだけどダメて言われたんだ。だから頼む!どうか連れて行ってくれ。」


「お前さん。忠告しておくよ。こういう悪い大人にそう易々と頼むもんじゃないぞ。」


ジミーさんが威圧しながら言う。


「それも承知している。でも僕は知りたいんだ。表の綺麗な事だけではなく裏の汚い事も知り、そして偉大なじいじのような真実を伝え、誰かの明日を生きる糧になる。そんな執筆者になりたいんだ。」


皆の生きる糧になる。

崇高な目標だ。

そんな彼に好感を持てる。


「で、ボン。本音は?」


「血湧き肉躍る熱い戦いを見たい!」


崇高な目標はどこに行ったの?


「もちろんタダとは言わない。連れて行ってくれたらパパにお願いしてその商品を宣伝するようお願いする。だから、この通り頼む。」


アルフィ様が立ち上がり、頭を下げた。

なんで彼は目上に敬意を示す仕草をしてるのだろう?


「お前さんなぁ。大人のビジネスて物を理解してない。そんな口だけの約束に大人は動かねぇんだよ。」


「まぁまぁ親方。彼もこう誠意を見せてるんですから良いじゃないですか。なら私が連れていきますよ。」


「本当か!?」


ジミーさんが気だるそうにハドリーさんに言う。


「ハドリー。構わんがあまりガキに優しくするもんじゃないぞ。」


「なに。色々教えて選択肢を広げるのも大人の役目ですから。」


ジミーさんはため息をつく。


その後、次に合う予定を決めて話し合いは終わった。


数日後。


「おお!ここがそうなのか!噂に聞いてた通りだ!」


ハドリーさんにアルフィ様に私の3人はとある建物の入り口の前へ立っていた。

その入口は地下へと階段が繋がっていた。


「これ。トウギジョウ?」


「えぇ。闘技場は限られた人のみしか入れないのです。何せ皇国は黙認してますから。」


「モクニン?」


「ええ。何せ法律では闘技場は違法です。ですが、権力者達の思惑など何かとあった方が都合が良いのです。」


「違法?都合?」


なんで国が取り締まらないといけない事を放棄しているんだ?


「おーい!早く行こう!」


アルフィ様が急かす。


「行きましょう。彼を待たせるのは申し訳ありませんから。」


そう言って階段を降りていくので私も続いた。


階段を降りると作りのしっかりとした所々に装飾を施された木製のドアの前にガタイのしっかりとした黒いスーツと呼ばれる衣服を纏った男性が立っており、その脇に同じ服装の清潔感のある細い男性が立っていた。


「チケットを拝見します。」


細い男がそう言い、ハドラーさんが何やら懐からいくつかの紙を取り出し渡す。


「確認しました。そういえば今日の天気はなんですか?」


「今日は晴れるでしょう。ですがこの後雨が降る事もあると。」


「分かりました。どうぞお入り下さい。」


ハドリーさんが不思議な会話をした後、ガタイの良い男がドアを開ける。


中に入ると外とは違い人々の歓声がその場所に溢れんばかりに満たしていた。

中央には左右に出入り口のような物があり木製の壁で覆われた広い場所を見下ろすように背もたれが無い席で囲まれていた。

その中央の広い場所には一匹の茶色の獰猛な獣と、


「誰か助けてくれ!」


武器も何も持っていない男性が逃げていた。


「ッ!」

「待ちなさい!」


私が剣を抜いて助けようとした時にハドリーさんが私の肩を力強く掴んで止める。


『なぜ止めるんです!助けないと!』


「落ち着いて下さい。あそこに居るのは借金が返せなくてその返済代わりに連れてこられた者か裏の者に何か不都合であそこに連れてこられた者です。」


「助ける!」


「その必要はありません。何故なら。」


「見て!現れたぞ!」


会場の空気が変わる。

アルフィ様に言われ、中央の方を見ると片方の入り口から上半身裸の遠目でも分かる高い身長の男性が現れた。


「ヒィ!」


獣が転んだ男に飛びかかる。


「ハァッ!」


裸の男が掛け声の後、体がぶれ、獣を殴りつける。

獣が鳴き声をあげ、最初にいた男は裸の男が出てきた入り口へと走って逃げていく。


「シンユー!」「シンユー!」「シンユー!」「シンユー!」「シンユー!」「シンユー!」「シンユー!」


会場中は同じ単語を大声で叫ぶ。

掛け声と共に男が出てきた入口とは反対の入口から先程と同じ種類と思われる獣が五匹現れた。


男は深く腰を落とし、片足を曲げ、もう片方の足を伸ばし、片方の拳を脇に構え、もう片方の拳を前に伸ばす見たことも無い構えを取る。


男が構えをとると一匹がまっすぐ男に走りより他二匹が左右から挟むように迫る。


「ハイヤァ!」


男は飛びかかってくる一匹に対して円を描くように躱して裏拳で殴り飛ばし、右から飛ぶかかってきた獣を足を回すように小指と踵の間で蹴る。

続いて左から獣が飛びかかってきた。

それを男は崩れ落ちるぬいぐるみのように背中側から倒れ、獣の下を潜るように避けて起き上がるように両足を思いっきり伸ばして獣を腹を蹴る。

一匹の獣が交互に爪で引っ掻いてくるが、男はそれを体ごと片方ずつ下がりながら避ける。

獣が攻めきれない事に苛立ったのか飛びかかるが、


「ッ!」


一息の呼吸の元、足を一歩出し空気の壁を破る拳を打ち出す。

腹に拳を受けた獣は壁に打ち付けられた。

あれではもうダメだろう。


「ワンワン!」


今まで何もしてなかった一匹の獣が鳴き、まだ生きていた三匹の獣がヨロヨロとしながらも集まってくる。

一匹の獣の鳴き声の後、三匹が一斉に走り出し、それぞれが頭、胴体に足に同時に飛びかかる。


「ハァ!」


男が掛け声の一瞬にして三匹を打ち飛ばしてしまった。

今のは私の目では追いきれなかったがお父様の他に一瞬で三匹の獣を打ち飛ばせる技を使える人がいたなんて。

そう関心してると最後に残った獣が男から背を向けて逃げ出してしまった。

男は逃げる獣を追いかけて尻尾を掴み、大きく振り回して空中へと投げる。

男は落ちてきた獣を飛び後ろ蹴りで蹴り飛ばした。

獣は壁を砕くように当たる。


強い。

逃げる相手に追い討ちをかけるのはどうかと思うが確かな強さがある。


「あれは裏で名の知れた格闘家。シンユー・デンです。」


シンユーという名の男は中央で手の平に拳を打ち付け上体を曲げる格好を取っている。

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