人である為に
食堂がざわめき出した。
何があったのか気になり、顔を出す。
「おん!この食堂はやるなて言った事をやる。どうしようもない店なんかい!あぁん!」
一人の厳つい格好の男性が一緒に働いていたお婆さんに詰め寄っていた。
どう見ても止めないと行けない。
私が動こうとすると大きなゴツゴツの手が私の前を遮る。
「ハドリー!」
「下がっていてくれ。ここは大人の私の出番だ。」
そう言い、騒ぎを起こしている男性に向かう。
「お客様。」
そう言って男性に顔を近づける。
「なんだ!おわ!?」
「お客様。ここは食堂。酒を飲み和気藹々と叫ぶのは結構。だが、お客様は我々の営業を妨害してるだけ。あなたはお客様ではありません。お帰りください。」
「う、うっさいんじゃい!そもそも俺は客じゃねぇ!この店に立ち退きを求めてるんじゃい!俺はここで店を開いてんのが気に入らないんじゃい!」
「ほう?あなたが例の方ですか。聞いてますよ。迷惑な人に絡まれると。」
「知ってるならはよ、どっかいけや木偶坊!見掛け倒しのカスが!」
「カスはあなたです。ただ騒ぐだけで他の方に迷惑を与えるだけ。誰があなたを愛するのですか?親ですか?親も教育を誤ったでしょう。こんな頭が悪い子供ならきっと愛してないでしょう。女神様ですか?あなたのような存在、女神が認める訳ないでしょう。あなたはゴミです。この世に存在を許されない存在です。」
「うっせぇんじゃ!この野郎!口だけは達者だな!ゴラァ!」
今にも殴り合いになりそうな雰囲気へとなる。
先手必勝
私は手元にあった金属のスプーンを投げる。
「いて!」
スプーンが男性に当たる。
「何すんじゃゴラ!」
私はスプーンをもう一本掴み男性の方へ近づく。
「なんじゃガキ!まさかお前が投げたんじゃないだろうな!」
私は返答代わりに飛びかかり男性の頬を殴る。
「いてぇな!クソガキ!」
男性が殴りかかって来たのでその拳を躱し、顎をスプーンで掬い上げて喉を殴る。
男性は咳き込み、後退りながら屈む。
「リーティエ。下がってなさい。ここは大人の時間です。」
「ハドリー」
「うおおおおおお!」
私がハドリーさんの方を見てると男性が立ち上がり、どこからか抜いたナイフを私に向かって刺そうと走って来る。
私は落ち着いてスプーンを構える。
だが、
「ムン!」
ハドリーさんが頭を掴み地面に叩きつけた。
その後、男性の襟首を掴み、持ち上げる。
男の頭の形は保たれてるが血が垂れてる。
「ふん。リーティエ。ちょっと待っていてください。」
ハドリーさんは店を出て、すぐに道に男性を放り投げ、戻って来た。
「すみません。少し任せます。行きましょう。」
お婆さんに仕事を任せた後私を店の裏に連れていく。
どうしたんだろう?
私が不思議に思っているとハドリーさんは屈んで私を抱きしめた。
「ハドリー?」
どうして私を抱きしめてるのだろう?
「あなたはよくやりました。恐らく私を守る為に攻撃を仕掛けたのでしょう。それに対してはありがとうございます。」
なんだ。抱きしめたのは私のお礼の為だったんだ。
ハドリーさんは私から少し離れて真っ直ぐと私の瞳を見つめる。
「ですが、あなたは人としてやってはいけない事をやりました。」
予想だにしてなかった言葉だった。
「何?」
「あなたは力で解決しようとした。人との争いでは力は最終手段です。それを最初に行うのは獣のやる事です。」
私は納得できなかった。
「何?殴る。早い。」
「今は納得いかないでしょう。ですが、いずれわかるでしょう。弱者の悪意を。」
そう言ってハドリーさんが店の中へ入っていった。
この時は彼の言葉の意味を理解が出来なかった。
だが、それは働いていくうちにわかった。
日に日に人の出入りが少なくなっていった。
「先程、お客様に話を聞きました。人通りの多い所で傷だらけの男がこの店で働く男に体を押さえつけられ、少女に拷問をされたと喧伝してると。」
それは話があるからと空の店内の椅子に座って話を聞いてる時だ。
「何!?」
なんだそれ!
私は座っていた椅子から思わず立ち上がってしまった。
明らかに嘘と分かるのに!
「仕方ないでしょう。目の前に傷だらけの男がそう言うなら事情を知らない他人はそれを信じてしまう。世の中そんなものでしょう。」
そんな。こんな事になるなら私はあんな事をしなければ良かった。
私が後悔してるとハドリーさんが私の頭に撫でるように手を置く。
「何。あなたのせいではないですよ。それに怪我の具合で見たら私の方に非があります。」
「そうだよ。これは嬢ちゃんの責任ではないよ。こういうのは大人に任せなさい。」
「そうさ。こういうのは慣れっこだよ!」
「みんな。」
「それに私に秘策があります。」
ハドリーさんが何やら策があるようだが一体なんだろう。




