握手をしよう。これからのために
朝、目を覚ます。
上体を起こし、腕を伸ばす。
体はもう大丈夫かな。
ベッドを降り、体を伸ばしたり屈めたりして確かめてみる。
うん。問題ない。
体が大丈夫ならやる事は一つだ。
私は部屋を出る。
窓から。
私のいた部屋は1階だったので着地すると土と草の柔らかくも硬い感触が素足に触れる。
もう一度解すように体を動かす。
解し終わったら体を鍛えるために運動をする。
お父様の教え通り有事に備えて日常的に鍛えておく、それが大切なことだ。
いつもの訓練内容を行い、次は素手で戦う為の格闘術の復習する。
蹴り、膝蹴り、裏拳。
この動作を何度を繰り返し行う。
ある程度動き、息が切れ呼吸を整えてると拍手が聞こえてきた。
拍手の方を向くと白髪が混じった青みがかった黒髪の男の大人が近づいて来た。
「素晴らしい。素人目で見ていい動きだったよ。」
「誰?」
「あぁ、すまない。まだ自己紹介がまだだったね。私はヘイデン・ダンフォード。トーマスのjdにしてこの屋敷の主さ。」
この屋敷の主!
私はすぐに膝を付き、胸に拳を当てる騎士の礼を取る。
何か言わなければいけないのだが、突然の状況に文字通り言葉が出なかった。
「まぁまぁ、そんな堅苦しい事はしなくて良い。気軽にしてくれ。」
そう言われたので私は立ち上がる。
「リーティエという名前だったね。いつもあんな事をしてるのかい?」
「はい。」
私は頷く。
「ほー。その動きは誰に教わったのかい?」
私が答えようとするも言葉が出ず。困ってしまう。
「どうしたんだい?」
私が黙っていると何かあったのか心配をされた。
私は正直に話すことにした。
「私。言葉。話せない。ごめん。」
「そうか、悪かったね。そうだ。これから朝食だが一緒にどうだい?」
断る言葉が出てこず、私は頷いた。
「そうか。ではその前に風呂に入ってきたまえ。」
ヘイデン様が手を叩くと一人のメイドが現れた。
それに驚く。
私、どうなるんだろう。
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朝食の席
私の隣に愛する妻が座っており、正面に息子のトーマス。
そして今回のゲストとしてリーティエがトーマスの隣に座っている。
今回は彼女を見定める為に呼んだ。
それも彼女に食事を運んだメイドであるレベッカの証言が始まりだ。
レベッカに何か気になる所はないかと聞いたところこんな事が帰ってきた。
まるで貴族の家庭で育ってきたようである。
それは下級階層でありがちなマナーが教わってないなどもなく礼儀正しいように見えるのだ。
そう正しいように見えるのだ。
私達のマナーとしては今、まさに目の前で行っているように右手にナイフ、左手にフォークという私達と同じ仕草。
だが、その先が違う私達は左手にフォークを持ったままそちらに切り取ったフィッシュケーキを差し、食べる。
だが、彼女は違う。
切り取ったのちナイフを皿の上に置き、フォークを右手に持ち替えて差し、食べる。
スープを飲む際もそうだ。
私達は手前から奥に掬うのに対し彼女は奥から手前に掬う。
明らかに違うのだ。
そのくせ音を立てたり、冷ますために息をかけるなどの礼儀がなっていない動作はない。
これらの動作からどこかでこれと似た食事の仕方を見た覚えがあるが思い出せない。
食後にお茶を皆で飲む。
食後の一息に家族で一杯お茶を飲むのが我が家の独自の習慣だ。
「ねぇ、良いかしら?」
妻がリーティエに尋ねる。
「あなたは誰にマナーを学んだのかしら?」
妻が早速マナーについて尋ねてきた。
彼女が少し考えた後、話した。
「ごめん。話せない。」
言葉が話せないのは事前に聞いていた。
だが、妻はその事を知ってるのだろうか?
そう心配してると妻が私を一瞥し、微笑む。
続いて、彼女は別の質問をする。
「なら、その言葉は誰に教わったの?」
少しの思案後、彼女は話だした。
「私。友達。教わった。」
「友達がいたんだ。その友達はどうしたの?」
トーマスが彼女に質問をする。
だが、彼女は少し間を開けたあと、苦しい表情をしたあと首を降った。
「そう。悪かったね。」
空気が重くなってしまった。
「ねぇ、親御さんはいらっしゃるの?」
妻が空気を帰るために別の質問をする。
だが、彼女はポカーンと戸惑うような表情をする。
「あら?どうしたの?」
「お母さん。リーティエは言葉がわからないんだよ。リーティエ。家族について教えて。」
「家族。いる。」
「家族はいるのね。じゃあ、父親はいるの?」
彼女はわからないのか戸惑う表情をする。
「じゃあ、母親は?」
彼女は同じ表情をする。
「そう。言葉がわからないようね。」
妻が頭を抱えるような仕草をする。
私は咳払いをして改めて質問する。
「じゃあ、どこから来たかわかるかな?」
『ndndhhehdbdhdjdb』
「す、すまない。もう一度教えてくれ。」
もう一度言ってもらったが初めて聞く言葉で何もわからなかった。
この後、この国の地図を持ってきてもらい、何か手がかりがないか見せてみたが地図に載ってないのか、地図を始めて見たのか首を振るだけだった。
私達がどうしようか悩んでいると、
「あの。いい。」
「どうしたんだい?」
「私。助かった。返したい。何か。仕事。ください。」
「仕事か?」
仕事を斡旋するのは容易い。
このままジミーに頼んで仕事を選んでもらえばいい。
だが、それだけでは彼女の為にならない。
「仕事を紹介するのはいい。ただし条件がある。」
彼女に尋ねる。
そうすると彼女は姿勢を正す。
「ください。」
彼女はそう答えた。
「良いだろう。これからよろしく。」
私が手を差し出すとおずおずとしながら手を握った。




