はじめまして。
「やぁ、体の調子はどうだい?」
少年がそう話かけてくる。
「大丈夫。」
寝たままの状態で会話をするのも失礼に当たるので上半身を起こそうとする。
「無理はしないで。」
二人が駆け寄って起こすのを手伝ってくれた。
体が動かしづらかったので助かる。
「ありがとう。」
「どういたしまして。何か困った事があるなら言って。」
その時、意図せずお腹がなってしまった。
あまりの音に私達は黙ってしまった。
しばらくの静かな時間。
「あら〜お腹空いてたのね。」
「フフ、後でメイドに体に良い物を持ってこさせるよ。」
「あ、ありがとう。えっと。」
そこで二人の名前が分からず言葉に詰まる。
「あぁ、そうだ。自己紹介がまだだったね。僕はトーマス・ダンフォード。トーマスと呼んでくれ。」
「私はクラリス・ファウルズ。気軽にクーちゃんて呼んで。」
二人が自己紹介をしてくれたなら私も名乗ろうと思ったがどっちを名乗ろうか?
◾️◾️◾️◾️だからリーティエと名乗ろう。
「私。リーティエ。よろしく。」
「リーティエか。良い名だな。」
トーマスが名前を褒めてくれた。
私は何か違和感を感じたが、
「あれ?どうしたの?」
クラリスもといクーちゃんが心配してくれたので首を横に振る。
「大丈夫。」
それからという物、私の身の上について質問をされた。
「ねぇ、見た目的に私達と同じだと思うけど年齢は何歳」
「8歳。」
「へぇー?家族はいるの?keuxに頼んで家族の元に帰れるように手配するよ。」
「ありがとう。家族。わからない。ここ。どこ。わからない。」
「ここの場所も知らないんだ。珍しいね。誘拐でもされたの?」
私は首を縦に振った。
「そうなんだ。じゃあリーちゃん。今度一緒にお出かけしよう。もちろんトーマスも一緒に行こう。」
リーちゃん?私の事だろうか?家の場所の情報収集もあるし、ここはその提案に乗った方がいいかも。
「行く。」
「そうか。だったら僕も行くよ。2人だけじゃ何かと心配だし。」
「ふふ、楽しみだね。そうだ!行くならどんな所に行きたい!この都市はなんでもあるからね。リーちゃんは何が見たい?」
な、何が見たいか?まだ来たばかりだからわからない。何が良いんだろう?
「こら。クラリス。お前は人との距離感が詰めすぎなんだ。リーティエが戸惑ってるぞ。」
ごめんね〜と謝った後、私のお腹がまた鳴った。
「あぁ、食事を待たせるのも悪いね。ちょっとメイドに頼んでくるよ。それと父さんに報告してくる。」
トーマスがそう言って部屋を出て行った。
「ねぇ、リーちゃん。ちょっと良いかな?」
トーマスが出て行ってすぐにクーちゃんが尋ねてきた。
なんだろう?
すると急にクーちゃんが抱きついてきた。
「クーちゃん?」
「私ね。実はリーちゃんの事を初めて見た時から抱きしめて見たいと思ってたの。リーちゃんのね、抱きしめたら折れちゃいそうなガラスの芸術のような体。今は燻んじゃってるけど絹のようなスベスベの肌。そしてまともに手入れされてないけど絶対手入れしたら綺麗で輝くようなーーの髪。」
突然、頭痛がした。
「大丈夫?」
クーちゃんが心配をする。
「大丈夫。」
「そう。それでね。こうやって実際に抱いてみてね。色々分かったの。リーちゃんはね体は脆そうに見えてちゃんと硬い芯があってね、そう考えるとまるで美術館に展示されている石像に見えてね、綺麗で後ろから光を刺しているように見えて本当に綺麗なの。それにねーーーーーーーーーーーーー。まるでjhfが前に身に着けていた赤い宝石のような輝きに何か物事を見通すうような私達が見えない物を見えるような」
そこでダメだった。
「うわあああああああああああ!」
すごい頭痛がしてベッドの上で頭を抱えて倒れてしまった。
「大丈夫!?」
クーちゃんが心配してくれた。
「だ、大丈夫。」
まだ痛む頭を抑えながら心配させないために笑顔で返事する。
「ま、まだ病み上がりだっていうのに無理させちゃってごめんね。私帰るよ。」
そう言ってクーちゃんは部屋を出て行ってしまった。
私は手を伸ばし、引き止めようとするも届かず、空中で彷徨うだけになってしまった。
クーちゃんに悪い事をしてしまった。
後で謝らないとそう思いながらベッドに横になる。
そこで意識が途切れてしまう。
トントントン
扉を叩く音で目を覚ます。
「はい。」
私が返事すると扉が開き、配膳車を押してメイドが部屋の中に入ってきた。
「ご子息様の頼みで食事を持ってきました。」
そういうとテキパキとベッドの上に小さなテーブルを置き、金属のスプーンを置き、小さな鉄製の鍋から見たこと無い白い食器に何かを盛り付ける。
「どうぞ召し上がれ。」
出された物は青菜を乗せたシンプルな麦粥とガラスの器に入れられた茶色飲み物だ。
すごい。金属のスプーンだ。
金属は普通、武器や建築の方に優先して回されるから金属のスプーンを使ってるのは王族のみになっている。
でも、私のような身寄りの無いどこぞの子供に金属のスプーンを出すなんて。
私のいた国とは違うとは思っていたがここまで違うのか。
私はスプーンで粥を掬い口に運ぶ。
青菜の僅かな苦みに粥の味とはちがう別の味がしてそれが味の奥行きを出していてとても美味しい。
何か混ぜものをしてるのか粥を混ぜてみるも何もない。
「これ。何。」
「それはグランデアナトラの出汁入り麦粥です。料理長いわく今夜の夕食のスープを作るついでに作ったとの事です。」
聞いたこともない物で作られた出汁。
それにしてもこんな立派な味の出汁を作る料理人がいる家。
きっと裕福な家庭なのだろう。
そう思いながら飲み物が入ったガラスの器を持ち上げる。
その器は中身がくっきりと見えるほど透明でそれでいて掴みやすいように丸く飲み物の熱が伝わって温かい。
贅沢にこんな形にガラスを加工するなんて。
それだけの技術と資金がこの国にはあるのだろう。
私はスプーンで茶色い飲み物を掬おうとした時、
「お待ち下さい。そちらはスープではありません。」
「そう。ごめん。」
私は笑って誤魔化す。
スプーンを置き、ゆっくりと飲み物を飲む。
パンだ。パンの味がする。
小麦の豊かな味、わずかに塩の味がする。
私が戸惑っているとメイドの女性が解説をする。
「そちらはトーストウォーターです。病人食としては馴染の物になります。」
「そう。」
トーストウォーターか。パンを煮込んだ物だろうか?
私は久しぶりの食事をすべて食べ、料理長に拙いながらも感謝のメッセージを述べ、伝えるようにお願いし、メイドの女性が出ていった後、久しぶりのベッドにぐっすりと眠りについた。
なお、トーストウォーターは真偽が怪しい物になります。ファンタジーだから良いか




