プロローグ 歴史とはそれぞれの人が作り出した人生という糸を編んで作り出す物
新章開始これからもよろしくお願いします。
「ですから何故!子供達を導こうとしないのです!」
議事堂に響く私の訴え。
私は国民の学力向上の為、子供には義務として学校に通う事。
その為の財源を確保する事。
その訴えはこの議事堂の大多数には理解を得られなかった。
「モーガン・マキーヴニー議員」
一人の男性議員が手を上げ、発言を求め議長に認められた。
「良いですかな?まず、何故こんな無意味な議論をしなければならない?」
彼が演技臭く挑発するように話す。
「親が子に自分の知識を教える。子が更なる知を求め、成長を促すなら家庭教師を雇ったり、皇国士官学校に通わせたりさせる。それは当たり前の事だ。そんな当たり前の事に何故法律で義務付けさせる?何故予算を付けねばならない?それこそ無駄ではないかな?」
私の意見に反対の考えを持つ議員皆が笑い出した。
やはり、わかってない。
私は反論するために手をあげる。
「ヘイデン・ダンフォード議員。」
私は手を下ろし、掛けていた椅子から立ち上がる。
「今、発言した事が出来るのは親の保護下にいる子供達だけです!ましてや家庭教師や学園に通わせられるのは貴族や力を持つ商人などの一部の者達だけであります!私の提出した法案は共働きしても生活が安定しない家庭の子や親や身寄りのない子等を助ける物になっております。これだけでもこの法案の価値が理解出来ないでしょうか!」
モーガン議員が発言を求め、それが認められる。
「わかっていないのは貴様の方だよ。では尋ねよう。仮にこの法案を通して貧しい者達のその日を生きる金はどうする?果たして弱者にはそのような知識がいるのか甚だ疑問で仕方がない。」
そうだそうだとヤジが飛んでくる。
私は反論の為、発言する。
「それも踏まえて登校した際の食事等の補助を盛り込んでおります。」
「それは怠け者に施しを与えるという事か?」
彼は発言を求めず椅子にふんぞり返りながら片手に肘を付き、拳を頬に当てた姿のまま反論をする。
「何故、怠け者共を助けなければならない?怠けてるから貧するのだ。そんな貧民や弱者を助けて何になる?働かなければ食うに困るのは当たり前の事だ。ならそんな存在など助ける価値など最初から無いのだ!」
議員の多数から拍手や同意とも取れる声が上がる。
私は握り拳を作る。
「違う!世の中変えようと踠き抗う人達だって」
そこで議長が持つガベルを叩く音が響き渡る。
「静粛に!静粛に!議論は続いてますが時間ですので他の議論へ移ります。」
私は拳を握ったまま椅子へと座る。
厄介だ。
モーガン・マキーヴニー。
齢60にして、この国の宰相。そして最大派閥の長。
その交友関係として商業連盟の代表に大手銀行代表取締役等彼に権力が集中しており、この国のうら若き女王に次ぐ権力持つ男だ。
彼の同意なければ法案が通らないというほどだ。
なんとかしなければ。
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「いやぁぁぁぁぁぁ!」
我が家の庭で木の剣による打ち合いが鳴り響く。
彼が真剣な表情で打ち込んでくるので本気でやっている事がわかる。
「そこ!」
彼が僕の脇腹へと打ち込んでくる。
だが、
「残念。」
僕は脇腹へと打ち込まれた一撃を受け止め、弾き返す。
「クソー!今の一撃は入ったと思うのに!」
「君は素直なんだよ。次打ち込む場所を視線で追ってたぞ。それじゃそこをこれから狙いますよと言ってるもんだ。」
「あーもう。次だ次!」
そうやって小さい頃からの同年齢の友人がまた構える。
こいつより剣の腕は僕の方が上だと思っている。
だが、勇者の力を使われたらどうだろうか?
これからもこいつの隣にいられるように稽古をより一層続けていかないと。
「ほらほら、何考えてるんだよ。ほい!隙あり!」
彼が振り下ろしてきた一撃を難なく受け止める。
その後も剣のみを用いた打ち合いを続ける。
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皇城の一室。
そこにて僕は茶を飲みながら悪巧みの算段をする。
ドアからノックの音が聞こえてきた。
「殿下入ってもよろしいでしょうか?」
部屋の外から僕専属の歳の近いメイドが入室の許可を求めてくる。
普段は僕の側で控えてるのが常だが今回は彼女にもバレたら困る。
「すまない。まだやる事があるから外に控えておいてくれ。」
「わかりました。では、お茶を入れ直してきます。」
そう言い残し、彼女は離れていった。
ふぅ、これで誰にも邪魔はされないな。
僕は机に広げたこの皇城の地図に隠し通路の場所や仕掛け等が記された文献を見る。
まだまだ調べなきゃいけない事が多々あるが結構日が楽しみだ。
僕はそう微笑む。
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物語は大きく動いていく。
一つの悪意ある棒針によって紡がれる糸によって。
これはとある物語。
将来、戦争を仕掛ける皇国。そして苛烈皇クラウディウスとその皇に使える1人の騎士。
その名を灰騎士。
これは前日譚。それもだいぶ前に当たる物語である。




