マンティノ トンポントゥルーモンダ
部屋から出て行くレーナを見送りこれからどうしようか考える。
出来る限り目立つようにしなければならないが何をしようか考えながら部屋を眺める。
ここは応接間なのかソファに低いテーブル。それに用途不明の金属製の装飾が施された蛇口の着いた筒(蛇口が付いてるから水を出す為の物だろうが簡素なテーブルに乗ってるから配管は繋がっていない)。
それに壁に掛けられた様々な絵。その上には色々な動物の剥製が壁に掛けられている。
「…………」
これて使えるのでは?
ーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーー
「ここかな?」
私はこっそりと廊下を進み玄関へと辿り着いた。
そこは外に繋がる両開きの扉があり、2階のここから見て何かの家紋と思われる色鮮やかな紋章が描かれているのが分かる大きなホール。
そして扉とは反対側には大きな階段があり、それは今私がいるここと反対側のバルコニーへと繋がっている。
そこには疎らながら人がおり、扉の両隣には出入りを監視するのが目的と思われる2人が立っている。
「良し。これなら。」
私は持っていた籠から狼の頭の毛皮を取り出し被る。
あの応接間にあった剥製をなんとか下ろし、予想した通り狼の頭蓋骨に何らかの処理をされたカチカチの毛皮が被さっていたのでそれを剥ぎ、ここに持ってきた。
視界は口の中からしか見えず、なんだか変な臭いがするが顔が隠せそうなのが剥製の毛皮しか無かったからしょうがない。
私は頭部を被ると階段まで走り、近づく。
よし。ここからが本番だ。
私は覚悟を決めて階段を降りる。
「お集まりの皆様!どうぞこちらに視線を!」
私は階段を降りながらホールへと呼掛ける。
前に見たクーちゃんの練習をお手本に言葉を話す。
よし。この場にいた全員が怪訝な表情をしながらも私を見ている。
これで少しは注目されているな。
「私はルーマスクであり!そして今貴方達が忙ししくしている原因です!」
踊り場に着いた所で私は籠から盗んだ本を取り出しこの場にいる全員に見えるように掲げる。
皆の反応は薄く、まるでどういう事だ?とこれが盗まれた物だと思っていないようだ。
まぁ、侵入者がいるという情報だけで何か盗まれたという情報が知れ渡っていない可能性があるが。
しょうがない。この本が盗まれる事の重要性を話そう。
「おや?皆さんこの本の事を知らないようですね?」
そこで私は気付いた。
私もこの本がどういう物か知らないのだ。
心の中で焦る。
ドジ踏んでしまったのだ。
ど、どうする?このまま何も言わないのもまずい。
何か……!何か……!
ええい!なんとかなれ!!!
「こ、この本は平和を維持する為の魔法が封じられた本なのです!」
私は数秒で思いついた魔法を口に出す。
口に出したからにはやり通さないと。
「平和を維持する魔法?」
ホールにいた1人の男性の小さく、本来なら消えてしまうような呟きが静寂に支配されたホールに響いた。
助かった。このまま無反応だとキツかったけどこれなら。
「えぇ。そうです。それはこの街が壁に覆われる前に遡ります。この街は何度も魔物の襲撃に遭い時の領主はダンジョンに救いを求めて潜りやっとの思いでこの平和を維持する魔法が描かれたこの本を精霊から頂いたのです。」
私はクーちゃんを真似て身振り手振り大袈裟にまるで踊り場で踊りながら話す。
その甲斐があってかこの場にいる全員が固唾を飲んで見ている。
よし。今の所は上手くいっているな。
「精霊曰く。この本がある限り街は平和であるでしょう。ただし、一度でもこの本を開いたりページを破ろう物なら突端に災いが街に降りかかるであろうと。」
私は笑みを浮かべながら話す。
当然今考えた話しなので嘘であるが。
「そ、その本を持ち出してどうする!」
ホールにいた男性が声を荒げて私を問いただす。
えーと。この場合どうしようか?
「ふふ。…………それを貴方達に話すと思うのですか?…………例えば、この本を売り払おうと悪事に使おうと私の勝手でしょう。何ならここで本を開いても良い。」
私が何を言うか考える時間を作りつつ、さっき思い付いた脅し文句を言い本を開けようと手を伸ばす。
「やめろ!」
私が本に触れるかどうかの瞬間ホールにいた1人が杖をこちらに向けて撃ってきた。
私はどこに飛んでくるかが分かるため、回りつつ半歩横に動き、飛び跳ね手摺に乗りホールに向かって滑り降りる。
悲鳴と驚嘆の声の中、私は手摺から腰で跳ねて飛び上がり小さな杖を持ってる男性の杖だけを蹴り払い、着地と同時に姿勢を低くして彼の足を蹴り払い地面に倒す。
一連の流れで脅威と感じたホールにいた皆が私と倒れた彼を中心に離れていく。
「私はそう簡単に手を触れる事は出来ない!怪我を負いたくないのなら素直に道を開けなさい!」
私の声がホールに響き、そして突き刺すようなピリピリした視線が私に向けられる。
とりあえず囮の役目は充分だろう。
後は逃げるだけ。
このホールには通路がそれぞれ左右にあり、そこに行けばなんとかなるだろう。
後はきっかけだ。
私と皆の間で焦がれるような間が空く。
お互い動き出したら動く。
そう考えてるから膠着が起きている。
さぁ、動け。
「騒々しい。」
その声は枯れていて落ち着いていた。
だが、たった一言発しただけでこの空間の全てを支配した。
なんだ?
言い表せない危機感に思わず声の方を向く。
その声の主はただ手摺を掴みながら2人の共を連れた男性の老人だと分かった。
あぁ、分かったのだ。
たった一言発したさっきの言葉は今階段を降りている老人以外あり得ないという凄みを感じた。
誰だ?この人は?
「ボ、ボス。」
ホールにいた誰かが様々感情を混ぜた呟きを発した。




