デリブナ デリキャン
「はぁはぁはぁ!」
激しい息づかい。
少し離れた所から怒声が聞こえ、離れていく。
とりあえずは撒けただろう。
「それに……しても……なんだ……あれ……」
ふとさっき工場の中で見た子供達の姿が思い出される。
あんなどう見てもその身に合わない仕事をさせられていてとても普通とは言えない。
仕事が嫌なら逃げれば良いのに。
「お疲れ様です。」
思考の底に沈んでいると突然暗がりより声を掛けられた。
私はすぐにかごからハンマーを取り、声の方へ向ける。
暗闇から現れたのはレーナであった。
「なんだ。レーナか。驚かさないでくれ。」
「ふふ。どんな時も気を抜かないのは私達の中では素晴らしい事なのですよ。それより頼んでいた物はありますか?」
私は下げていたかごをレーナに無造作に渡す。
「ふむ。量は……。状態は……。」
「それで。私はどうだ?」
1人の世界に入ろうとした彼女を呼び止めて評価を尋ねる。
「えぇ。問題無いですよ。」
「そうか。」
良かった。
心から安堵した。
「それでは行きましょう。外は寒いですから。早く暖を取りたいです。」
「ねぇ。」
私は暗闇へ歩き出そうとするレーナを静止して聞きたい事を聞く。
「あの工場で私達と同年代の子供達が働かせられていたけどあれはどういう事?」
彼女は立ち止まりこちらへと振り向く。
「……ここは寒いです。戻ってから話しますよ。」
彼女は再度歩き出したので私もその後に続いた。
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「それではあそこで何故子供達が働いていたかを順を追って話しましょう。まず、結論から言うと労働力確保の為、連れて来られました。」
家に戻り、私達はソファに腰掛けると一息置いてから彼女は話し出した。
「労働力確保?なら大人が働けばいいのではないか?私が行った時には大人がいたぞ。」
「えぇ。そうでしょうね。ですがあの工場は人が足りなく、お金が無い。なので子供を攫って来て働かせているんです。」
「要領が得ないな。」
レーナは伝わらないかという意味の籠もった小さな溜息を着いた。
分からない物は分からないのだ。
「例えば天井の上の魔動機、例えば炉の側や下等、鉄を加工する工場は狭く危険な場所が沢山あるのです。それにより命が風で吹かれるように簡単に散ってしまう事が多々あるのです。では、問います。こんな危険な場所で労働力を確保するにはどうしたら良いでしょうか?」
「そんなの危険を排除すれば良いじゃないか。」
「どうやら貴方は経営者は向いて無いのでしょう。」
……元からなりたいとは思ったことが無いが。
「正解は常に人を集めてくるです。」
「……ちょっと待て。労働力確保の為に子供を攫って来て働かせるというのが全然分からない。」
「何。簡単ですよ。子供は放って置いても勝手に増えます。だから1人が潰れて働けなくなったらま、たどこかから連れてくればいいのですよ。例えば路地裏から、例えば養殖場から、」
「ちょっと待て!そんな!そんな命をゴミのように扱って良い訳無いでしょう!」
私は耐えきれずレーナの言葉を遮って叫ぶ。
ほんの少しの間、静寂が支配し、レーナが改めて話を続ける。
「この国ではそれがルールなのです。諦めて下さい。」
「…………助ける事は出来ないのか?」
自分でも思ってみなかった言葉がこぼれ落ちる。
「無理です。無駄です。何せ彼らはどこにも属さない弱者です。そんな彼らを外に連れ出しても飯を食べる手段は無い。抗う手段も結束も無い。ここも川の向こう側の世界と同じ弱肉強食なのです。もしや貴方はこの街クラウディウスはみんな幸せで暮らしている街だと思っていました?」
彼女の問いが心の奥深くに突き刺さる。
そうだ。私はダンフォード家に世話になってるから楽しい日々を送れていたんだ。
私はただ、運が良いだけなんだ。
「…………」
「…………貴方は大丈夫ですよ。」
気落ちしてると不意にレーナが励ましてくれた。
短い付き合いではあるが彼女が誰かを励ますとは思っておらず少し驚いてしまった。
「貴方は強いです。少なくともここらで敵無しの私を御せるのですから自身を持って下さい。」
慣れてないのかなんだか変な励ましに自然と微笑んでしまった。
「なんだそれは。」
「……笑わないで下さい。あまり慣れてないので。」
そう言い持ってた本で顔を隠し顔を背けてしまった。
照れるとは。彼女もそういう一面があったのか。
「とにかく。もう寝ましょう。未来の事は寝てから考えましょう。」
そう言い、毛布が積まれてる部屋の隅へと歩いていった。
そんな彼女に心の中で感謝を述べた。




