ディポンフ ダ レビーム
「貴方にはここに忍び込んで貰います。」
月が頭上に昇った頃、私達はとある敷地が見える薄暗い路地にいた。
その敷地は通りは薄暗く明かりが無いと歩きづらいようではあるが立ち並んだ建物の窓からは真夜中なのに眩い光が漏れ出ていて不思議と他の場所と違い僅かに気温が上がり、僅かに鉄の独特な臭いが漂う。。
「ここは?」
「ここは……名前は忘れたのですが鉄を作っている工場です。」
コウジョウ?なんだそれは?
疑問に思ったがレーナが話を続けてるので質問をするのを我慢した。
「ここでは鉄を作ったり加工したりするための場所です。ここで貴方にはメンテナンス用に保管しているステッキーバーニングという油とスムースムーブメントという油を持ってきて下さい。」
「ン?どちらも油ならどちらかだけで良いのでは?」
「いいえ。それは違います。スープにも様々な種類があるものです。ステッキーの方は粘度があり、ネバネバで黒い。スムースはサラサラで乳白色な油です。それと場所は教えません。探せるかも見ますから。」
ふん。
そんなもの何か。
「それとここは鉄の加工もしてるので何かしらの武器になり得る物があるはずです。それを取ってきて下さい。身を守る為には必要ですから。」
それじゃ、お願いしますと言って返事を待たずに本を読み出した。
こんな暗い所で本が読めるのはある意味凄いと思う
そんな彼女に呆れながらも分かったと返事をし、歩き出す。
まず、敷地の外から歩いて見て回る事にした。
昔からこうだ。
何かいたずらしたい時は良く観察してからするようにとお兄様に言われている。
そうすれば何か物の見え方は変わって来ると。
だから、まずは歩く事にした。
そこで分かった事は平屋の大きな建物がそれぞれ4つ。
3階建ての建物が1つで構成されている。
それで敷地内に入る方法としては2つある。
1つ。
開け放たれている門から入る。
こちらはちゃんとした来賓ならこちらから入った方が良いだろう。
門の近くには小さな建物が見え、そこに歩哨と思われる人物が詰めているのが見える。
だからこれは無しだ。
2つ。
これは誰でも思い付く事。
敷地を囲む柵をよじ登る事だ。
柵の天辺辺りに槍のような障害物があるが管止に当たる部分の僅かな突起に足を掛ければ大丈夫だろう。
だから私は柵をよじ登る事にした。
私は難なく柵を登り敷地内に入る。
さて、何処に行こうか?
大事そうな物があるとすれば3階建ての建物だろうが油があるとは思えない。
しょうがない。
平屋の建物を見ていこう。
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1つ建物の物陰の側に来た。
ここからは出入り口の一つが見える。
その出入り口からは中の様子が見え、怒声が聞こえる。
「お前らさっさと運べ!今日中に運べないと寝る時間はねぇぞ!」
中には子供達が必死に自分の身体と同じかそれ以上の荷物を運んでいた。
その表情は悲しみを堪えれる子や虚無を感じるようなそんな自分と同年代とは思えないような表情をしていた。
その光景に思わず絶句する。
一体彼らに何があったんだ。
不意に私と同じ年頃の少女と目があったような気がした。
その目に見つめられたのはほんの一瞬。
でも、その瞳は絶望に幸福が目の前に転がっていれば奪ってやろうという貪欲な渇望に身体を鷲掴みされたような感覚に陥った。
「オラ!余所見すんじゃねぇぞ!」
大人の男性が少女の頭を叩くと少女はトボトボ歩いていく。
何なんだ?ここは?
とりあえず平屋はよそう。
私はもう平屋に行くのが怖くなり、3階建ての建物に向かう事にした。
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3階建ての建物。
敷地外から見た時はそこまで大きく見えなかったが近くで見るとそれなりの大きさに見える。
ここに頼まれていた油があれば良いのだが。
私は裏口と思われる金属製の扉を開け、中に音を立てないようにして入る。
中には書類仕事等で使われるような机がズラッと列になって並んでおり、その側で大人達が椅子を並べてその上でベットのようにして寝てるのが所々に見える。
子供達にはあんなに働かせておいて自分達は寝てるなんて酷い。
私は静かな怒りを胸にしまい、いびきに隠れるようにそっとその部屋を通り過ぎ、探索する。
探索した所この階には書類仕事用の事務室の他に部屋は無く、上へ続く階段があるだけだ。
私は階段を登る。
2階は一つの廊下に3つの部屋があるという簡単な作りになっている。
手前側から何やら書類の入ってるような蔵書室、次に空が見えるガラスがはめ込まれた窓と道具や私の身長よりも少し長い鉄の棒等が置かれた倉庫と思われる部屋。
そこには油と思われる物は無かった。
最後に奥の部屋は鍵が掛かっていて入れない。
私なら魔法を使って鍵を開けれるが2部屋を探索するのに時間を掛けたので後回しにしよう。
私は足音を殺して3階へと登る。
3階は鍵が掛かった大部屋が一つあるだけで他には何も無い。
良かった。さっき魔法を使わなくて。
『開け-アプリーレ-』
鍵穴に魔力を流し込み開ける。
カチッ!という音が響き、私はそっとドアノブを回して中へと入る。
中は窓が無く、言葉にするのが難しいが嗅ぐだけで気持ち悪くなるような臭いが充満している。
中が見えない。
しょうがないので魔法で灯を灯し、ドアを閉める。
中は様々なガラスの容器がラベルが貼られた状態で棚に置いてあった。
目的の物は何処だろうか?
しばらく棚を物色し、物を探す。
「良し。これで探し物は手に入ったぞ。」
後は武器になる物を-
「おい。こんな時間に誰だよー。」
突然扉が開き、扉の方を見る。
そこには汚れが目立つ格好をした大人の男性がいた。
倉庫の時の流れが止まる。
「なんだガキ!」
男性が叫んだので灯を顔にぶつける。
灯は霧散し、消えてしまったが男性は耳をつんざくような悲鳴を上げ、顔を押さえる。
怯んだ隙に私は油が入った2つの容器を掴んで男性の脇をすり抜け、階段に一目散に逃げる。
このまま一階から逃げようとするが一階から甲高い騒ぎ声が聞こえてきた。
恐らく寝てる大人達が起きてしまったのだろう。
このままだと捕まってしまう。
私は2階へと逃げ込む。
さて、どうしようか?
逃げたとはいえどうしようもない。
いや、逃げ込める場所は1つだけだ。
私は倉庫に入る。
倉庫の扉を閉め、鍵を掛けようとするがここは鍵が無いようだ。
なら早く逃げる手段を決めないと。
ここは2階だ。
それなりの高さがある。
とりあえず使える物は無いだろうか?
周りを見回してまずは片手で持てる大きさのハンマーと小さなかごを見つける。
ハンマーは窓ガラスが破るのに使える。
かごは容器を入れるのに役に立つ。
だが、今一番欲しい縄が無い。
どうしようどうしようどうしよう!
このままでは捕まってしまう。
鉄の棒はどう見ても2階分の長さは無い。
鉄の棒を組んで梯子にしようか?
いや、そんな時間も方法も無い。
棒1本で降りる方法は……
いや、私は1回見たことがある。
だが、やった事は無い。
そんな状況で果たして出来るだろうか?
戸惑っていると廊下がドタバタと騒がしくなる。
えーい。あまり考えてる時間は無い。
私は窓ガラスを通れる大きさになるまで割り、ハンマーを持ってるかごに放り入れ、そこに鉄の棒を通して窓の縁に立つ。
高さはかなりあり、脚が竦む。
本当に自分は出来るだろうか?
そんな考えが頭を過ぎる。
だが-
扉が力強く開けられる音が響く。
その音に扉の方を向く。
「いたぞ!」
大人が怒声を叫び部屋に雪崩込もうとしてる。
もう時間は無い。
私は意を決して2階から飛び降りる。
地面まであまり時間は無い。
私は地面に突き刺すように鉄の棒を垂直にし両太ももで挟む。
1回お兄様が竜から落ちた時はこうしろと教わった。
本当かどうかは疑わしいがやるしかない。
地面に棒の先が当たり身体を制動させる。
止まる事が出来なかった僅かな勢いを伴って私は地面に着地した。
悶絶する程の脚の痛み。
折れてはいないが次はちゃんとした着地の方法をしたい。
「待て!逃げんじゃねぇ!」
上の方から怒鳴り声が聞こえて来る。
こうしちゃいられない。
早く逃げないと。
私は駆け出し、その後なんとか敷地外へと逃げ延びれた。




