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スクフディサフィーホンダラフィー

「ふぅ。」


私は一仕事が終わり一息付く。

前来た時から気になっていた台所と思われる空間をようやく掃除し終えた。


見てほしい!

掃除する前はうっすらと感じる下水道の臭い、触ったら指と離れなくなると思った黄色汚れ。

そんな汚れを埃の被った柄の折れたブラシと汲むのに時間が掛かった水で触っても鳥肌が立たなくなるまで磨いたんだ!

2度とやりたくない!


「レーナ。この台所はいつから使ってないんだ。綺麗にするのに時間が掛かったぞ。」


私は呆れながらも尋ねる。


「さぁ?私が住み始めた時からそうでしたよ。」


彼女が本から視線を外さずにそう答える。

呆れた。あんな汚れがあるのに気にならないなんて。


私は溜息をつき、話を続ける。


「それで食事はどうする?」


ここを訪れたのが正午前なのでそろそろ昼食の時間だが、この部屋食料の影も形もない。


「ん?朝に食べたのでいらないですよ。」


「いや、朝の事ではなく昼の事だ。」


「…………あぁ。そうだ。昼食というのがありましたね。」


まるで今まで存在そのものを忘れていたという態度でピンと来た。

恐らくそんな余裕が無いのだろう。

ここに来てからの私もそうであったのに失念していた。

そう後悔しているとレーナは何でも無いように話を続けた。


「財布があるのでそのお金で何か買ってきて下さい。場所は-」


そう言われ、財布の場所を断りもいれる間もなく説明された。


財布の中身が少額なら自分の手持ちから出そう。

ーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーー

「ここがそうか。」


レーナの説明を受け、目的の酒場に着いた。

何でもここによく屯している(たむろしている)頬と鼻に傷跡があるコリンという少年にレーナの使いで金を貰いに来たと言えば良いと教わった。

前にミッドに教わった話ではスリや暴行で盗まれた時の為に自分しか分からない隠し場所に隠す事はよくあるのだと言う。

だから今回もそのようなものだろう。


私は酒場の中へ入る。


「うへッ。」


思わず小さい悲鳴が漏れてしまった。

店内は一言で言ってしまえば汚いだ。

まず、臭いだが、前に嗅いだ煙草の独特の臭いに何かむせ返るような甘ったるい香りが混ざって時々鼻を刺激するような酸っぱい臭いがする。

それでいて窓が見当たらず空気は淀み、その中の唯一の照明器具のロウソクがポツポツと照らしているだけ。

そんな薄暗い床には樽が転がり、他にもよくわからない生物(なまもの)が床に散乱している。

ここは店なんかじゃない。

早く用事を済ませて帰ろう。


顔を顰めながら店内を散策する。

店内は酒や甘ったるい煙草を吸ってる人がちらほらいるがどう見ても少年という風貌ではない。


何処だろうかと目を凝らしていると店の端っこに子供と思える歳の集団がいた。


もしかしたら彼らなら何か知ってるかもしれない。


「すまない。」


私は彼らに声を掛ける。

すると子供達全員がこちらに一斉に視線を向けた。

皆、一様に目をギラつかせこちらを警戒している。


まずかっただろうか?

いや、怯んでどうする。私はお金を受け取りに来ただけなんだから。


「コリンに会いたいんだが。」


「俺がどうしたんだって?」


群れの中より声がし、一人の少年が現れた。

その少年はくすんだ少し長めの茶髪に所々ほつれた衣服、そして顔の鼻と頬の部分に傷があった。


「あぁ。レーナからの頼まれ事で()()()()()()()()()

「あぁん!」


私が来た目的を伝えると皆から殺意の籠もった鋭い視線を浴びせられた。

まずい。明らかに何かを間違えた。


「お前!気狂いレーナの連れか!」


「あ、あぁ。」


彼の張り裂けそうな気迫に考える間もなく頷いてしまった。

気狂い。おおよそ人に向けて言う言葉ではない。


「あの引き篭もりは俺達からたかりに行くのが面倒になって代わりの人を寄越すような偉い人になったんか!舐めんじゃねぇぞ!」


「ま、待て!私はレーナにお金の在処を聞いてここに来ただけだ!敵対するつもりは無い!」


私は自分の立場を簡潔ではあるものの伝えた。


「おぉぅ?お前はあのレーナがどういう奴か知らないようだな?せっかくだから教えてやる。」


私の立場を説明したからなのか鋭い視線は向けたままだが一旦事が荒立てられる事にはならなそうだ。


「あいつはな!欲しいというだけで人を殺すような奴なんだよ!食い物も!服も!住処も!みーんなただ欲しいてだけで殺して奪う!手を出しちゃいけない大人でも明日を生きる為に泣いて返してて縋る奴からもな!」


「…………」


私は絶句して何も言えずにいた。

最近あったばかりの間柄ではあるものの彼女がそんな人物とは思ってもみなかった。


「そんな恨み辛みが溜まってる俺等の前にのこのこと現れたんだ!ただで帰れると思うなよ!」


再度、彼らから突き刺すような殺気が放たれる。

まずい!


「分かった!もう帰る!だからここで争う必要はない!」


「うっせぇ!ここにいる奴らはな!全員あいつから奪われてるんだよ!だから仕返しする権利て奴があるんだよ!」


駄目だ。彼らは皆冷静さを欠いてて今にも襲いかかろうとしている。

どうする?戦うか?

いや、彼らはレーナの被害者でもある。

そんな相手に力を振るって良いのか?


そう悩んでいると一人の少女が恨みの籠もった叫びと共に汚れの着いた鋭い何かの破片をこちらに突き刺そうと突っ込んで来る。


「ッ!」


迷う暇も無く私は彼女の顔に回し蹴りを浴びせる。


「うおおおおおおおおおお!」


彼女の行動が合図となり残りの複数名がこちらへ襲いかかってくる。

この人数はまずい!

剣を抜くか?

いや、彼らを斬ったら私の誇りも失われる。


私は仕方がなく向かって来る1人の顎を蹴り、ガラ空きになった胴体を蹴り彼らへ吹き飛ばす。

彼らは倒れる少年を避ける為に足を止めた。

この隙に私は彼らに背を向けて酒場を飛び出す。

ーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーー

「レーナ!」


私は扉を強引に開けレーナの家へ入る。


「…………なんでしょうか?」


彼女は椅子に座った状態で気怠げに私に問いかける。

その態度が私を苛立たせた。


「お前がいつも人の物を奪っていると聞いたぞ!」


「あぁ。そんな事ですか。」


彼女は当然の事を聞かれたという態度を取ったので我慢が出来ず襟首を掴んで椅子から力付くで立たせた。


「ふざけるな!お前は私にも追い剥ぎの真似事をさせようとしたのか!」


「えぇ。」


なんでもないという態度に腹が立ち拳を振り上げるが彼女は片手を挙げて静止する。


「落ち着いて下さい。スラム(ここ)では()と違う常識があるんです。」


彼女の光の無い瞳が私へと向けられる。


「ここには秩序という物は無いのです。ただ、人よりも優れている事。それが正義なのです。」


私は奥歯を噛み締めた。

以前は私も同じような場所で暮らしていた。

だからそのような考えがふと頭を過った事もある。


だが、


「だからて盗むのは良くないだろう。」


「えぇ。そうです。あぁ、リーティエさん。コリンから詳しい話は聞いてますか?」


「何のだ……。」


「あぁ、やはり。ここは人より優れてれば何もして良いのです。騙して罪悪感に付けて意のままに操っても。」


「まさか……。」


いや、そんな筈は無い。

何せあの場にいた皆、もう後の事などどうでも良い。

そんな貫くような鋭い殺気を放っていた。


「まぁ、良いでしょう。」


いつの間にか私の力が緩んでいたのか襟首を掴んでいた手を離し少し離れた位置に移動し、話す。


「私は貴方の助けがいる。貴方は私の持つ本が欲しい。それはかわりません。お互い助け合っていきましょう。」


彼女はそう言い話を終わらせる。

私のモヤモヤは晴れる事は無かった。

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