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ロスブフゾンドンスキュリュティ

イエツィア歴1837年10月初め頃


私はノックをする。


「……」


返事が無いので扉を開け、中へ入る。


「!」


私は後方へ体を傾ける。

すると目の前を鎌が通り過ぎて行った。

壁にぶつかり、弾かれた鎌を宙に浮いてる状態で掴み呆れながら尋ねる。


「挨拶はHallo(こんにちは)と教わったのだけどいつからHell(地獄へ)に変わったの?」


「このスラムでは断りなく入る人への挨拶は杖から一撃なのですよ。」


そう笑顔でレーナが返事をした。

そう。私は再びレーナの元へ訪れていた。印象最悪な状態で。

ーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーー

ダンジョン脱出後読んだ薄い本の表紙にはこう書かれていた。


スタグネーションファイア 議事堂爆発事件について。

後に聞いた話だが議事堂とは(まつりごと)を議論する場との事。

恐らく王へ意見を述べる謁見の間みたいなものだろう。

それで内容はイエツィア歴1837年11月。

そこで大規模な魔石による爆発事件が起きたとの事。

当時のクラウディウス中央騎士団の発表によると死傷者543名。

そのうち時の女王ヴィクトリア陛下と宰相モーガン・マキーヴニーは生死の縁を彷徨う程の怪我を負うが無事に快復。

その他当時議論の中心人物であったメイルボーン地区総括のヘイデン·ダンフォードを含む議員や職員合わせて367名が死亡したと発表された。と書かれていた。

その文章にトーマスは動揺し、クーちゃんが戸惑い、私は困惑してる一瞬をついて今、目の前のレーナが本を持ち去って逃げてしまったのだ。

だから私は彼女にあの本を渡すように来たのだ。


allo(異質)な挨拶をありがとう。手短に言おう。本を返して。」


私はソファーに座っている彼女に自分の用件を伝える。


「嫌です。私にメリットがありませんので。」


この展開はある程度予想出来た。

では、どうするか。

古の作法に習い取引をしよう。


「で、何を望む?」


「……取引を希望ですか。」


彼女は呆れたような声色で話す。


「生憎。物は求めません。協力してくれたなら渡しても良いですよ。」


協力か。

何をさせられるのか分かったもんでは無いがしょうがない。

爆発事件まで一カ月を切った今、ヘンリーさんを説得する為にもあの本がいる。

恩は必ず返さないと。


「分かった。何をすればいい?」


「フフッ!そう言うと思いました。では説明するので掛けて下さい。」


そう言われ、向かいのソファーにいつでも立てるように浅く軽く脚を広げて座る。


「まず。私がお願いしたい事はとある建物へ共に忍び込む事です。」


「忍び込む?」


「えぇそうです。目的はその建物にあると言われている古い本です。ただの屋敷とかそういうのであるなら私一人でもなんとでもなります。ただ、今回は難しいのです。」


そう言うと彼女は手を組み、前屈みの状態になる。


「その建物はこの都市屈指の規模を誇るこわ~い人達の組織何です。当然人も建物も躊躇の無さも他を比べられない程です。」


ジミー達もそんな事をやってるそうだがそれより上となると想像もつかないな。


「そこで貴方の力を借りたいのです。私の補助として。何かあった時の保険として。」


なるほどそう言う事か補助は文字通り盗みの手助けという事だろう。

保険は揉め事が起きた時の解決策としてだろう。


「良いだろう。ただ、条件……いや、要望がある。」


「うん?なんでしょうか?」


彼女は疑問を表すように頬に手を当てる。


「この剣は使えない。……いや、使う訳にはいかない。この剣にはダンフォード家の家紋が入っている。最悪彼らを巻き込む事になるから。」


「……ふん。分かりました。良いでしょう。力試しに別のお願いをしようと思ってたのでその時に調達出来れば大丈夫でしょう。」


「理解してくれて助かる。これで成立だな。」


私は契約の成立の意味を込めて手を差し出す。


「えぇ。…………あぁ、そうそう。」


彼女が手を伸ばしかけて途中で引っ込めた。

どうしたのか?と視線で尋ねる。


「もし、誰かに後を付けられたりして貴方と貴方の助けたい人と繋がりがあると知られると後々面倒な事になるでしょう。ですので仕事の間はここに住んでもらいますがよろしいですか?」


……なるほど。その事は考えもしなかった。

指摘してくれて助かる。


「あぁ。問題ない。むしろ住居を用意してくれて助かる。」


「……そうですか。」


彼女は滑らかな動作で私の手を掴む。


「今後ともよろしくお願いします。」


私は彼女に得も知れぬ不気味さを感じた。

この家に入ってからずっと笑顔であったものの今の彼女はより口角を上げ、瞳を細め、まるで罠に掛かった獲物を見るような視線をこちらに向ける。

彼女の案に乗ったのは失敗か?

いや、最初から私を呼び寄せていたのは分かっていただろう。。

大丈夫。今までなんとかして来たんだから今回も大丈夫だろう。


「あ、あぁ。よろしく楽しむ。」


私は力強く握り返した。

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