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そんな二人を空から見下ろす、ふわりと浮かぶ女神がいた。
にこにこと微笑みながら、目をキラキラと輝かせながら。
「まさかあの二人が仲違い中の恋人同士だったなんてね。データを見てびっくりしちゃった。でも……」
女神がくすり、と笑う。
正直に言えば、女神にとってはあれは失敗だった。
だって結局ふたりからは満足なデータがとれなかったのだから。
本当なら過去に戻って、もっとあれこれ試して色々な感情の揺れをみてみたかったのだけれど。ふたりとも結局は現実を変える方法を選んだのだから。
「でもまあ、手鏡が役に立ったってことにしておいていいわよね。だって、最終的にふたりの望みは叶って、結果的にはこうしてくっついたんだもの」
そうつぶやくと、眼下のにぎやかな祝いの席を嬉しそうに眺め渡した。
そして。
「不器用で似た者同士なお二人さんに、これからもたくさんの祝福が花のように振り注ぎますように」
女神は、両手を広げふうっと息を吹きかける。
すると、そこからたくさんのミコノスの花が生まれ、眼下の二人へと風にのってふわりふわりと降り注いでいく。
ミコノスの小さな花たちが、空を薄桃色に染めながら風に舞い踊る。
それを驚いたように目をまん丸にして見上げる、メリルとリフィ、その二人を祝福する家族や友人たち。
その姿を満足気に見つめ、うなずく。
「さて、と。次はどんなデータを取ろうかしらね。本当に人間っておもしろい。弱くて失敗ばかりなのに、でもとってもかわいくて、強くて」
くすりと笑いをこぼし、女神はふわりと風に乗る。
そしてどこまでも晴れ渡る青空と花びらの風に、女神は満足そうに微笑むと消えていったのだった。




