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奏世の歌使い〜呪われた大地と、忘れられた子守歌〜  作者: 華宮理子
始奏―とある世界線の約束
1/4

VoiceData──World.primitive.epic

古い音声データだ。破損が酷く、いつものものかもわからない。


再生しますか?


▶︎はい

いいえ


──██っ、██っ!!


なにをいってるか、わからない。まっしろなものが、いっぱいある。


おみずがのみたいよ。瑤█。ぱぱのおむらいす、またたべたいね。


──行くなっ!きっと助かるかもって、父さんも言ってたじゃないか!!あんな真似、する必要ないじゃないか!!


ぼく、なにかいったっけ。なんでおこってるの?


なにか、つめたいものがおちてきた。おみず?のませてよ。


──ごめんな。██。ごめん、母さん、ごめん


あやまらないで。ぱぱ、ぼくはいきてるよ。


──もう、ダメだ。脈がとれない。瑤█、怒っていないで██の手をとりなさい。


だめ?なにがだめなの?


ぱぱ、ぱぱ。


──██、どうしてなんだよ。どうして、僕の言ってることがわからなくなっちゃったんだよ。そうじゃなきゃ、こんな……


まっしろになってきた。きえないで。ぱぱ、瑤⬛︎


──いいかい、⬛︎⬛︎。君は、パパの大事な息子だよ。それだけはっ、お願いだ、覚えてくれたらっ……


ぱぱ。ぱぱ。

















































































































──ここは、なにもない。どこ?まっしろだよ。


──ねえ、パパ、瑤⬛︎?なんで、おへんじしてくれないの?

──◼️◼️、僕の声、聞こえてる?◼️◼️は耳がいいから、僕の声が届くはずだけど。


1回、声の主が言葉を切る。何かが落ちていく、重い音が響き渡った。


──届いていると思って、今から僕は独り言を言うね。


──君がこうなってから、今日で10年経った。そう、君の誕生日だ。


──今、君が見ているのはどんな景色だろうか。パパがくれた本みたいな感じかな。いつか見れたらいいな。


──まあ、見えないんだけどね。


──こっちの様子は知りたい?■■は知りたいって言ってたけど……■■が知ると、ショックを受けるだろうしやめておこう。


──こんな日には……盛大に君の好物を食べさせてあげたいな。


──……嘘ついた。ごめん。本当だったら、さ……。


嗚咽が混じっていて、声が聞き取れない。轟音がひとつ、ふたつ、彼の言葉を遮るように鳴る。


──こんなことになるんだったら、もっと食べられたら、よかったのにね。


──可哀想だと、君のことは思わないよ、■■。だって、そう言ったら君の覚悟と笑顔を裏切ることになるでしょ?


──でもさ……


──なんでこうも、人ってさ。嫌なのが多いんだろうね。


──救世主様なんて、いいことばかりじゃないのに。なんでだよ、⬛︎⬛︎。


──もっと大好きなものに囲まれて、もっともっと話せばよかったのに。


──そうじゃなきゃ、こんなことに、なって、ないんだ……!

大きな爆発音が鳴る。


音声はここで途切れている。


貴方はこれを知る人間のひとりだ。ここで音声データを聞いたのも、何かの縁だろう。



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