表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/8

序章

「群青の配達屋」の続きになります。今回は依頼を受けていないので、のんびり感覚が漂っています。

 炎を自在に操る民たちは、その恩恵を深紅の髪に宿した。燃え盛る火のような朱色の瞳は、微細な熱の加減を欠片も見逃さず、あたかも空気の流れさえ思うがままに操るようだった。

 火源を生み出し、その熱を更に燃え上がらせる。周囲を巻き込み、暗く地を這う臙脂色から、実りの季節に木々を染める朱色、晴れ渡った空のような淡青色まで、あらゆる色の炎を作り出していく。それを自分の手足を操るように自在にこなした。


 炎の民は、土の民の生活のすぐそばにいた。

 それがいつの頃から続いていたのか、それは彼らも預かり知らぬところだった。それが日常で、不思議に思うようなことは何もなかった。

 土からの恩恵を、炎の彼らが完成させた。まるで二人三脚。土と炎の恩恵は切っても切り離せないものだった。いつしかお互いの恩恵が当たり前のようになっていった。


 しかし、いつしか当たり前は当たり前ではなくなった。

 炎の民は停滞できない。燃え上がった炎は潰えるのが宿命。その源を活かし続けるためには、更に種を求める必要があった。

 炎はそれ単独では存在できない。火は燃え上がり、しかしあとには何も残らない。

 炎の民は源泉を求めた。自らの価値を費やさないために、灯した炎を絶やさぬために。

 求めには森の民が応じた。炎の源泉を彼らは熟知していた。望む温度を出せる種を提供するのに、労力は要さなかった。

 炎の民は協定を結んだ。決して、種を根絶やしにはさせないことを。代わりに土地を育み、害を除去し、種を育てる適切な地を提供することを。

 協定は誓約となり、時を超える。刻み込まれた約束は違えることなく、受け継がれていく。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ