第五話 弓術
拝命式でこの【秋水】という弓を受け取って数日。取り敢えず俺に課されたのは『強くなること』だった。
【七星の騎士】は有事の際における最大戦力として扱われる。その有事の際とやらが他国との戦争なのか、それともモンスター相手なのか。
それはともかく、最低限戦力として見なせるくらいには力をつけておけと言われ訓練中なのだが……。
「なかなかうまく行かないよね〜、お兄さん。」
「俺に比べれば鎚君は出来てる方だと思うけどね。」
「ホントね。戦ったことないって嘘じゃなかったんだって思ってる。」
「俺としては、こっちの世界はチビっ子でも戦うってのが信じられないよ。」
「試練に挑まないと【加護】消えちゃうんだから当然でしょ? 一回層なら死ぬことはないし、お小遣いにもなるし。」
そう、訓練中なのだが【七星の騎士】の中で俺がブッチギリに弱い。それこそ今代最年少の【金の騎士】こと鎚君に負けるほど。聞けば今年で9歳、小学三年生。
いやまあ、流石に言い訳をさせて欲しい。
鎚君が言うように、この世界の人間は【加護】が失われないように日常的に神々の試練……いわゆるダンジョンに挑んでいる。そしてモンスターを倒している。
そうするとどうなるか? そう、レベルが上がる。
腕相撲で鎚君相手に余裕で負けた時はマジかよって思った。
とにかく身体能力という面で負けているのが一つ。これでもまだレベルの低いらしい鎚君はまだ良くて、訓練初日に見た【月の騎士】夜姫さんと【日の騎士】太陽君の模擬戦では、格の違いというのを見せつけられた。
まさにヤムチャ視点というべきか、大雑把にどこにいるくらいは分かっても細かい動きが全く見えんかった。
この世界、【加護】が消えない限り肉体にダメージが行かないから思いっきり戦えるんですって。ハハハハハ。
そしてもう一つ、弓が使えん。
的に当たる当たらないじゃなくて、まずまっすぐ飛ばん。
これでもお爺さん……先代の【水の騎士】という達人に指導してもらってるわけだが、まあ数日で上達するわけがない。
聞くところによると、【水の騎士】は防御用の〔水壁〕、回復用の〔治癒〕などの補助魔法に長けている万能型で、攻撃は〔属性付与〕を用いた射撃が主流とのこと。
とにかく攻撃手段は弓!
それが【水の騎士】!
だけどそんな経験はない!
弓の才能もどうやら無さげ!
どうすりゃ良いんだチクショウめ!




