第二話 召喚
目を覚ますと、ベッドの上だった。
あれだけ死ぬ覚悟をしたというのに、存外命というものはしぶといらしい。
「おお、目を覚ましましたかな。ご無事でなにより。」
ベッドの横でお爺さんがこちらを伺っている。この人が死にかけてた俺を助けてくれたみたいだ。
「ありがとう、ございます。」
見れば、俺の体は綺麗に洗われていて、服も清潔感のある白い寝間着のようなものに変えられていた。
そりゃ、まあ、9日も風呂に入ってなかったから、かなり小汚い格好をしていただろうが……。
ありがたいような、恥ずかしいような。
取り敢えず、助けてもらったことも含めてお礼の言葉を口にする。
「ま、タイミングが良かったの。とはいえ、おんし今の状況が分かっておるかね。」
「ええ。ホント死にかけのところを助けてもらってなんと言えばいいか……。」
まあ、半分自殺なんだけど。別に積極的に死にたいというわけでもないから助けてくれたことはホントに感謝だ。
「いや、そうではなく……。おんしが【水の騎士】として選ばれたという話じゃ。」
「え、いや、なんですか、それ。」
いきなり、この人の良さそうなお爺さんから騎士とかいうブッ飛んだワードが飛び出して驚いた。
「やはり気付いておらなんだか。おんしは【七星の騎士】の一人、【水の騎士】として選ばれ神殿へと召喚されたのじゃ。
いやはや、驚いたぞ。我らが誇る【七星の騎士】の一人をあわや失うところじゃったからな。」
「いやいや、その【七星の騎士】ってなんなんですか? 第一召喚って……冗談、ですよね?」
だが、お爺さんの顔はどう見ても冗談ではなさそうだ。ひょっとしたら……という発想が頭をよぎる。
言ってはなんだが、この手の文化には結構ハマったものだ。
よく見れば現代ではあり得なさそうな服装に内装。そして召喚という言葉。
「すみません、ちょっと外の様子を見させてもらってもいいですか?」
「外? 特になにか変わったものなどないが……。まあ、構わんよ。」
窓の外を見ようと、ベッドから下りようとするも、体がふらつく。まだ万全じゃないみたいだ。
「おっと、危ないの……。どれ、手を貸そうかの? 〔水泡〕」
お爺さんがそう言った途端、俺の体を水が包み込む。そのままスーッと持ち上げられ部屋の外まで連れ出される。なんだろう、見た目は宙に浮くバランスボールとそれに乗ってる俺、というよく分からん状態だ。
『いや、窓から見るだけで良かったんだけどな……。というか、そんな必要もなくなったけど……!』と思いながらもお爺さんに連れられ外に出る。
部屋の外には鎧を着て槍を持った、『いかにも衛兵です!』と言わんばかりの存在が10名ほどズラリ。
そして、白くてまんまるなモフモフというよく分からん癒やし系存在が長い耳を羽のようにしてフワフワ。
街を見渡せば高層ビルやら電波塔のような現代建築は見当たらず、木造住宅がそこかしこに。
これは認めざるを得ないだろう。
そう、俺は創作でよく見る異世界召喚の当事者となったのだとーーー!