魔法少女の知らない話4
Dr.MADの研究所。その一室の扉が勢いよく開く。
「教授ー!遊ぼう!」
「ダメだ」
部屋にいたのは教授。突撃してきたのはマリスである。
「即答!?なんでなのさ、ドクターも遊んでくれなかったし!可愛いアタイの頼みが聞けない程の用事なの?」
駄々をこねるマリスに深いため息をつき教授は答えた。
「ああ、MAGEを覚えてるな?」
ジロリと教授に睨まれるがマリスはどこ吹く風。すでに部屋のソファに飛び込んでいる。
「うん、あのロボットね」
魔法少女を苦しめたロボット。2人に馴染み深い1人の少女を動力として起動した兵器。──まぁ最後には暴走して自爆してしまったが。
「今はそれの整備中だ。貴様のせいでほぼ全損したのもあるがその後のMAD様の実験結果が成長著しくてな。それを踏まえてもう一度調整が必要になった」
「ふーん」
「以前よりも体積に対して得られるエネルギー効率が格段に良くなった。MAD様は"質"の向上だろうと推測、今は確認作業中だ」
「へーん」
「──私はエネルギー効率の改善に伴って今よりも良いエネルギーの伝達方法を考えMAGEの性能UPを考えているわけだ」
「ほーん」
「……遊んで欲しいのならもう少し興味のある素振りでも見せるんだな、MAD様も忙しいから断られてこっちに来たのだろう?私が満足するまで話せば少しは構ってやる気にもなるかもしれんぞ」
「はい!はい!すごい興味あります!続きをはよ!プリーズ!」
だるそうに寝転がっていたマリスは一転立ち上が
りピシと気をつけをした。
「よろしい。……MAD様の実験結果、あれは元々私とMAD様の共同研究から生まれたものだ」
「そうなの?それにしてはドクターしか黒いのの研究してない様に見えるけど。現に教授はロボットしか作ってないし」
「そうだな、そこは研究の最終目標の違いだ。私はアレに燃料としての価値を見出している。だが、MAD様は更なる可能性を見出しているのだ」
「更なる可能性?大げさな言い方だね、何それ」
「それはな……」
軽く耳打ちをする。
「──すごい!それ凄く面白そうじゃん!」
「……私としても興味がある。最初は耳を疑ったが、実際に見た時に確信した。あの方なら実現出来ると」
「さて、話も終わった。私も作業が終了したから構ってやってもいいが どうした?」
「さっきの話聞いてたら新しい作戦思いついちゃってさ!遊ぶ予定は変更!教授には今からアタイの作戦会議の参謀をやって貰います!」
「別に構わないが、どんな作戦だ?」
「んふふ、それはね」
「──どうよ!アタイの傑作作戦は!」
「悪くない大部分の修正は私が行ったがな。だが、この作戦、何度も言っているが貴様の身が──」
「ダイジョーブだって!成功すれば一気に研究が進むし教授もドクターも大喜びだよ!それじゃ、準備してくるね!」
返事も待たずにマリスは部屋を出て行った。
「全くあいつは……」
「──これがマリスの考えた”エネルギー向上作戦“だそうです」
『なるほど、なかなかどうしてよく出来てるじゃないか』
「はい、本当にいい作戦です。ただ、1つ懸念点がありまして」
『なんだい?」
「少しマリスと魔法少女達との距離が近いかと。場合によってはマリスが逃げきれない可能性も……」
それを聞きDr.MADは顎に手を当て少しの間考える。
『そうかい……ねぇ教授、君に伝えることがあってね』
「何でしょうか?」
『あの子、少しずつ力が弱まってるみたいなんだ』
「それは!……失礼しました。それは本当ですか?」
思わず身を乗り出したのを慌てて戻し教授は聞く。
『うん、予想してたより早く限界が来るかも。そうなれば君の懸念は現実になる可能性が高くなるね』
「そうですか……MAD様、今研究しているソレを彼女に投与するのは」
『出来ないことはないけど。あの子がどう思うか、それは大事な所だよ』
「…………」
『マリスの存在は僕らの研究を大きく押し進めてくれた。あの子も目的があって協力してくれてた訳だけど。ただ、今あの子が"満足"しているのなら僕らに止める権利は無いかもしれない』
それに、とMADは付け加える。
『この作戦、君も手伝おうと思ってるでしょ?それすら彼女の"満足"になって、力の枷になるかもしれない』
「確かに……」
『そういう訳だから、僕から言えるのは1つだけ。──協力するのは最後だけ、君は懸念点の部分だけをカバーしてあげるといい。』
「……!忠告ありがとございます。了解しました」
通信が切られ、MADは深く息を吐く。
「ごめんね教授。マリスは天然物だから、人工物を混ぜたくなかったんだ。ただ、あの子のことが心配なのも本心だ。それに教授、君もね」
先程の教授の言葉を思い出す。マリスが逃げきれない可能性が──。
「この作戦、恐らく2人のうちどちらかは……」
「ピィー、ピィー」
「おっと、慰めてくれるのかい?ありがたいね」
教授は足元で鳴く何かを抱き抱え、もう1度マリスの作戦を見直す。
「やっぱりいい作戦だ。多分、教授の懸念点すらも高純度のエネルギーに──ふふふ」
MADは上がる口角を抑えきれなかった。
「そろそろ君の名前も考えておこうか?じきに言葉も覚えるだろうしね」
そう言って撫でられいる黒い塊は嬉しそうに小さく返事を返した。
「ピィー」




