魔法少女と得られる力
「さあ一体どこですの!?」
「縦128横96の地点や!」
「くっ、正解ですわ」
「ふふん、お互いに今日はまだノーミス、まだまだ終わらんで!」
「中々やるようになってきましたわ。しかしながら未だ私が勝ち越してるのですよ。そう簡単に勝たせてはあげませんわ!」
「──あの2人もずっとあんな感じで仲良いといいのだけれど」
「確かに」
2人で訓練に明け暮れる様を見ながら相槌を打つ。
「……あのさ、伶さん」
訓練を始めて暫く日にちが経った頃の休憩中、わたしは伶さんに質問をする事にした。
──正直なところ、この質問は怖いのだが。
「わたし、本当にリミット3になれるかな?」
「……いきなりどうしたの」
少し空気がヒリついた気がした。だけど、声に出した以上続けるしかない。
「だってさ、全然リミットが上がりそうな感じがないっていうか……」
訓練を開始してから何度かシャドウは出現している。
キンとコンはどんどん悪意の芽を見つける精度を上げ、今では殆ど百発百中に近い。
伶さんは使用する武器を剣と槍を使い分けるだけに留めた。使い慣れている剣と貫通力の高い槍。既に何度かシャドウの悪意の芽を貫き取る事に成功しているのを見た。
それに比べるとわたしはどうだろうか。
戦い自体は幾らかマシになった。相手の機微を見逃さずに拳を打ち込めるようになったのはわかりやすい訓練の成果と言える。
──ただ、成長したという実感は薄かった。折角竹刀を持って訓練しているが、実戦では結局のところ肉弾戦を行っているし、なんというか、その、
「皆に置いてかれてるような気が……」
「…………ひかり」
「え、はい?」
伶さんがこちらを見る。真面目な顔ではあるが、優しさも滲み出ている表情。まっすぐな瞳に吸い込まれそうになり、思わず姿勢を正す。
「心配かもしれないけど、絶対に大丈夫よ。私は確信を持って言えるわ。ひかりはリミット3にすぐになれるって」
自信ありげに言う伶さんにわたしは、
「うん、ありがと伶さん。……ちょっとお手洗い行ってくるね!」
お礼の言葉を述べ立ち上がり、道場を後にする。
この気持ちが伶さんに気付かれないように。
「──はぁ、伶さんがあそこまで言ってくれてるのに」
ため息をつきながら渡り廊下を通る。情けない話だ。伶さんはああ言ってくれてるが、それでもやはり自分は成長できてないような気がしている。伶さんの信頼に応えれてないような気がして、居た堪れなくなって逃げてきた。
「はぁ」
ため息が止まらない。が、もうトイレも済ませて来たし、戻る覚悟を決めるしかない。
「はぁ、っよし!」
顔をパシンと軽く叩き気合いを入れ直す。その時。
「──お嬢さん、お悩みですかな?」
「おわあぁ!?だれ!?」
突然声をかけられて驚く。声の主は、渡り廊下ではなく、そこから少し外に出た庭にいた。
「ご安心ください。私は庭師です。不審じゃないです」
「前置きでそう言われると少し警戒しちゃいますね……」
剪定用の鋏を持ち、帽子を被りオーバーオールを着たおじさん。どちらかというと庭師というより海外の農家のおじさんだ。
「申し訳ない、普段は顔を見せないようにしているのですが余りにも多いため息が少し気になってしまいましてな」
「……そんなにため息ついてましたか」
「はい、とても」
なんだか恥ずかしくなってきた。心配されるレベルだったのか。
「あの、この事については伶さんには秘密にして貰えると……」
「ええ、勿論ですとも。伶……お嬢様には話しません」
良かった。これで一安心だ。
「ありがとうございます。それでは」
帰ろうとした時、渡り廊下が騒がしくなる。
「どうしたの!?ひかり!?」
慌てた顔の伶さんが出て来た。
「いや、別に何もないよ。ちょっと庭師のおじさんにビックリしちゃっただけ」
と、庭師のおじさんを見る。
「…………」
「あれ?」
おじさんはとんでもない量の冷や汗をだしている。
「おじさん?」
「……ふーん?」
伶さんは冷たい目線を向けている。睨まれたおじさんはまるで蛇に睨まれた蛙のように動かない。
「庭師のおじさんねぇ?いつから仕事を増やしていたの?お父様?」
「え」
驚いた私はおじさんを観る。
「うぅ……しんぱいで、その……すいません」
観念したようで謝罪する庭師のおじさん改め伶さんのお父様。
「うそぉ……」
わたしはただ驚愕の声が漏れるだけだった。




