魔法少女と魔道具少女
「……ひかり」
「ちょいまち、伶。今は待ってやってくれんか?」
ひかりの後を追おうとする伶をキンは引き留めた。
「なんで──」
「なんでもや。心配かもしれんけど今のひかりに必要なのは1人の時間や。──その様子だと伶もやな」
「……はぁ。そう、ね。キン、ごめんなさい。それとありがとう。それじゃあ私も行くわね」
「おう、行ってらっしゃい」
ひかりとは別方向へ向かう伶を見送り、その場に残ったは2体のぬいぐるみ。
「……見直しましたわよ」
「何がや?」
「私じゃ伶様を止めれなかったですわ。伶様の気持ちを優先してひかり様のことを追わせたでしょう。──ひかり様の気持ちも汲まずに」
悔しそうな声色を察してキンはポリポリと頬をかく。
「勘違いせんでほしいで。ワイが止めたのもひかりのためで伶のためやない。もしかしたら偶然伶のためにもコンのためにもなったかもしれん。それだけや」
「そうですか」
はぁとため息をつくコン。
「お互い相方には甘いって訳やな。しかし記憶を消す魔法も久しぶりやね。まあワイもこの方法しか思いつかんかったから、この選択は間違いではないと思うで」
「その結果、ひかり様も伶様も悲しむ事になっても?」
「そのためのワイらがおるんやで。そんじゃ始めるか」
「えぇ」
ルナの前にキンとコンは立つ。魔法の行使が始まろうとしていた。
「……ここは」
離れると言ってあてもなく歩いていたが、ある場所を見つけた。
「…………」
激しい戦闘だった。周辺の建物は瓦礫と化し、更地に近い状況だ。
「……よいしょ」
近くの瓦礫に腰掛ける。
ここはルナちゃんと行ったショッピングモールだ。少し残った残骸に面影がみえた。
思えば、ここで始めて彼女と歩み寄れたのだ。その前まではわたし達は彼女を疑い、彼女もまたわたしを疑っていた。……まぁ、少しおかしな方面の疑いではあったが。
そうしてようやく彼女と仲良くなれる。そう思っていた。
「あー……」
諦めたような声が無意識に漏れていた。そして、そこから何かの糸が切れたみたいだ。
「う……うぅ……ひぐっ」
キン達の前では我慢できたが、やっぱりダメだった。日数にすればそこまでのものではないかもしれない。それでも。
「ぐっ……ひっ……」
何とか耐えようとしても嗚咽混じりの涙が止まらない。彼女の安全のためと分かっている。それでも。
「やっぱり、寂しいな……」
それでも。悲しみを押しとどめることはできなかった。
『──かり。ひかり!聞こえるな?魔法は成功したで』
頭に直接響く声を聞いてわたしは立ち上がった。
「分かった、そっちに戻るね」
もう充分泣いた。涙を拭い、出て行った時と同じように元気に振る舞って、皆を心配させないようにしよう。
だれにも見られてなくて良かった。
特に伶さんと一緒にいたらもっと心配されていただろう。
そういえば、伶さんはどう思ってるんだろう。一緒にいた記憶が無くなってしまう。確かに伶さんは昔からルナちゃんといたから消える記憶はごく一部の時期だけだから。私と違ってそこまで気にしてないんだろうか。もしそうだったら──。
「なんか、やだな」
『ん?ひかり今なんて?』
「あ、ゴメンゴメン。急ぐね!」
いけない、今のはただの八つ当たりだ。
皆のとこまで小走りで向かう。とにかく今はルナちゃんが助かった事を喜ぼう。そう自分にいい聞かせた。




