魔法少女の素顔
『もっとスピードださんと追いつかれるでマジで!』
「わかってるよぉ!」
騎士の少女をお姫様抱っこで抱えながらひかりは全力で路地を走っていた。背後からは巨大な化け物が追ってきていた。
ちなみに騎士の少女。少女とはいえ普通にひかりより長身なためひかりはかなり移動に苦労していた。
「アアアァァァアア!」
「ヤバイヤバイヤバイ!」
横なぎに振るわれた腕を潜る様に身をかがめる。間一髪腕は頭上を通り過ぎていく。全力で走ってはいるが化け物との距離は広がらず、かといってこれ以上追いつかれることもない。ギリギリの状態だった。
『これ以上スピード上がらんか!?』
「これが本気だよ!後は身を軽くするくらいしか……そうだ!ちょっとごめん!」
何か思いつき、ひかりは少女の持ち方を変えた。俵を担ぐかの様に肩に少女を背追い込むと自由になった片手で、突然──。
「よいしょ!」
レザーアーマーを脱ぎ始めた。
『何やっとるんやひかり!』
これにはキンも動揺した。レザーアーマーを脱ぎ捨てて、ひかりはアーマーの内側に着ていたインナーシャツだけになった。
「え?だって軽くしないといけないから、1番重そうなのから脱ごうかと……」
『説明が長くなるから省くけどその服装はそんな簡単な原理なんやないねん!』
「え、嘘?でもさ、さっきより速くなってる気がするよ?」
『そんな訳……』
キンは否定しようとしたがそこで気づいた。ほんの少しづつではあるが化け物との距離が離れていることに。
『……ほんまや。しかしこんな事今まで無かったで、一体どんな原理で……?』
困惑するキンを差し置いてひかりは更に体に付いているプロテクターも外し始める。速度は更に上がった。
「これなら逃げ切れるかも!」
「……これはダメかも」
走り続けた先、ひかりは行き止まりに遭遇した。
「グウゥ……」
化け物はゆっくりと近づいてきている。もはや逃げ場のない獲物に最大のプレッシャーを与えている。
『……一か八か、現実世界に戻るゲートを開けてみる。少しだけ時間を……』
緊張感のある声でキンが提案した。が、
「その必要はないわ、ここで倒しましょう」
ひかりに担がれていた騎士の少女が言葉を遮った。
「そんな無茶だよ!あなたまだ傷が」
「こんなの平気よ。それに無茶でもないわ。気づいたの、あいつを倒す方法。貴方のおかげでね」
ポカンとしたひかりの前に立つ。剣を構え直す。
正面には巨大な化け物。化け物はこちらを嘲笑う様にゆっくりと追い詰めていく。それにも動じずに剣を構えてつづける。そして──。
「…………フッ!」
一瞬の気合と共に、騎士の少女の剣は輝きだした。