魔法少女と魔道具少女
「教授……」
「ちなみに渡してきた子の名前は分かる?」
「いいえ。強引に押し付けられ、そのままどこかに行ってしまって」
「それで、これを飲んだのね?」
「……はい」
少し空気が重くなるのを感じた。確かにルナちゃんには飲まないという選択肢もあったのだろう。
「その、小瓶と一緒にこんなものも付いていて」
取り出されたのは1枚の紙。書いてある文を読んでみる。
「『貴女の悩み、それはズバリ憧れ。この薬を飲んで憧れの人の隣に並ぼう!』……なるほど」
ルナちゃんの憧れはもちろん伶さんだ。それにわたしにあれほど対抗意識を持っていたのだからそりゃ飲んでみるに決まってるよね。
「1つ目の小瓶はこれです」
「なんか形が他のと違うね?」
分かりやすく他のものとは形が違う小瓶が出てきた。
「必ず最初に飲む事、と書いてあってその通りに飲みました。そしたらこの力の使い方が分かるようになったんです」
「そういうタイプもあるの?キン?」
「ん?おお確かにそういうタイプのもあるで。ただ順番を間違えた時の代償が大きいのもあってワイらの世界では基本的に使用禁止やな」
「と、なると魔法薬学関連での犯罪者がこちらに来てる可能性もありますわね。あとで調べておきますわ」
キンとコンが小瓶にくっついたまま答えてくれた。難しそうな顔してるしまだ解析は終わりそうにない。
「知らなかったとはいえそんな物を気軽に飲んじゃダメじゃない」
「……すいません」
「それに誰に憧れてるか知らないけれど努力して得た力の方が印象がいいと思うわよ?」
「…………すいません」
「……ん?」
あれ、なんで伶さんは他人事なんだろう。明らかにルナちゃんの対象は伶さんなのでは、そう思っているとルナちゃんが耳元に囁いてきた。
「……昔からお姉様はこうなんです。他人からの感情にあまり興味なくて、妙な所鈍いんです」
「あー、なるほど……言われると覚えがあるかも」
変な所天然というか伶さんにはそういうのある。
「ちょっと、2人で何話してるの?」
「──よし!解析終了やで!」
「おっとようやく終わったみたいだね!結果をきこうかなぁ!」
何となくわたしも巻き添えで怒られそうな雰囲気を感じたので話を逸らすことにした。サンキューキン。
「──で、何がわかったの?」
「結論からいうと、これ自体は普通の魔力増幅剤に近いんや」
「というか、増幅剤ですわ」
キントコンは小瓶をペチペチ叩きながら説明する。
「それじゃあ何の手掛かりにもならないんですか……!?」
確かに。ルナちゃんが飲んでたの普通の薬ならただ単にルナちゃんの魔力量が増幅されてただけという事に──。
「いいえ、これは手掛かりとしては充分ですわ」
「そうなの?」
「せやで。ここの残りは全部普通の薬なら、あと怪しいのは?」
少し考えて、すぐに気づいた。1つだけあった形の違う奴。
「──最初の小瓶!」
「そういう事やな。だったら後は嬢ちゃんの体を調べればって……!」
キンとコンが一瞬プルプルと震えた。これは──。
「いい所ですけれどシャドウが来てますわ!」
「2人とも行くで!」
さっと変身してゲートを繋いでもらう。
「あの、私はどうすれば」
「とりあえず待ってて!」
「ひかりとすぐ終わらせて帰ってくるわ」
ルナちゃんの返事も待たずに私達はゲートに飛び込んだ。
2人が入ったゲートを見ながら、ルナはその場に立ち尽くしていた。
「やっぱり、今お姉様の横にいて相応しいのはひかりさん。でも……」
私だって認めてほしかった。だからこそ努力して、それで、怒られるかもしれないけど、憧れに追いつくために、知らない人からもらった薬まで使って。
「それでも、お姉様は気づいてくれないんですね
」
(誰に憧れてるか知らないけれど)
「私はまだ……」
「──だったら気づいてもらおうか、その憧れに、今ならできるよ〈魔道具少女〉ちゃん?」
「えっ」
トン。振り返る間もなく背中を押された。
「今の声は」
聞いたことあるその声は。
「薬をくれた──!」
ルナの体は閉じかけたゲートに吸い込まれていった。
「全く、教授も人使いが荒いよ。アタイは掃除屋さんじゃないんだよ?帰ったらおやつ作ってもらおうかな?」
ホールも無くなった静かな部屋でガチャガチャと小瓶を回収する音が響く。




